映画「ミッドサマー」考察です。
まず第一感想、「難しすぎるよ!」
ただヨーロッパ、アメリカ、イスラエルの人々なら、もっと早く答えにたどり着いたことでしょう。
第二感想「おみごと!」
見る前は毛嫌いしてましたが、いやいやどうして、とても凝っていて、細かく出来ています。
そしてラストも、見事と思ってしまいました。
第三感想「やばいだろ」
いくらなんでも、やばい物を作ったね。
この裏に隠すやり方、「書を捨てよ町へ出よう」「天井桟敷の人々」「カリガリ博士」などと同じですね。
だから「馬鹿だから、やばくても、わからないだろ」と言う意味も入っていて、だからこそ、やばさ百倍でした。
(スウェーデンの風習とか、オズの魔法使いとか、ルーン文字の意味とか、小物でのヒントとか、とにかく、どうでもいい面白要素満載です。これは純粋に表を楽しむ要素であると同時に、馬鹿を誤魔化す要素でもあります。さて、本当に大事なのは何か?)
第四感想、「Wikipedia 最高」
これはこの映画に限らないのですが、暗喩物はwikiがないと無理です。少なくとも私には無理です。
ネットの存在、そしてwikiの存在が、暗喩を理解するには必須です。
多くの物語の「大きな暗喩」を理解するには、wikiが出てくる現代のネット社会が必要だったのですが、考えると不思議なものですね。
暗喩を解くには、時代が大事だと言う事です。
まず表から、
長い話なのに、緊張感がある為か、見てられました。
それだけでよく出来ている。
表だけ見てもちゃんと出来上がっているのだから、そこも見事です。
ただ、表だけだと弱いと思います。
見る前は「こんな恐怖見たことない」などと言う感想が多かったので、期待しましたが、見てみるとただの「カルト教団映画」にしか見えなく、別に新しくもないだろ?
次に裏、
主人公の女性がダニーです。
ダニーはダニエルの略語ですね。
だとしたら「ダニエル書」からきているのは、分かるでしょ?
ダニエル書は旧約聖書の一書だそうです。
「ダニエルと三人の若者が、バビロニアに捕囚されたが、ダニエルはうまく生き残り、権力者に重宝される」という話です。
この話で、ダニエルはいくつかの幻想を見ます。
その幻想の内容から、その時代か、その後の時代を表しているのだそうです。
他にもダニエルはその時の権力者の夢の内容を「こういう理由です」と謎解きをしてるのだが、これは「暗喩で表したものを解いている」という事です。これは、映画が暗喩物語だという事の、ヒントでもあるのでしょう。
そしてここらが、本題です。
この更に下、そこに隠された暗喩の方が大事なのです。
なぜミッドサマー(夏至)なのか? なぜカルト教団なのか? なぜ皆共感して泣き叫ぶのか? ダニーとは誰なのか?
まず言っておきますが、暗喩として、細かな人が誰なのかは分かりません(もしくはどこの国なのか?)。
流石に日本だと情報が少なすぎるし、これ以上は私には無理です(英語が分かる人ならもっと分かる事でしょうが)。
この映画「ボーはおそれている」のアリ・アスター監督じゃないですか。
私は前に「ボーは恐れている」の考察をしてなければ、分からなかったと思います。
まず最近恒例の、よく出てくるポスター画像からです。
花畑に十字架みたいな物、そして空が青、その他よくあるのが主人公ダニーの顔ですね。
この画像、意外と上手い。恐れ入ります。
まず、空が青です。
そう、最近恒例の「空が青」なのです。
つまり、またまた、ウクライナです。
でもこの映画、2019年であり、ウクライナ戦争前です。
この時に、ユダヤ人監督が気になる事とは?
それが「ウクライナにおけるネオナチ問題」です(wikiでもあるので良ければ見てください)。
ウクライナ戦争で「実はネオナチがウクライナには本当にいる」と言われていたので、知ってはいましたが、やはりいたようです。
そこはプーチンの幻ではなく、本当にいて、だから「プーチンのプロパガンダに利用されてしまった」という事です。
ウクライナ戦争で有名になったアゾフ連隊ですが、ネオナチ風のエンブレムをつけているのも前から言われてました。これも本当だそうです。
アゾフ連隊のエンブレムが、黒き太陽にウルフフックを重ねたようなマークです。
どっちもナチスを象徴するマークです。
ウルフフックは、N字に一本棒が真ん中に入ったようなマークですが、昔のはN字だけだったのもあるようです。
映画で、黒人が死ぬ前に靴がアップで映されます。この靴のマークがNマークであり、たぶん元ネタがネオナチ側の人だという暗喩でしょう。
(最後死んだウルフと言う名の人も同じくネオナチ側の人の暗喩でしょう。誰かは分かりませんが、本当にいた人の暗喩でしょう)
他にもナチスでよくあったマークが、トーテムコップ(ドクロマーク)です。
映画の始めに出てきた絵がありました。左上にドクロマーク、右上に太陽マークでしたね。ここでもう、ナチス関連を言いたいのだと、分かる人には分かったことでしょう。
(翻訳版で見たから分からなかったが、妹のメールにも「……全てが黒い」とあり、村の人の言葉にも「黒いそれが……」とあったようです。それを訳す人が省いたから分からなかったが、これもヒントです)
ミッドサマーは夏至のことですが、ここでは白夜を表しています。
まず、ウクライナの旗のことです。上が青なので、いつも青空と言う事にかけています。
それと同時に「夜にならない」こともかけています。
つまり、夜にならないので「星が出てこない」事を表している。これが面白い。
星とは?
イスラエルの旗が星ですね。アメリカもソ連も星がある。そしてEUにNATO、全てが星です。
このどれでもないし、それらが全て味方ではないことを表したがのが、白夜です。
青い空なのがウクライナだけだと見れば、可哀そうな気もしますが「ネオナチも普通にいるような国だから一人ぼっちだ」という苦言でもあります。
まず映画の始めに両親に妹の三人が死ぬ。しかも自殺です。
これが、クリミアとドネトゥクとルガンシクの事です。
自殺なのは、住民投票でロシア側に行ったことの暗喩です。
だから悲しむのです。
では、主人公ダニーは誰か?
ユーリア・ティモシェンコの事です。
ユリアはユリウス家の人だと言う名です(カエサルとか)。
ユリウスは、さかのぼっていくと女神ウェヌスにたどり着く、とされています。
女神ウェヌスが荘園を司る神です。
だからずっとダニーは植物まみれなのです。
「ガスの王女」と言われていたようです。
彼女に限らず、ウクライナのオリガルヒたちは、別に精錬潔白ではない。
だから両親妹がガスで死ぬのは、皮肉でしょう。
(たぶん、自業自得と言う意味もある。裏は分からないが、ロシアとも関係があった事でしょう。オリガルヒならね)
彼女はオレンジ革命で、ヴィクトル・ユシチェンコを支持して注目を浴びたのだそうです。
だからポスターでダニーはオレンジの花を頭につけています。
頭の花で誤魔化してますが、実は髪を上で結っていますね。これがウクライナの伝統的な髪型であり、ユーリアがよくやるトレードマークになっている髪型です。
オレンジ革命はウクライナでの大統領選挙の結果の抗議運動として行ったものであり、大衆がオレンジ色をつけて講義したようです。
そのかいあって、大統領選挙やり直しになり、ユーリアが進めるヴィクトル・ユシチェンコが大統領になるのです(ダイオキシン毒をもられて顔が酷いことになった人がいましたね。この人の事です)。
その後にユシチェンコとの仲が悪くなったのがユーリアです。
だから映画のクリスチャンが、このユシチェンコのことだと思います。
ユーリア事ダニーが見限った人、という事です。
ユシチェンコがなぜクリスチャンなのか?
この人の奥さんがカテルィナという人で、CIAのスパイじゃないのか? と言われていた人です。
だからアメリカ側のスパイと寝た男ということで、クリスチャンの事なのだが、キリスト教徒だったのか? もしくはキリスト教に寝返った人、という意味かもしれません(ユシチェンコの父はたぶんユダヤ系です)。
(裸の女が後ろに12人。たぶんNATOの始めの12か国かな?)
ちなみに、ユーリアもユダヤ系ではないのか? と言われているようです。
ダニーも結局あの村に染まった、という最後でした。
クリスチャンもそうです。
つまり両名とも「始めは村側では無かった」って言う事です。
そして死んだ皆は、あの村に殺された、という事です。
(たぶん村で死んだみんなは、ウクライナのオリガルヒの誰かだと思っています。誰かは分かりませんが)
では、村は何か?
あの村はルーン文字を使います。
それは北欧もそうですが、ドイツもそうです。
だからナチスの事なのですが、そう簡単な話ではない。
まず老人二人のうちの一人はハンマーで殺されてました。
ハンマーとはソ連の国旗の事です。
小屋の中で吊るされて殺されてたのは「血のワシ」という殺され方なのだそうです。肺を出し、羽に見立てた殺し方です。
ワシとは、アメリカの国章のワシです。
つまり、ソ連(ロシアなのだろうけど、ウクライナの事はソ連の呪いとも言える)と、アメリカと、ナチスなど、全てのおかしいやつらの暗喩があの村です。
そしてそれらは全て、キリスト教だと言うのです。
あの村にあった十字架のような物、あれは「十字架のようで違う、カルト教団の象徴」と、見えるように作ってる。
でも実は、キリスト教そのものだったのです。
(映画のペレって、それこそキリストじゃ無いのかな?)
ユダヤ教徒にとって、キリスト教とは、ただの新興宗教であり、元のユダヤ教を捻じ曲げたカルト集団でしかない。
その事を表している。やばいね。
それらが集まり、ウクライナなどで、自分らで殺し合っている。
それを映画では村人も殺すし、他の人も殺す。それこそクリスチャンも殺す事で、表していたのです。だからやばいって。
そこに星はない。ユダヤの星はこないのです。だから白夜で、ウクライナなのでしょう。
少なくともユダヤ人どおしは助け合い、殺し合いはしない。
そう考えれば、同じキリス教徒同士で殺し合う事を揶揄ってみたくなるユダヤ人もいる事でしょう。それがアリ・アスター監督です。
この映画は2019年です。その一年前には映画作りが始まっている。
2019年、ゼレンスキーが大統領に選ばれるのだが、多分映画には間に合ってはいない。
2018年頃は、このユーリアが一番人気だったようです。
だから、アリ・アスターはこの映画をユーリア主人公で作ったのだと思うのです。
しかし実際はゼレンスキーでした。
そしてウクライナ戦争になる。
だとしたら、決着をつけるために、他の映画を作りたくなるのもうなずける。
それが「ボーはおそれている」だったのでしょう。
映画の村の人々は、共感して泣き叫びます。
しかし泣き叫ぶだけです。
キリスト教徒は、ウクライナで何かがあってもやる事は「泣き叫ぶだけ」と言いたいのでしょう。
「共感してるように見せているが、実は何も助けはしない」
「それこそがキリスト教だ」と言いたかったのです。
それがこの映画の最後です。
だから「見事」と思ってしまいました。
感想で終わらせます。
思った以上に見事な映画でした。
しかし、やばい映画だね。