号漫浪正大

輪るピングドラム ~物語を見直す

4 輪るペンギンの正体

山田玲司さんが三匹のデフォルメされたペンギンは「奪われた子供時代」と言っていました。

なるほど、私もペンギンの正体が分かる前はそう思ってました。

で、ペンギンの正体が分かった今は? と言うと、今でもそうだと思っています。

しかしそれは神目線ですね。神(原作者、イクニさん)の思惑で見るとその意味も入っているのでしょう。

物語を見る時、人は三つの次元(目線)から見てると思いますが、それは今回の趣旨と違うので割愛させていただきます。

神目線で見るとほとんど分かってしまうのは間違いないのですが、おちいり易い罠は神に気をつかってしまう事ですね。

例えば、アニメの作画が壊れてきた時「ああ、神様も大変なんだな」と思って流してしまいます。もしかしたら何か深い意味があるかもしれないじゃないですか!(いや、まず無いのでしょうけど)

このペンギンも何も無いマスコットのように見え、正体が分かると南極の氷よりも深い意味と厚い闇が見えてきます。

そこにこの物語の謎の多くが隠れています。白も黒も。

アルペンギンは白と黒ですものね。皆が見えてるのは白の部分です。どす黒い部分もあるのです。

イクニさんはそこも描いています。二重に表しています。侮ってはいけません。ちゃんと深い意味があります。深すぎてイクニさん病んでませんか? と心配にもなります。

 

初めに断っておきます。このペンギンの正体は私が見付けたのではありません。考察サイトを見てて見付けました。他にも全体を通して誰かが見付けた事も普通に入ってはいますが、まあ、輪るピングドラムですからね。助け合いが必要ですからね。大目に見てください。

 

考察サイト(週休二日〜アニメと文学の分析〜)によると「『銀河鉄道の夜』はキリスト教の考えが含まれているが宮沢賢治仏教徒なので仏教の要素も含まれている」と言う事らしいです。

そしてピンドラにも仏教の要素が含まれている(でも表向きはキリスト教なのでそこも重ねているのかもしれませんね)と言う事です。

さらに仏教なので「輪廻転生」(死んでもまた生まれ変わる)が含まれていると言うのですが、なるほど、何で目の前にあるのに気が付かなかったんだろうと落胆しました。

仏教の「輪廻転生」なので「六道輪廻」です(仏教を詳しくは知らないので、‘細かな内容は間違ってるかもしれませんが、すみません)

悪い事をした人は生まれ変わるとき、人として人間道には生まれ変われず、他の所で生まれ変わる。

つまりペンギンは悪い事をした人の生まれ変わりで、悪い事をしたので畜生として生まれ変わる。と言うのです。

真にその通りですね。思い込みって怖いですね。「輪るピングドラム」の「輪る」が「輪廻」の「輪」だなと思ったのに無視してしまいました。

 

さてここからペンギンの正体です。覚悟はいいですか?

 

3号ペンギンの正体

3号ペンギンの事を陽毬(ひまり)は「さんちゃん」と呼んでます。

そう、「さんちゃん」の正体は「さんちゃん」です。居ましたよね? 「SUNちゃん」ですよ。昔に陽毬が見付けた猫の「SUNちゃん」です。見返すと赤いリボン付けられてましたよ。

なんでちょっと出てきて死んでいく猫に名前をつけたんだろう?(演出上)なんでこんな変な名前なんだろう? と思ったのに無視してました。自分でもびっくりしました。

しかし猫ならばなぜあんなに人間ぽく振舞えるのか? なんであんなに編み物が得意なのか? と思いますよね。

これは想像でしかないのですが、初めは猫ではなかったんじゃないのかな? と思います。たぶんお母さん(晶馬のお母さん)じゃなかったのかな? と勘ぐります。しかしテロの日に晶馬を産んでいてテロに関わっていないので、お役御免になったんじゃないのかな? 初めから猫のつもりならもっと初めに猫要素を入れてきたと思います。

しかし言い訳もちゃんと入れてくるのがイクニマナーですね。

気が付いたのは、しかも他の事を考えていた時です。なぜ桃果はあんなに悟りを開いたような子なのか? と言う事で、あの地下の図書館の様な所で、凍った場所で時間に関係なく無限に皆の人生を見れるのではないのか? 疑似体験出来たのではないのか? と考えてました。すると、あれ? さんちゃん9話「氷の世界」でめちゃくちゃ本読んでたな、あれは高倉家に行く前だな、と気が付き。あそこは桃果が悟りを開いた人になれると共に、猫でも編み物が出来るようになれる場所である。と気が付きました。

ちなみにこの9話のさんちゃん、高倉家に行く前なのにもう背中に3の文字が書いてあります。それは猫の時にすでに「さんちゃん」になってたからだと、何処かのサイトに書いてありました。そうだと思います。

猫が出てくる回、20話「選んでくれてありがとう」の最後に陽毬がめずらしく一人で料理をしています。リンゴたっぷりカレーです。これは陽毬とさんちゃんを二人きりにする為の演出です。お手伝いのさんちゃんはリンゴを洗ってます。そしてリンゴを両手で持って陽毬の方を向きます。これは「私もあなたからリンゴをもらったんだよ。選んでくれてありがとう」の意味です。

そしてこの回の最後の絵はリンゴなのですが、その前の人が出る最後の絵は 陽毬とさんちゃんが微笑み合っている 絵で終わります。昔、猫をひろい名前も付けたのに大人に殺されゴミの様に捨てられ、その為 陽毬は自分もそうなのだとあきらめる話の終わりに 陽毬とさんちゃんが微笑み合っている 絵で終わるんですよ! なんという優しさ、なんという気づかい! 「しびれるだろう?」とイクニさんは言っているに違いありません。

 

さていい話も終わりです。とうとうイクニさんの中の黒兎が顔を覗かせます。

 

2号ペンギンの正体

不思議に思いませんでした? 思ったでしょう? こいつは何をしているのかと。

第1話からずっとしつこく殺虫スプレーでゴキブリを殺してます。

ペンギンのする事はギャグか可愛い事かのどちらかです。それ以外する意味あります? あるのです。2号ペンギンがしていたのは

毒ガスで 害虫を 殺して いるんですよ。

もちろんこの物語には毒ガスは出てきませんが、その行為から連想できる人物は実行犯、剣山ですね。

(ああそう言えば、毒ガスは出てきませんが、スカンクは逃げ出しましたね。あれはサリン工場から漏れて近隣に異臭騒ぎがあったからですね)

あと2号はいつも何かを食べてます。あれは2号が飢餓だからだと誰かが言ってました。飢餓と企鵝をかけているんですね。

2号が剣山だと分かると演出上の疑問が解けます。

まず晶馬があまり2号に係わらない。ほぼ無視を決めます。製作者が剣山と思って描いていたなら納得です。剣山と晶馬がイチャついてたら気持ち悪いですからね。

後半剣山が出てこない。白骨が出てきて終わりです。あっけなさすぎます。「あれ? 忘れてます?」と思って見てました。それなら初めの方の良い人だった話はなんだったのか? と思ってましたが、これもずっと出てきてると製作者が思って作ってたのなら、なんとなく理解できます。

この物語、和解が無い。「親の世代の行動に苦しむ子の世代の話」なのである程度は分かりますが、まるっきりない。白骨死体がメモでも持っていて「お前達、すまない」位は言いそうなのに、それも無いのが不思議でした。が、ずっと近くにいたのなら、それは軽い和解にも見えます。

と言う訳で剣山です。悪い事をしたのでペンギンなのです(仏教的には地獄行かもしれませんが、1オウムは輪廻転生を信じてた。2物欲におぼれ動物化する人々を粛正しようとしてた。事から織り交ぜて畜生に転生なんですかね?)

まだ足りませんか? 闇が。

大量のゴキブリに反撃されてやられてる2号ペンギンがありましたが、あれも大勢の警官が動員されて捕まった事を表しているのでしょう。

そして7話「タマホマレする女」で多蕗 の家の下で多数のゴキブリを見付ける2号、その後沢山やっつけた事を示す裏返ったゴキブリ。不自然でしたよね? なんでゴキブリ並んでいるのか? あのゴキブリの数 25 なんですよ。

思わずWikipediaで数えてしまいましたよ。ちょっと分かりにくいですが一覧に乗ってるある数を足してある数を引くと確かにそうなるので、そう言う事だと思います。

そう、悪趣味ですね。なのでペンギンの正体が公式に言われる事は無いでしょう。

でもフォローはしておきます。ここまでするから私はWikipedia調べ、見て、あの事件の事はなんとなく知っているつもりでしたが、実は良く分かってなく「ああこんな事件だったんだ」と驚きました。山田玲司さんがイクニさんは覚悟を持ってやったんだと言ってましたが、その意味もこれで分かります。危ない橋ですものね。これが悪趣味なのか覚悟なのかは皆さんの判断に任せます。

 

1号ペンギンの正体

長くなってきましたね。あきてきましたよね。

1号ペンギンは左兵衛です。

細かな理由から。初めの登場の時きゅうりをすごい速さで切ってました。フグをさばける人だからです。

1号が冠葉の事を表しているにしてはエロ過ぎると思いませんでした? まあデフォルメしてるのかな? と思いましたけど(2号もそうですけどデフォルメに見えてそうじゃない、と言う所が上手すぎてもはや気持ち悪いですね)。16話での左兵衛の行動は昔ながらのエロさを表す表現だったので、左兵衛の方が1号に合いますね。

皆が1号が冠葉の事を表していると思うと言う事は、それでも似てると言う事ですね。同じじゃないが似てはいる。夏芽真砂子は言ってましたよね「紅茶と男は初摘みにかぎる」と「チャイナマネーにやられちゃいな!」と、左兵衛も同じ様な事を言ってました。だから冠葉に似ていても、もっともなのです(夏芽真砂子は殺したいほど左兵衛を憎んでたのに似てしまう。家族の絆と呪いを感じさせます)。

左兵衛の回 16話 この終盤に差し掛かろうという時にこのくだらなく長い話。なんだろな? と思いませんでした? 左兵衛の回だけではなく1号の回でもあったんですね。左兵衛の人間味では無く1号の正体の話でした。ちなみに幽霊で左兵衛が出てきますよね。物語的には眞悧(さねとし先生)のいたずらでしょうが、イクニさんは幽霊もいる話だと皆に気づいてほしかったんですね。

まだ納得しませんか?

16話「死なない男」の初めの方にいつものプリンセスオブクリスタル(変身した陽毬)が出てきます。いつもボタンを押し落とす役は2号です。残りの2匹はプリンセスオブクリスタルにいつも最後踏まれています。この回だけ1号の代わりにフグを踏んでいるんですよね。覚えてますか? 何だろうと思いましたよね?

なので1号はフグ……じゃなくて左兵衛です。

 

エスメラスダの正体

いや。これは分からないな。

でも状況証拠から分かる範囲で予想しますか。

まず女でしょう。これを男にするなら製作者の意図が分からない。

女で夏芽真砂子に付いていく存在。夏芽真砂子のお母さんですかね?

どうせ分からないので、一度お母さんと仮定します。

そこから、ペンギンなので悪い事をした筈です。とても悪い事をした。

そして、冠葉の父はなんで冠葉を拒んだのか?

冠葉の父の意味深な言葉「私は家族に失敗した」

エスメラルダの猛烈な1号へのアプローチ

それらを考慮して、導き出せる答えは……

あれ? もしかして冠葉って左兵衛の子?

冠葉の父(かどうかもう怪しいですけど)が亡くなり、高倉家に冠葉が引き取られる事になる時、剣山は冠葉の父(兄かな?)を「友だった」と言っています。友の子ではなく友の弟なら引き取った時、自分の子供の兄にすえるのも納得が出来そうです。

まあなんであれ、世の中には知らない方が良い事もあるのかもしれませんね。

あとは陪審員である皆様におまかせします。

 

ゴミはゴミ箱へ

1話の電車に出てくる中吊り広告が「ゴミはゴミ箱へ」です。

その後ペンギン三匹がゴミ箱から顔を出します。

1号、2号はゴミの様な存在なのでゴミです。そして「ゴミはゴミ箱へ」に導かれゴミ箱から顔を出します。3号はって? 猫だった最後にゴミ収集車で運ばれて行くからです。かわいそうです。

この時顔を出したゴミ箱が最後の運命を表している。と誰かが言ってました。

2号は燃えるゴミなので晶馬は燃える。

3号は燃えないゴミなので陽毬はそのまま残る。

1号は資源ゴミなので冠葉は粉々に砕かれる。

だそうで、確かに冠葉が砕ける時に、子供ブロイラーで使ってた長いねじの様な物で粉々に砕く機械の絵が一瞬入ります。結晶化して勝手に砕けてるので無く、何か見えないもので砕かれているという演出なので、あっていると思います。

ちなみに左兵衛は「夏目家の男子たるものいかなる困難にもすりつぶされてはならん」と言っています。新たな死亡フラグですかね?

で、この3匹は3兄弟の後を付けてた訳ですが、問題はこの順番です。

不思議でしたよね? なんで付けてた後に高倉家にダンボールで郵送されたのか? 逆じゃないのかと。

ここにちょっとした親子間の和解が見えます。

つまり3匹は「次お前達ペンギンな」と神に言われ、幽霊として転生されるのを待っています。その時に自分で気になって3人の後を付けていたのです。

そしていよいよペンギンとして転生される時が来ます。あのベルトコンベアーとダンボールで運ばれるシーンです。子供ブロイラーのコンベアーの使いまわしで(わざとかも?)分かりにくいのですが、そうじゃなく新たな子供を次の世界に送る、あの世のベルトコンベアーです。あの3匹は梱包され送られ、あのベルトコンベアーの端から落ちればどこかの世界でペンギンとして生まれ変わる所でした。それを不思議な力が逆戻しにして、高倉家にそのまま送った、と言う事です。なのでまだ幽霊のままです。あのタイミングですからやったのはたぶん桃果です。ペンギンを監視役で使ったんですかね? 「気になってるなら手伝えよ」と言う事でしょうか?

 

しかしとなると、祖父さん(‘もしかしたら父)、父さん、猫です。

祖父さん、父さん、猫です。

陽毬ちゃん、猫ですか?

いや、たまたま亡くなってまだ転生してないのが、いなかっただけかもしれませんけど、猫ですか? 他にいませんか?

陽毬ちゃん、ドンマイ。幸せになってもらいたいですね。