号漫浪正大

輪るピングドラム ~物語を見直す

小説と現実の違いとは何だったのか?

映画「ノクターナル・アニマルズ」見ました。感想です。

 

何か難しい映画を見たくて、ネットで探して出て来たのがこの映画です。

 

たぶんですが、素直な映画です。謎は無いと思う。

 

ネットで探すと「実は主人子の女が、小説を書いたのでは無いのか?」とか言われています。

この様な考察を見て気が付いたのが「それが面白いのか?」と言う事です。

 

万が一、この様な考察があっていたとして「だから何?」と思ったのなら、それがあっていたとしても意味が無い。

 

そう考えると、考察が必要な作品に、必要な要素が分かってきます。

まず、謎が分かった事により、スッキリして面白く感じるのか? と言う事です。

それが無いのなら、考えても意味が無いし、分かっても意味がないのです。

 

この作品は、素直に見た物が(今の所)一番スッキリします。

だから分かってない謎など、無いのでは無いのかな? と思っています。

 

では、ラストはなんなのか?

まあ、いくつか考えられるのでしょうけど、私の考えを置いときます。

 

小説の中の主人公は、最後復讐を果たすが、死にます。

つまり「昔に対する後悔はあるが、結局何も残らず皆死んだ」と言う物語だったのです。

最後のレストランにあらわれないのは、復讐だとも取れるけど、しかし勝ったのは小説家の男ではない、と言う事です。

結局「女も男も、犯罪者も復讐者も、皆死んだ」と言う、バットエンドの事を、小説家の元旦那は、現実でも表したのでしょう。

「勝った者は誰もいなかった」と言う事です。

 

映画自体は、そこそこ面白かったですね。

ただ、デビットリンチみたいな、強烈な印象はない。

映像も、個人的に妙に綺麗です。だからか不思議さも不気味さも感じない。

細かな事は分からないのだが、どうも演出が凡庸だった気がするのです。

だから、内容は面白そうなのに、どうも今一心に刺さらない。一か月後には忘れている内容です。

話が良いだけに、なにか、もったいないな、と言う心象が残る作品でした。

 

最後はバットエンドであり、悲しいラストです。

しかし男が送って来た小説と、違う所があります。

それは「男も女も生きている」と言う所です。

皆にとって不幸があったが、実は「生きているからまだましだし、これから未来がある」と言う、元旦那からのメッセージにも見えるのです。

主人公の女は、あの小説から、自分達の不幸に気が付き、しかし小説と違い、死んではいない。小説の男みたく、未来が無いわけではない。

最後、レストランに男があらわれたら、女は後悔しないのです。上手く行きぬいたと思う事でしょう。

だからあれでいい。

あれで、後悔して、反省して、これからやり直せるのです。

そこまで見越していたのなら、この小説家は、本当にいい奴だったのです。

 

 

2023年 5月16日 やっぱり追加

 

ごめんなさい。相変わらず追加です。

 

そうだ、気になっていた事がありました。なぜ「ノクターナル・アニマルズ」と複数形なのか?

それにREVENGEの絵を覚えていなかった事。

 

映画の中で主人公の女が「夜行性」だと前の旦那に言われてました。

ノクターナルアニマルで夜行性の動物。

それに複数形であると言う事は「多くの主人公の女がいる」事を暗示させます。

 

つまり、この映画の作りだと、やはり主人公の女が小説を書き、それを前の旦那が書いたと思っている、と言う話なのかもしれません。

だとしたらそもそも小説の中身など、始めから無いのかもしれないけど。つまり彼女の頭の中で描いている物語なのかもしれない。

 

これはネット上の考察の内容なのだけど、小説の中の話はエドワードの事ではなく、主人公の女の内面の話である。

だから全て「女の問題点や不安が擬人化、物語化されたのが、小説の内容だ」と言う事でした。

(始まりに出る太った女も、主人公の悩みの擬人化でしょう。つまりヒントです)

確かに、この映画の作りだとそう見える。なるほどです。

だとしたら、最後エドワードが来なかったのも、そもそもエドワードからのメールなど無かった、と言う話だった気がしてきました。

 

ただね。だとしたら昔ながらの三文芝居なんだよね。

精神不安定な主人公の妄想物語なんて、今更古すぎる。

やはりそれは、あっていたとしても面白くない話なのです。

でも作りから言ったら、確かに妄想物語の作りです。

だからこれは、監督の失敗じゃないのかな?

そんな謎要素なんていらなかったのに。

 

やはり単純に、前の旦那が送って来た話の方が、面白いと思います。