号漫浪正大

輪るピングドラム ~物語を見直す

偶像

アニメ【推しの子】見ました。感想です。

 

上手いですね。

教科書の様な作りです。

 

正直言うと、天才的な要素はない。

驚く仕掛けや流れ、もしくは良く出来た人間描写などは、無い。

どこかで見たようなキャラ設定、どこかで見たような作り、流れです。

 

前にも言ったけど、だからと言って否定的では無いのです。

天才じゃない人が、努力で成し遂げれる(可能性がある)物こそ、作り手は興味をいだくべきなのです。

 

これは私が好きな「シュタインズ・ゲート」もそうです。これもどこかで見た事のある要素から出来てました。

しかしだからこそ、ありきたりな要素でも、あそこまで面白く出来る事を証明してくれたので、とても好きな作品です。

それと同じような感じが【推しの子】にも感じられました。

 

内容の事です。

異世界じゃないけど、異世界転生物です。普通の人では入れない、芸能界と言う異世界に転生する話です。

異世界物でのお約束がチート能力です。つまり、なぜか「元から強い」と言う、あれです。アクアは元の記憶がある為、子供にしたらすごいと言う設定です。

 

アクア一人だとつまらない。すぐネタ切れになる。

だから他の要素が必要です。だから妹ルビーがいる。

この子がまた、体が弱くてすぐ死んでしまうと言う、お涙ちょうだいの、よくある設定ですが、ちゃんと手を抜かず作って来る所は好感が持てます。

 

アクアが、これまた良くある、クールで頭がよく、なんでも出来る高校生役です。

これは少女漫画などではよく出て来るのだろうけど、実際には存在しないキャラです。

しかし大人が転生した、と言う事で成り立つようにしている所も、ちゃんと作っている。

 

一話で、アイが関係しない話で、子役シーンがありました。

そうか「子供が珍しい世界に入る、成長物語」をやるつもりか? と思いましたが、やはりそうでした。

これは「ヒカルの碁」とか「のだめカンタービレ」などの事です。珍しい世界で、しかし金が儲かる世界で、子供がもがきながら成長して大人になる物語の事です。

 

これが良いのは「珍しい世界を垣間見る」所です。今回は芸能関係ですね。

知らない世界を見たいのが人だからです。

 

スポーツ物(サッカーや野球)も、同じなのですが、スポーツは学校でやったりするし、必ずしもプロを目指す物でもない為、少し形相が代わります。

スポーツは、ちょっと学園物だったり、青春物になりがちだと言う事です。

しかし文系である碁や音楽や演劇は、基本プロを目指す子供になるので、厳しいプロの世界が子供時代から入れ込まれ、スポーツとは違う感じになるのです。

どっちが良いとはありませんが、泥臭い世界を演出したいのなら文系です。逆にさわやかさではスポーツですね。

 

この文系子供物にするが、さっき言った様に一個だとネタ切れになりやすい。

そこで二人兄妹にして、演劇とアイドルにしてしまう。

そう、これです。要素を増やすのは基本だと、認識しましょう。

しかも相互関係もある仕事なので、そこも良いですね。

 

ミステリーを入れて来る。

そうそう、まさにそうです。良く分かっています。

必要なのは、まず恋愛要素です。これが必須なのは皆知っている。

私が思う次点が、ミステリー要素です。これで引っ張れる。

ちゃんと裏に一本ミステリーを入れ、表の学生芸能物語と分けたもう一つの裏の物語を入れて来るのが、本当に分かっているなあ、と感心する。

これがどっちかでも、ネタ切れになりやすく、客も飽きやすくなる。

だから両方入れ、しかも双子にしてこれも両方入れる。見事です。

 

そしてもう言いましたが、大事なのが恋愛要素です。必須です。

だから入れてきてます。

これは普通なので言う事も無いですが、まあ普通でも色が付くので、やはり必須です。

 

アイドルを目指す人を集める。

これも、グループを作るのに、段々人を集めると言うのは、もう昔からのお約束ですね。

 

各々が何かしら問題を抱えている。

有馬かなも、黒川あかねも、めむちょも、みなそれぞれ問題を抱えていて、さらっとしない。

これも大事です。さらっとした、問題がないキャラでは埋もれてしまうだけです。

 

毎回しつこくこれらの裏の問題の話を入れて来る。

これも深みが出るから大事なのですが、ちょっとアニメだとしつこいかな? 連載で間があく漫画だと言いかも知れませんけど。

 

今の流行として、悪い人が出て来ない、と言うのがあります。

しかし、まるっきりいないとつまらない。

だからこの話は、ちょっと悪そうな人や、ネット暴言問題をだすけど、基本悪い人がいません。

スタッフも、仲間も、あんなに良い奴ばかりでは無いだろうが、そこを誤魔化す所は、現在の「うけ」を分かっているのでしょう。

 

とにかく、このアニメ(漫画)は、教科書みたいな作りです。

この様な作品から学ぶべきですね。

ただ教科書みたいな物語しか作れなくなりますが、基本が出来る人がそれ以上を目指すのです。

基本が出来てない人が、それ以上を目指すからダメなのです。

 

さて悪い所、と言うか、気になった所。

アイがロボットみたいです。

ただ、ああ言う人こそ、人知を超えたカリスマではあるので、間違ってはいない。

明らかに典型的なサイコパスなのだが、サイコパスが天才的な人が多いのも事実です、

出て来なくもなるので、あくまで象徴的な存在でもあって、だからサイコパスでも良い事も、間違ってはいない。「桐島、部活やめるってよ」の桐島みたいなものです。

 

他にルビーもアクアも、どうもステレオタイプからは飛びだしてはいない。

人間を構築してある、と言うより、ステレオタイプから持ってきたキャラ、で小さく収まっていると言う事です。

これは、他のキャラでも、ほとんどそうです。

 

これは言ってみれば「まだ上がある」と言う事です。

ただ教科書通りに構築して、上手く行ったとしても、まだもっとやりようが残っている、と言う事です。

 

そして、その上とは「人間を描く事」であるのが分かります。

もっと人間を描ければ、それこそ万人を唸らせる物になる事でしょう。

(もちろん、他の事もそうです。ミステリー要素とか、芸能うんちく要素とか、それらだってもっと上もある事でしょうが、まずは人間を描く事が大事だと言う事です)

 

アイドルとは偶像の事です。

この話も偶像的な偽物の作りで終始してしまい、それ以上にはなれていない。

 

何度も言うけど、物語自体の否定ではなく、あくまで「もっと上もある」と言う事を言いたいが為に、言っただけなのは、伝えておきます。

せっかくここまで来たのだから、さらなる高みを目指してほしいですね。

(これこそ前回のここのブログで言った、純文学要素がもっと必要だと言う事です。そして前回言った様に、まどマギこそが純文学でした。そしてだからこそ歴史に名を残した事を理解するのが大事です)

 

個人的には、二期以降の続きを見たくなる作品でした。

二期も楽しみにしておきます。