号漫浪正大

輪るピングドラム ~物語を見直す

BUTMAN

映画「THE BATMAN」見ました。感想、ネタバレです。

 

三時間弱の映画を止めずに(ネットなので)見てられるのだから、面白かったのだと思います。

 

私はダークナイトを見た時に「バットマンとはこういう風に描くのが正解だ」と思いました。

物語には(大体の)正解と言う描き方があるのです。

その事をよく分かっている人が、今回のバットマンの原作を描いたのだと思います。監督もよく分かっていたのでしょう。

 

バットマンの正解は、極力リアルな世界で描き、その中で特異な人「バットマン」もいる物語、として描くべきだと思っています。

今回の成功はこれを分かっていたからですね。

そして今回はサイコ(スリラーか?)のような作りでした。セブンとか羊たちの沈黙とかそんなのです。

だからまずは「バットマン」は抜きにして、サイコ事件物として物語を作り、そこに不思議な正義のヒーロー「バットマン」を置くようにして物語を作る必要があります。

今回は大体は出来てましたね(終わってから、全体を考えてみたら、サイコ事件物としての所は今一にも見えましたが、まあ良いほうです)。

 

この「どういう風に作るか?」がキモの映画があり、それを間違えるともうどうにもならないので、分かっている必要があります。

映画作りにはとてもお金がかかるので、これを考えれない人は首にすべきだと思ってますが、分かってない人がまだいるようです。残念ですね。

 

今回はこの地味な映画をお金をかけてやりきっているので、よくやったな、と感心します。

昔にダークナイト(等)があったから、やりやすかったのだとは思いますが、やらせてもらえるのが素晴らしいですね。

 

というわけで、この地味な作り自体は正解です。こうするべきだったのです。

とは言え、普通この作りの映画は、刑事などが巻き込まれ、段々やばい方向に落ちていく様な作りにします(つまりマンネリにならない様に緩急をつける)。

しかしバットマンですからそれが出来ない。強すぎるのです。

まあ、だからバットマン自体に影をもたせたのでしょうけど、それでも話としたら弱いですね。

(ちょっと話はずれますが、今回の引きこもりブルースは良かったですね。精神的な弱さを強調するほうが良いからです)

 

たぶんバットマン自体がもっと追い込まれる必要があったと思います。

つまりここでバットマンシリーズ全体の問題「バットマンが強すぎる」問題が出てくるのです。

 

普通は敵は強くします。

これを間違えてつまらなくなったヒーロー物語がなんと多い事か。

「敵は味方より強く」大前提です。それすら分かってない人がまだまだいる。

バットマンより強いヒーロー物だと、敵もとても強い敵が出てきます。

しかしバットマンはそもそも敵自体がそんなに超常的な強さがない。

だとしてら、バットマン自体を弱くするべきだと思ってますが、どうでしょうか?

 

ワンパンマンは面白いけど、どうなのか? と思った方へ。

ワンパンマン水戸黄門です。もしくは暴れん坊将軍です。皆勝つのが分かっている正義の味方ですが、誰も文句を言わない人達です。

ワンパンマンも分かっていて、あまりに強すぎるのであまり出てきませんね。他の人が頑張って戦うのです。そして最後の出てきて全てを終わらせる。これが時代劇でなくてなんなのでしょう?

 

今回のバットマンもそれは分かっているので、極力強すぎないように気をつけてはいます。

バットモービルが凄い車程度だったり、空から飛び降りたら死にかけたり、分かっているのでしょう。

しかしそれでもまだ強すぎる。最後「この街を救う」みたいに言うけど「いや簡単に出来るだろ」と思えるほどには強いのが、バットマンでした。

これは謎のコンタクト型カメラを持っていたり、銃で撃たれて平気だったりします。

その上元々が金持ちです。しかも戦っても強い。明らかに強すぎる。なんでも出来そうです。だからつまらないのです。

バットマンステルスゲームのように隠れて、たまにあらわれて数人なら倒せる、程度にしとくべきです。銃で撃たれたらアバラが折れるくらいでないといけない。

それにコンタクト型カメラなんて、普通の人が持ってないアイテムも不要です。せっかくバットモービルを普通にしたのに、もったいない。

 

もう一度言うけど、今回の映画でも分かっていて、だから弱くはしている。

しかしまだ足りなかったですね。

リアルな世界での葛藤にすべきなので、金持ちの彼が強すぎたら、敵がいないのですから、それではダメなのです。

 

さて、他の人の感想も少し見てみました。

youtubeの「おまけの夜」と言う所で言ってた事が感心したので、ここで言っときます。

リドラーは答えを知らなくて、だから問題を出し、それをバットマンで解かせる事で正解を知ろうとしてたとしたら、面白かったのに」と言うような事を言ってました。なるほどですね。

もちろんそうしたらリドラーの知能の高さが薄れるなどの問題もありますが、物語としたらこの方が面白かったですね。

ここで「ブルースが床に文字を描くなどのシーンがあるが、今一生かされてなかった」と言ってました。これは私も思いましたけど。

しかしあれは「ブルースとリドラーは似たもの同士だ」と言うシーンです。初めにブルースが細かく日記みたいのを付けてるのもそうです。リドラーと同じでしょ? (そう言えば、覗き見ている所も同じでしたね。あそこまで似てたらわざとです)

そして似たものリドラーのおかしさから、自分のおかしさに気が付き、思い直す、と言う話でした。

 

最後の敵が、リドラーに乗っかったただの人達、だったのは地味でしたが、復習をしようとしてるのが「おかしく特殊なリドラーという一個人」ではなく、「多くの一般人も含めた普通の人でも起きること」とした事はとても良く出来てましたね。

 

バットマンが最後洪水で人々を助けるのは、いるかな? とは思いました。

あれがバットマン物語自体の最後なら良いけど、たぶん続きをやる作りだったので、それであれをやったら「次どうするの?」と思いましたけどね。

 

等など「とても良く出来た話」だった所と「それでもまだ足りないと思える」所と、両方ある物語でした。

ただそれでも、ここまでやれた事は称賛に値するとは思えた作品です。