号漫浪正大

輪るピングドラム ~物語を見直す

リコイル多めの評価

アニメ「リコリス・リコイル」感想、ネタバレです。

文句多めです。

 

見てられないアニメが多い中、最後まで見てられたという事は、悪くはなかったのでしょう。

人気も、そこそこあったようです。

 

で、まずは物語から、

この物語とか設定なら、何処かの高校か大学の、マン研か映研に作らせても、同じレベルのが出てくるでしょう。

つまり素人レベルの設定、物語ですね。

 

面白いのは、これで見れるものが出来る、という事です。

アニメの動きや、絵柄や、キャラや、適度な媚を売るシーンなどで、見れる物が出来ると言うの証明してくれました。

つまり物語以外のところでは、上手い人達が作ったのでしょう。

設定や物語以外では、褒められる事をやったのだと思います。

 

さてこの物語の問題点を書いていきますが、言いたいことはいつもと同じです。

いつもの「リアルさの、レベル設定が間違っている」という事です。

 

このアニメもまた、人の死を軽んじているために、人が死ぬ恐怖を描けないようにしている。

なのに、主人公が死ぬかも知れないという、流れの物語にしてくる。

だから主人公もそうだし、他に人もそうなのだけど、緊迫感がない。死の恐怖がないからです。

このアニメの途中の回で、主人公が殴られるシーンがありました。あの時の方が痛さを感じられ、緊迫感がありました。

銃で撃って人が死ぬ物語で、殴られるシーンが一番痛い時点で、ただの失敗です。

 

このリアルさの欠如はなんなのだろう? と思い検索してみたら、納得がいく答えが見付かりました。

このアニメ、元々は「シティハンター」をやろうとしたようです。

なるほどです。シティハンターのいい加減さそのものでした。

 

漫画シティーハンターは、1985年から91年の連載だったようです。

つまり、バブルと共に現れ、バブルと共に消えていった物語です。

シティーハンター自体は昔の話なので、あれでも良いと思いますが、問題はそれから何十年も経っているのに、まだシティハンターですか? という事です。

まだバブル気分ですか? という事でもあります。

時代が経っているのだから、あれから何が良くて、何が悪いのかを考えて、新たな物語を構築するべきでした。

それが出来ていたら、名を残す物語になった事でしょう。

 

ただ、大前提として、この様なリアルさのない物語自体は否定はしません。

私が嫌いだった日常系も、ネットで山田さんが言っていた「しかし自殺防止になる」と言う言葉を聞いてから、肯定するようになりました。

だからこのアニメのような、日常系より、少し前に歩いた人用の物語、も否定はしません。

問題は、この作りを狙ったのか? という事です。

分かってやったのなら、馬鹿ではなく、それをやりたかったと言うことになるからです。

例えば物語性のまるでないアダルトビデオがあれでOKなのは、そもそも物語性など求めてないからです。

このアニメもアダルトビデオ的な何かを狙ったのなら、それは否定はしないのです。

でもたぶん狙っていない。そこが問題です。

 

このアニメの特徴として、可愛い女の子が出てくる。高校生くらいの娘かな? 

そして学校が出てこない。つまり学校を思い起こさせない。現実逃避です。

しかしちゃんとした仕事もしてない。喫茶店をしてるけど、収入をあまり気にしてない。だから重荷にはならない。

主役級には、恋愛要素がない。男が出てこない。

銃の弾を避けれる。天才ハッカーが何故か子供。などの嘘満載。

つまり、オタクに受ける嘘要素満載のアニメです。

 

しかし、何も無いわけではない。つまり日常系ではない。

猫耳付けた謎の巨乳キャラが「なんとかだ、にゃーん」とか言わない。

つまり、日常系よりは前に進めるオタクに対する、夢の物語にはなっている。

だから意外と前進している気はします。少なくとも引きこもりきってはいない物語だということです。

 

でも、だからこそ、日常系猫耳物語にする気がなく、ちゃんと葛藤もある物語でいいのなら、このリアルさの設定は失敗だと思います。

オタクの夢を叶える物語、つまり「可愛い娘がわちゃわちゃしている物語で、皆に受ける物語を構築しようとしたら、このくらいの嘘がないと成立しない」と思っているのなら、見ている人を馬鹿にしています。

 

一般受けがよく、歴史に名を残したアニメで「まどマギ」と「シュタインズゲート」があります。

この2つとも、死の恐怖や、運命に対する葛藤を描いているじゃないですか。

まどマギなんか、あの絵柄でもちゃんと死の葛藤を描けてます。

シュタインズゲートの方は「大学生で、何処かに部屋を借りて、可愛い女の子や天才ハッカーと共にワチャワチャしている学生生活」と言う、オタクの夢全開の物語じゃないですか。

つまり、ワチャワチャ感や、オタクの夢や、面白さ、楽しさ、を描いたまんま、ちゃんと死の恐怖や葛藤を描くことが出来る、という証拠です。

しかもこの2つはとても人気があります。

つまり「死の恐怖や葛藤を描いたら誰も見てくれない」のではなく、逆に歴史に名を残す作品になる事を、証明してるのです。

 

なのでリコリコも、ちゃんとリアルさ加減を間違えずに、死の恐怖や葛藤を描いてたら、名作に名を連ねれたでしょう。

だから文句を言うのです。

ありきたりな物語だったのに、意外と名作になれるポテンシャルがあったのだと思うのです。

残念ですね。

 

暗い影があるからこそ、光っている所が、より光り輝いて見えるのです。

その当たり前に気が付かないでいるうちは、日本のアニメが世界に通用することはないでしょう。

沢山あるアニメの中で、今季リコリコが上位に来てます。

世界には通用しないのが、上位なのです。

このままだと、いつまで経っても、アニメ関連は貧乏だと言われ続けることでしょう。

それは「アニメ業界のせいだ」というのもあるのでしょうけど、単純に実力がないことは理解しておきましょう。