号漫浪正大

輪るピングドラム ~物語を見直す

ぐちざんまい

何を今更な感想をいいます。アニメ「さらざんまい」の事です。

 

最近では古めの人になってきた私は、20年くらい前から音楽をmp3にして聞いてます。

さらざんまいのオープニングとエンディングの「まっさら」と「スタンドバイミー」(あの有名な曲ではないよ)をたまに聞きます。いい曲ですね。

そうすると「さらざんまい」を無性に見たくなります。

しかし実際見てみると、別に面白くはないのです。内容知ってるからね。

でも、また曲を聞くと、また見たくなる。

これはなんなのだろう? と思った次第です。

 

私が見たいのは、この設定を元にした新作を見たいのだけど、なぜこの設定に引かれるのか?

考えてみたら、私が見たかったのは「下町でのドタバタ人情物語」なのだなあ、と言う事に気が付きました。

この下町人情物語を作れる設定が出来上がっていたのが「さらざんまい」だったのです。

 

しかし見た人なら分かるだろうけど、そういう場面は少しです。

このアニメはワンクールだったので、つまり、長さが足りないのです。

 

では長さがあったら、下町人情物語として、上手く行ったのか? と言うと微妙ですね。

なぜならイクニさんは、そういう所は得意では無いだろうからです。

 

しかし、もうワンクールあって、暗喩を抜きにしたただの物語としての「下町人情物」としての要素を加えられていたとしたら、名作として残った気がするのですが、どうでしょうか?

基本本当にあったワンクール分はそのままでよく、その間に日常を膨らます要素を入れてほしかったですね。

そうすれば、キャラにも愛着がわくし、最後の三人の友情物としても、もっと盛り上がったことでしょう。

 

下町人情物として、しかも基本少年が活躍するものとして、よくある話が

「どこかの兄ちゃんの母が田舎から出てくる。母には成功していると嘘をついている。だから一日だけ成功者として演じてくれと、町の人達に頼む」

と言う話とか

「引っ越す隣に住んでいた幼馴染(女の子かもう少し上のお姉さんか?)のために、引っ越すからもう見れない、もう少しで咲く花を手に入れようと四苦八苦する。崖の上に見付け落ちそうになるとかね」

とか

「姉のお見合い相手を探ると、やばい相手だと分かり、懲らしめようとする」

等の話です。

これを三人の子供たちで、あれこれやれば、そこに友情が芽生えるのが客にも分かるでしょう。そこに深みと絆が見えてくるのです。

 

こう言う、古典的だが最近無い話を、私は見たかったですね。

 

ではイクニさんは出来たか? と言うと怪しい。得意ではないでしょう。

それはピンドラのカンバを見れば分かります。

彼がダースベイダーであり、闇落ちしていく話です。

だから、彼に客が乗れれば名作になる。

だけど、カンバはどうも共感出来ないですね。

ただの、イケメンな行動力があるやばい奴にしか見えないからです。

暗喩を無視して話しますが、とすれば、ここは失敗です。

 

そこで映画「ロッキー」です。

私がこのブログで前に、ロッキーにこそイクニさんが苦手な分野であると言いました。その理由です。

ロッキーも不器用だが才能はあり、しかし上手く行かなかった奴です。まさにカンバに近いキャラです。

しかしロッキーは皆に共感されます。これが違いです。

まず、ロッキーは良い奴なのです。これをしつこく描いてます。

好きになるのも、皆が興味を引く美人ではなく、地味な女です(出てくる人は本当は女優なので美人だけどね)。

そして人生に一回失敗して、這い上がっていく物語なのです。

 

この辺に、カンバとの違いがありますね。

せめてカンバにもう少し良いやつ要素を入れれば、物語としたら良かったでしょう。

しかし暗喩があると、それを入れれたかは謎ですが。

ただ、せめて、もっと「不器用だが真っ直ぐな奴」を強調することは出来たかと思います。

 

そう言えば、この単純な「古き良き物語要素」を入れないのか? 入れれない人として、寺山修司もそうでしたね。

寺山も、この普通の物語要素が下手な人だった気がするのです。

 

さっきの「さらざんまいに、もっと人情物要素を入れてほしかった」と言ったように、別に複雑な暗喩要素の合間に、普通の物語要素を落とし込むことも、少しは出来たかと思うのです。

そう、つまり「まだ上がある」という事です。奥はまだ深いと言う事です。

 

ただ、これは難しいのは間違いがない。

暗喩物語も、普通の古典的物語りも、どっちも名作にするには難しいのだから、その両方を得るなんて至難の業なのは、言っておきます。

 

ちなみに、それに近づく方法として「複数人で分担する」と言うのがあると思っています。

ただこれも、バランスを取るのは難しいでしょうけど、今まででも、かなりよく出来た物語がありましたね。

それが「まどマギ 叛逆の物語」です。

 

さて、私ごとですが「新たなさらざんまい見たいなあ」と言うのと「みたいアニメ無いなあ」と言うのが、今後も続いて行きそうです。

あんなに多くのアニメが世に出ている昨今、何か色々残念な世の中だなあ、と言う感想で終わらせます。

 

追伸

昔より子供の人口は減っています。

しかし春休みとは言え、アニメイト池袋店新しくなって、人がとても多かったです。

昔のアニメ関連ショプだと、アニメ柄の紙袋を手に持った、やばめの兄ちゃんたちがゾンビのように徘徊しているのが常でした(ごめんなさい。謝っておきます)。

それが、かなり洗練されてました。大体普通の人でした(あそこにいた奴で、一番やばそうだったのは、たぶん私です。若い人達の中で、おっさんが徘徊してるしね)。

まあ普通より尖った格好の人も結構いたけど、ヤバさが感じられないので、あれはあれでありなのでしょう。

あれを見たら、結構未来があるようにも見えました。

だから、どうか内容も世界に通じるものを作って行ってほしいのです。

日本ローカル、偏った趣味の人用、も否定はしませんが、それだけだと滅ぶということです。給料安いようだしね。