号漫浪正大

輪るピングドラム ~物語を見直す

皇居東御苑

子供の頃、盆栽が出てくるアニメがよくあった。

例えば、近所の頑固オヤジが作っていて、子供が野球をしてボールが飛んで盆栽に当たり怒られる、と言うのがドラえもんの定番でした。

 

子供の頃、盆栽は意味が分からないと思ってました。

あれの良さが分かる日が、はたしてくるのか? と思ってました。

そして、もし来たら、自分もおじいさんなのだろうと思ってました。

 

最近強く思っていることが、物語とは何でも良く知ってないと作れないものだ、という事です。

なんでもとは、なんでもです。

少なくとも、アニメを作るのに、アニメだけから勉強をしていたらダメでしょう。

一部分が尖ってくるが、他の要素は段々削がれていって、奇形のような作品になっていきます。

その事を寺山もどうやら思っていたと、思っています。さらば箱舟を見てです。

 

なので今回は、最近思った、お気に入りの場所の事を書きます。

知っている人にとったら、今更な有名な、東京の場所です。

東京内など、何も興味がなかったのが子供の頃です。

今は、東京内も味があるな、と思えてきたと言うことであり、たかが東京を散歩するだけでも、物語制作にも役に立つだろうと思うのです。

 

逆に言うと、アニメを見ていて、東京くらい散歩してるのかな? と思う作品があります。

家でアニメを見て、映画を見て、漫画を見て、そこからだけ出来ているかのよな、視野の狭い作品ばかりな気がしてならないのです。

 

さて、春になった頃、今年も桜が咲きました。

コロナも収まり、散歩がてらどこか桜の名所でも(近所の)見に行こうかと、思った次第です。

 

ネットで探すと「皇居の乾通りが、数年ぶりに通れる」とありました。桜のころだけ一般公開するのだそうです。

皇居あたりは、自分には関係が無いところだと思い、気にしてなかったのですが、一度入ってみたかったので、行ってみようと思いました。本当に今更ですが。

 

皇居の坂下門から乾門まで、真ん中あたりを真っ直ぐ抜けるのだそうです。

私は確か、3月末に行ったと思います。

 

皇居の前は東京駅ですね。

あのへんの広々して整備された景色は、昔からなんとなく好きでした。

電線もない近代的なビルが立ち並ぶ場所です(日本では珍しい地下に電線がある所ですね)。

しかしその向こうに広々した皇居と木々が見え、そのコンストラストが日本的です。

皇居方面の建物の、高さが無い所も日本的です。

(この感覚を物語に取り入れる人が少なすぎますね。ファイブスターのコーラスの建物が低いのは、このあたりから来てるのでしょう)

 

皇居は元は江戸城ですから、周りに堀がありますし、石垣もあります。

歴史を感じるのはもちろん、見た目に彩りを与えているので、いい景色です。

 

皇居外苑内堀通りの外側は公園になっていて、入れます。

芝と松だけですが、この松が浮世離れした雰囲気を作っています。

 

しかも芝がいい。東京駅から離れた方の芝なんか「入っていいのかな?」と思うほどフカフカです。

一般人が、ただで入れる芝で、これほどいい芝なんか、たぶん他に無いのじゃないのかな? と思います。

なので、一度踏んでほしいものです。

 

さて、乾通りの一般公開ですが、流石に人は多かったです。持ち物検査もするしね。

 

入って見て分かったのが、桜は大したことはない、という事です。

周りのしらないおばちゃんが言ってましたが「もっと桜並木かと思っていた」と言う事です。

小さめなこじんまりした桜が、少しあるだけなので、あまり桜に期待すると損をします。

でも、個人的にはあの位の方が風流だと思うので、皇居はあれで正解だと思います。

 

大事なのは「他のなんてことのない木が素晴らしい」それに加え「庭全体の手入れが素晴らしい」と言う事です。

 

ちなみに、私は植物は詳しくはない、どころか知りません。

それに庭の手入れについても、よく知ってる訳ではない。

つまり、技術的な事や、学術的な事の感動したのではなく、単純に「見た目に感動した」のです。

美術的なセンスが素晴らしい。

たぶん庭師が素晴らしいのでしょう。

 

それで思ったのが「これは盆栽に感動するのと、同じ様な感覚だろう」という事です。

良くも悪くも、とうとう私は盆栽などの良さが分かって来てしまったのでしょう。

 

盆栽の「作り物でない植物の良さ」と「手を加えた手作り物の良さ」が融合している作品だと言うことに気がついてしまったのです。

そこにはプラモデル的な、作りの良さ、上手さ、に加え、すぐには作れないと言う、時間をかけて作る難しさ、それに自然の物の暖かさや、自然が作り出す予測不可能性からの面白さ、もある事に気がついたのです。

 

とにかく、木々が素晴らしい。遠くに見える木々さえ素晴らしい。

あまりいいので、花ばかり見て、大して見ないで通り過ぎる多くの人々に「ちょっと止まって、周りをよく見て!」と言いたくなりました。言い始めたら警察に捕まるから、やらなかったけど。

 

そうして、最後は乾門を抜け、終わるのですが、その隣が「北の丸公園」です。

もと江戸城エリアの、今は公園になっている所です。せっかくなので見て帰ろうと少しよりました。

まあ、公園です。公園レベルです。

残念ですが、金のかけ方が違うのだろうから(管理の管轄も違うし)しょうがないのだけどね。

 

乾通りに感動したので、ネットで皇居を調べてみました。

私は知らなかったのだけど、皇居の東側、元々江戸城天守閣があり、将軍が住んでいた本丸は、今は一般公開されているのですね。

知っている人には当たり前だろうけど、よっぽど興味がなかったのだな、と自分でも思いました。

そこは「皇居東御苑」と言うらしく、言ってみようと心に決めたのです。

 

後日「皇居東御苑」に言ってみました。

持ち物検査されるけど、ただで入れるのでお薦めです。

 

ここも堀もあり、石垣があり、綺麗に管理された木々があります。

この木々が、また素晴らしい。手入れや管理が素晴らしいのかな? とにかくいいですね。

 

少し坂を登りなが奥にいくと、広場に出ます。その向こうに天守台が見えます。

天守閣の台だけが残っているのですが(これも後で作ったやつですが)その当たりが有名な「大奥」です。一番奥という事でしょう。

その手前が「中奥」で、将軍が住んでいた所です。

その手前が「表」で普通の大名などが入れるのがここまでです。

ここに松の廊下があったらしく、ここで浅野内匠頭吉良上野介の切りつけたのですね。

今は何も残ってないのだけど「ここだよ」と言う看板はあります。

そのちょっと向こうに将軍が住んでいたし、そのちょっと向こうが大奥です。

その手前で刀を抜いて、偉い人に斬りかかろうとしたことを考えたら「そりゃ切腹だろ」と分かりました。

 

この辺の端にも木々が植えてあるのですが、まあ一見なんてこと無いのです。

しかしとりあえず、周りを見ながら歩きます。

私は、絵になる場所を探しながら歩くのです。

そうすると「あ、このアングルは絵になるな」と思う。

少し歩くと「ここも絵になるな」と思う。

周りを見回すと「ここも絵になるな」と思う。

しまいにゾッとするのです。

絵になる所が多すぎる。

これはかなり計算されて木々が配置されている事、適度に間引いている事、そして木々の管理が行き届いていることが、分かるのです。

 

いやー、ここでも、プラーっと歩いている人達に「いやもっとよく見て」と言いたくなりましたが、捕まるのでやめました。

 

長くなるので割愛しますが、その後日本庭園になっている所に行きます。

ここも一見なんてこと無い。

日本庭園になってない所から、急に日本庭園になっていて、区切りが良くない。だからなんだかなあ? って感じです。

池があり、中に島らしき物があるのですが、島になって無くて道が作られています。しかも舗装されている。

これが泥臭いのですが、どうも平成天皇が散歩に来るような場所なのだそうです。

それもあり、皆が安心して歩けるように、舗装して島(だったはず)の真ん中までいけるようにしたのかな? と勘ぐっていますが、泥臭い作りなのは間違いがないのです。

なので「ふーん」って感じで周って見てました。

 

しかし三分の二くらいまで見て回ると、デジャブです。

「あれ? ここも絵になる」「ここも絵になる」と来るのです。

そうです。これも見て周ると、出来の良さが分かるのです。

細かな木々の配置と管理が素晴らしいのでしょう。

(流石に京都のような凄さはない。だから一見なんてこと無い。しかし手の入れ方がいい。つまり庭師の腕がいいのでしょう)

 

日本庭園は大きさや種類が違う植物を並べます。もちろん基本遠くの木ほど大きくです。

一年中楽しむには種類が多くないといけない。例えば桜だけだと一瞬しか楽しめないからです。

この庭園も桜があるけど、小さいのが真ん中にあるだけでした。

これがまた風情があるのです、少ない桜が一点華やかにすることに意味がある。

そして他の季節もまた、他の木々が彩りを見せるのです。

 

この辺に小さな茶屋があります。那須の茶屋というらしく、元は明治に作られたようです。

数寄屋造りで、これも一見なんて事ない。

しかしずっと見てられる。つまりよく出来ています。

たぶんバランスがいいのでしょう。

明治に皇居内で作られた茶屋なので、たぶん最高級だったに違いがないのです。

私は絵画とか建物とか、ずっと見てるような人ではありませんし、そういう人の気持ちが分からない人です。

しかしこの茶屋は見てられる。

単純に、美術的に素晴らしいのだと思います。

 

この茶屋の前辺りが雑木林です。

昭和天皇が武蔵野の自然を残そうと作ったようです。

これもまた、一見なんてこと無い。

で、またです。

中を通って絵になる場所を見て探します。止まっては周りを見る。

そうすると、スキがないのが分かります。

絵になる場所が多すぎる。素晴らしい。

 

とにかく、スキがなく(本当は少なくだけど)手入れが行き届いていたのが、皇居東御苑です。

一度行って、止まっては周りを見て、絵になる所を探してみて下さい。

絵葉書にもなる場面が多すぎることに驚くでしょう。

盆栽が分かる年寄りには、たぶん良さが分かるのじゃないのかな? と思います。

 

この後、他の場所にも色々行き、その感想も書こうかと思ってましたが、長くなったのでまた後にします。

ただ結果だけ言っときます。

東御苑レベルは、東京には(たぶん)ないです。

しかし種が違うが、良さのレベルが同じなのは明治神宮ですね。

あそこは素晴らしいですが、これはまた書きます。