号漫浪正大

輪るピングドラム ~物語を見直す

色々忘れて無かった事にしたアニメ

アニメ「ゲキドル」感想です。ネタバレです。

 

始めの方見た感想は「上手くない」ですね。

そして最後まで上手くないまま行き、上手くないまま終わるのですが、ちゃんと終わらせているのは好感を持てます。

 

とにかく物語の作りがこなれてない。要素をどう使うかが分かってないし、考えてない。

例えば百合要素があったとして「それをどう生かそう?」とか「他の要素とどうからめよう?」と言うのがない。

他にもSF要素も、友達要素も、アイドル要素も全て、取り入れはしたけど、それらをからめて物語にする事に失敗してます。

裏でやってるSF要素と演劇要素を、もっと途中でも関係がある様に出来たのじゃいのかな? と思います。

面白要素を入れたが、途中で忘れて無かった事にしたのじゃないのか? と思わせる作りでした。

 

同じような感じの作品で、私が見たものでは「レヴュースタァライト」がありますが、あちらは上手さがありました。ちゃんと流れも見せ方も引っ張り方も分かってましたね。

同じ様な作品を見ると、その良し悪しが見えて来るものですね。「ゲキドル」を見たからこそ「レヴュースタァライト」が良さがあらためて分かりました。

「ゲキドル」も「レヴュースタァライト」もどちらもファンサービスと言うか、客に飽きさせない様にする要素を入れています。ただ「レヴュースターライト」の方が断然上手いし、こなれてました。

「ゲキドル」の方は始めからエロ要素を押してきます。もう始めから諦めているのかな? と思わせる客引きの方法ですね。

「レヴュースタァ」の上手い客引き要素として、バンクシーンとか変身シーンとか戦闘シーンとかがあるのですが、これらは単純だが「良いものだな」と気が付きました。バンクシーンなんか使いまわしで尺も取れるし、良いのじゃ無いでしょうかね?

ちなみに最近の私は、エロ要素は否定しません。アニメのエロさえも否定して生殖を諦めてしまった、日常系を見るオタクに比べれば、まだアニメのエロ要素があった方が自然だと思えて来たからです。

だからだと思いますが、エヴァでもイクニ作品でも寺山修司作品でも(アニメじゃないけど)エロ要素はありますね。

ただ「ゲキドル」のエロ要素はちょっと露骨だったので、どうかな? とは思いました。

 

それでも最後のエンディングの絵は、意味があるのは良かったです。

途中の回でドールが出てきて「透けるとロボット」と言う絵になります。ここから分かる事として、演じている事と自分を隠している事を重ね、その良し悪しが見える演出ですね。

主人公みたく私生活で自分を偽り何かを演じているのは良くない。だから「本当の自分を見せろ」と言う事。

それとは逆に、演劇では演じるのが正解であり、「時に自分を偽る事も正解」とも取れる。

そこから更に、演劇ではあるが、その中に本当に感情を入れる事が大事であり、それで他の人に感情が伝わる。

それらの暗喩として、アニメ等の嘘の物でも感情が入れば伝わり本物になる、と言う事だと思います。

エンディングの見えたり見えなかったりする演出は、これらのバランスが大事だと言う事でもあります。

嘘も本当も、自分を隠しているのも表すのも、チラ見せが正解だと言う事でしょう。

意外とただの露骨なエロではなく、ちゃんとした暗喩になっています。狙ってやったかどうかは謎ですけどね。

 

実はこのアニメを最後まで見たのは「もしかしたら製作者はピンドラ見てたのかな?」とも思えたので、あきらめず最後まで見ました。ここの始まりはピンドラブログですから、大事な事なのです。

場所が池袋なのと、二人が背中合わせになり、そって重なり円みたくなっている銅像が映ります。あれ確か池袋にはもう無いですよね? ピンドラでも映りましたね。なのでもしかしたらわざとかな? と思いました。

これだけだとただ漠然とし過ぎているのだけど、もう一つ「そうかな?」と燃えた要素として、途中一話だけコンテと演出が山内重保さんだと言う所です。ピンドラも一話だけこの人がコンテと演出をやる回がありました。

一話だけなのが不自然です。ただ「ゲキドル」のスピンオフとも言える作品「アリスインデットリースクール」の監督がこの人だったので、単純に一回だけお願いしたのかも知れませんけどね。

山内さんは、どうやらイクニさんの東映時代の師匠にあたるのだとか。少なくとも先輩ですね。

この人は演出に凝る人だったようです。「デッドリースクール」を見ると確かに凝っています。

ちなみにピンドラでこの人に一回だけやってもらったのは意味があると思っています。これは後であらためて書く予定ですが、ピンドラのキャラは、実在のアニメ制作者を暗喩として重ねてきてます。サネトシ先生が助手だった頃の先生、鷲塚先生が山内さんの事だと思っています。

話を戻し、もしかしたらイクニ作品も影響があるのかもしれません。ただ遠く及ばずでしたが。

この作品を見ると、ピンドラの物語の細かな配慮が本当に良く分かります。ピンドラは無駄な所や、意味がない所が無い作りなのが分かります。比べると「ゲキドル」は逆に、物語の練り方の雑さが分かる内容でした。

 

あと、物語とは関係が無いのですが、本当の池袋の街並みを描いてましたね。実際回って写真を撮り描いたのだと思います。

だからある程度は元の場所がどこか、ちゃんと分る背景でした。

行った事がある人だと「60階通り」は分かると思います(今はサンシャイン60通りに名が変わってるようですね。私が古いのですね)。

ちなみに「サンシャイン通り」は一本裏の通りです。皆間違いますけどね。

アニメだと西口が吹っ飛んでいるので、東口がメインになります。

サンシャインのスペイン階段のあたりがよく使われてました。ワールドインポートマートビルに新しい演劇場があると言う設定でした。

アリスインシアターの方は文芸坐の奥の方ですね。向こうに首都高の高架が見えたので、たぶん駅から線路沿いに行ってその手前あたりになるのでしょう。

なのでちゃんとそれがある場所も妄想して設定したから、背景を描いてます。

この文芸坐の奥あたりの雑居ビルにあると言う設定「それっぽいな、ありそうだな」と思える良い立地を選んでますね。だからあの辺に詳しいのかな? と一瞬思えましたが、そうでも無いのかもしれません。あの辺を知っている人だと意外とメインの場所からの絵が多かったです。

ちなみに主人公の行っている学校は西巣鴨ですね。これも設定として良い場所です。歩いて行こうと思えば行ける距離が西巣鴨ですからね。ちょっとあるけどね。

 

このアニメ、色々な要素を足したが、上手く使えてません。

だけどこの「他のジャンルの要素を足す」と言うやり方は、間違ってないと思います。

それにやろうとしている事も間違ってない気がしました。

演劇と実際の裏で起きてるSFを重ねてくる演出は「上手くやれたら面白かっただろうなあ」と思えてなりません。

いっその事もっと演劇と重ねてしまい「劇中劇の事なのか?」「はたまた現実で起きている事なのか?」を誤魔化しながら、本当が見えにくい作品にしても面白かったと思います。

例えば一話初めにSF要素の物語をやり「SFなのかな?」と思わせておいて、実は劇中劇の事でした、とネタバレをする。しかし実はSF要素の事は本当だった、と後で分かる。

逆に妹が死んだ事も劇中劇でやり「ああこれは劇か」と思わせておいて、実は本当の事だと分からせる、とか。

そうして「これは劇中劇か?」「本当の話か?」「いやそもそもアニメなので本当などあるのか?」「本当とは何か?」「アニメとは、作り物とは何か?」等を投げかけるのです。

そして演劇を通して、皆が他人の人生をやる事で、自分の人生を振り返る事が出来る、と言う内容にする。

そこから暗喩として「アニメ等の偽物の物語も、実在の人生のシミュレーションになるし、参考になる」と言う風にも出来たと思います。

などから、「演劇と実際起きている事を混ぜてくる作品」は可能性が感じれられ、面白かったです。

誰かちゃんとまとめれる人が、今後やってくれないでしょうか?

 

ちなみに、「アリスインデッドリースクール」についても少し話します。

内容なあまりないですね。ゾンビ物のオマージュです。

この作品は山内さんの映像の演出を見る作品でした。確かに凝った映像演出をしてくるので、そういう見方で見ると面白いと思います。

ただ細かな事で、山内さんはアップをよく使いますね。

最近のテレビは大きいので、ちょっとアップにし過ぎじゃないのかな? と思います。

それ以外の映像的演出は凝っていて上手い人だと思います。

しかしこの人、物語としての演出の方はあまり上手くない気がします。だから良く出来た脚本家が必要でしょう。

 

この作品自体とは別になるのですが「ゾンビ物は良いな」とあらためて思いました。前から思ってはいたけどね。

ゾンビ物は色々面白い要素がやれます。

噛まれ、もう少しで死ぬ人との物語を描けます。

追い込まれた人はどういう行動をするのか? も描けます。

元は人であったゾンビ、それを壊す。しかしもし治る可能性があるのなら? 等も描ける。

それと今回のアニメを見て思ったのは、被災した人が救助を待つ状態も描けるのですね。私は東日本大震災を思い描いてしまいました。

食料がなくなる。けが人も出ている。助けがいつ来るのか? 来ないのか? 動くべきが? 待つべきか?

しかも最近の事として「病原菌にうつったかもしれない人との接し方」も描けますね。たぶんコロナを暗喩としてゾンビ物を作る人が出て来ると思います。

などの、ゾンビ物は面白くなる要素が多いのです。ちゃんとやれればね。

だからこそ、「アリスインデッドリースクール」は残念ですね。あと時間を倍ちょっとに伸ばして、これらの面白要素ちゃんと足せたら、映画としても出せる位のクオリティになる気がします。誰かやりませんかね?

 

まとめると、アニメ自体は色々問題がある作品な気がします。

ただここから考えられる面白要素は、ためになるかもしれません。

面白要素をちゃんと取り入れようとして姿勢は良いですが、いかんせん上手く行ってませんでした。

事細かなすり合わせが大事なのだと、良く分かるアニメでした。