アメリカのファンタジードラマ「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」を3話まで見ました。
感想、ネタバレです。
「ロードオブザリング 力の指輪」の感想で、ちらほら出て来たのがこのドラマです。
この名前を出す人は大抵、こっちの方が良いと言ってました。
まあ、わざわざ感想で他の作品(しかもより小規模な作品)の名前を出す人は、そっちが良いと思っているのだから、名前を出すのは当たり前です。
しかし見てみようと思いました。
私は海外のドラマは見ません。日本のドラマもほぼ見ませんが。
でも「たぶん面白いのだろうなあ」とは思ってました。でも長そうなので止めてました。
ハウスオブザドラゴンは「ゲーム・オブ・スローンズ」の前日譚とあります。ロードオブザリングと同じく前日譚でファンタジー。流行りでしょうか?
「ゲーム・オブ・スローンズ」は海外ドラマを知らない私でも、なぜか名前を知ってるくらい有名なのは分かってました。
力の指輪と重なったりして、何かのタイミングな気がしたので、一度見てみようと思った次第です。
見てみて感じたのが「日本の時代劇みたいだ」という事です。
時代劇と言っても水戸黄門のような作り話でおとぎ話ではなく、もっと実際の歴史に沿った内容の物の事です。
日本の歴史、時代物だと、世継ぎとか、権力争いとかがよく出てきます。だから思い描いたのでしょう。
あの内容のまま、江戸時代の時代劇にしても通りそうだと思って見てました。
ただ私が「日本の」歴史物を思い描いたのは、意味があります。
それは単純に「他国の」歴史物を見たことが無いからでしょう。
地味な内容の世継ぎとか、権力争いが出てくるのは、有る程度の長さが必要です。そうなると短い映画ではなく、続き物のドラマじゃないと、なかなか難しい。
そして海外のドラマなんて見ない私には、海外の権力争いでなく、日本の権力争いしか思い描けなかったのです。
面白いのは、思ったより海外でも日本でも、権力争いも、世継ぎも、同じ様な感覚なのだな、と気が付きました。
もっと海外はドライなのかと思ってましたが、それは近代の西洋の事が頭にあるからそう思ってただけでしょう。私の勘違いですね。
なので、この物語は、歴史物や時代劇の作りになっています。
もちろんファンタジーもあるのですが、基本は歴史物の作りです。
では歴史物の作りとは?
一つは「地味」なことです。実際にあった事なので、どうしても盛り上がりにくい。
そしてあった事なので、人や出来事に多面性があり、だから一貫性があまり無いように見えます。
歴史物は、時間が短くても数年単位です。だから数年の内に状況もかわり、人の心も変わっていきます。誰かと仲が良かったのに、数年あれば、喧嘩していたりすることはよくあります。男と女なら別れていても当たり前です(昔は別れるのも難しかったでしょうけど)。
そうすると、物語として分かりづらくなります。
誰それと仲が良かったのに、数年で仲が悪くなっている。
昔なら数年経てば、戦争で相手を殺しているかもしれない。
年をとれば言ってることや、大事なものの価値観が変わっているのが、人なのです。
「ハウスオブザドラゴン」では、敵がはっきりしない。
これは二時間の映画なら、弟が敵になる。だから普通はもっと悪く描きます。
しかしこのドラマでは、王の娘と仲が良かったり、街で人を殺して回るが、あくまで罪人だと言う内容でした。それに兄の王のことも、嫌いでもなさそうだし、殺そうともしない。
この弟以外にも、敵らしい敵がいない。だから中途半端で盛り上がりが少ない。
なので、二時間映画なら失敗です。
しかしもっと長く、しかも実際に歴史にあった物語ならこうなる時も有る。
物語として、敵がはっきりしているといいけど、実際はそうでもないので、だから実際にそった内容にしたら、今一敵がはっきりしない物語になったりするのです。
明智光秀と織田信長、それに羽柴秀吉も、結局殺し合うが、だれが悪だとは言えないでしょう。実際の歴史ではそういうものです。
これを、明らかなフィクションでファンタジーのこのドラマでやるのです。それが面白くもあり、珍しい。
分かりやすい面白さの物語性を捨て、リアル寄りのフラフラする人を描く物語にする。
そこにファンタジー要素も入れ、三話みたく、ちょっとリアルではありえない要素も足していく(弟が無茶して敵を倒す所です)。
この塩梅がよくある物語とは違う「今までの作品と比べ、もう少しリアル寄りな世界でのファンタジー」と言うジャンルを成立させているのでしょう。
だから、実は一話時点では微妙に思えました。
それは、普通の物語として、普通に盛り上げる要素を捨ててるからです。
あれは普通だと失敗ですが、この「リアル寄りにするために、わざと中途半端にする」と言う事で、長く見せるとジワジワ染みてきて、最後は成立させているのが「よくやる」と関心しました。
たぶん「ゲームオブスローン」とか昔にあったからこそ、これが成立するのが分かっていたのでしょうね。
これは本当の世界のように「あまり」方向性がない物語です。
「あまり」とは、無いわけでもない、という事です。
全てをリアル歴史物にしてる訳ではない。だからこそ、リアルすぎもしないのが、面白くもあるのでしょう。
そして「あまり」とは、たぶんですが、はっきりしてる所もある。
それは時期王のあの娘は「死なないだろう」し「王にはなるのだろう」と言うのは、はっきりしてるからです(死なないのは大人になるまでは、と言う事だけど、王になるのは間違いが無いはずです。これは覆したらただの馬鹿でしょう)。
例えば、信長の家来の秀吉に光秀、それに家康、この三人が信長につかえていた頃、誰が将来謀反をおこし、信長を殺すか? なんて分からなかった筈です。
歴史を知らない人がいて、浅井長政に裏切られた頃に、将来誰かが信長を殺す、と言うのを前ふりで見せても、当たらない事でしょう。
だからハウスオブザドラゴンではそうするべきだと思うのだけど(つまり分からない方向に道が行くべき)、だけど注意が必要ですね。
それはその予期できない流れが「物語として本当に面白いのか?」が大事だと言う事です。
意表を突けば良いってものではないという事です。
予期せぬ流れが、面白い方向に行って、最後その流れさえも納得して見れるのか? が大事ですね。
なので、結構面白いのですが、どうも少し気になるのは、それでもまだ上手くない気がする所です。
例えば私なら、どうするか?
1話で母が死にます。その母はよく出来た母だと言うことでした。
なら弟とも子供の頃から仲良かったとして、王と弟が喧嘩しそうになると間に入る。そして和ませ喧嘩を終わらせる。そして弟に苦言も言える仲にしておく。
それは母が子供の頃に、もっと小さな弟を昔から知っている為に出来た間柄だ、という事にしておく。
その後母が亡くなれば、客はどう思うのか? 「ああ、母が生きていれば、いざこざもなく、兄と弟が仲良く出来たのではないのか?」と思わないだろうか?
これで母の死が、歴史の転換点になり、そこから歴史の流れが変わったのだ、と客の気持ちに残ったはずです。それこそが1話を彩る話になった筈です。
王もそうだし、弟もそうだし、後妻もそうだし、次期王の娘も、娘と結婚しそうな田舎騎士もそうなのだが、キャラが弱いですね。出来事も弱い。
良い奴でもなく、悪い奴でもない、つまり何でも無いのです。
もちろん、これからのためにわざと温存してる可能性も無くもない。これから次期王の娘が良くなっていったら、盛り上がるからね。
もしくはわざと、どっち付かずにしておいて、それこそ歴史物みたく善悪を定めない為かもしれない。ヒーローにしないためです。
だから、この中途半端なキャラ設定が、今後生きてきたら褒めますが、生きてこなかったらただ下手なだけです。
今の所は面白くなりそうです。
ただ、どうも限界が、早くも見え隠れしてます。
その下手さが、わざとの前フリだったのなら、名作になることでしょう。
それがただの下手なだけなら、そこそこの作品と言う事になるのでしょう。
さて、今後を楽しみにしときます。