号漫浪正大

輪るピングドラム ~物語を見直す

その向こう、この向こうへ

アニメの方の「刻刻」感想です。ネタバレです。漫画は見てません。

 

ネットの感想を見ると「漫画のリスペクトが出来てる」みたいに書いてありました。なので、たぶんアニメは漫画通りの流れなのでしょう。

だからこそ「漫画からアニメ化は違う物なのだから、同じ内容だと無理がある」と言うのに気が付くわけです。

 

漫画通り作ったとしたら、アニメの方は良く出来てたと思います。

そうなると問題は漫画の方なのですが「漫画なのでそれでもいいが、アニメだとダメかもしれない」所と「漫画でもダメだろう」所がありますね。

 

私は昔から漫画家の人は絵も書いて、それで物語も作るなんて出来るのかな? と思っていました。

小説家の人はより物語作りの方に力を入れれる筈です。しかしそれでも面白い作品はあまりない。

小説とかの元の無い、漫画やアニメの原作者と言われる人もいますが、それでも面白い作品と言うのはそうそうないのです。

つまり物語だけ作っている人でも、なかなか面白い作品を作れないのに、絵も書いて漫画家が物語制作なんて出来るのかな? と思ってます。

少なくとも絵も書いてる人が、若く面白い作品を作るのが難しいのは間違いないです。漫画家ではないけど、富野さんも40過ぎてから物語を考えるようになったとか言ってましたね。

 

この作品「刻刻」は物語の流れがたどたどしいですね。

アニメの一話は良く出来てました。それは良く出来たのを考えれた時に漫画を書き始めたので、始めは良くなるものです。

しかしその次からが難しくなりますね。だからアニメの二話から、もう盛り上がりに欠けるおかしな作りでしたね。

この作品に似てるのは「GANTZ」とか「寄生獣」ですね。あっちはミッションがあります。GANTZは分かりやすくゲームみたくミッションがあるし、寄生獣も新たな敵が現れるのでそれを倒すとか分かりやすいミッションがあります。

しかし刻刻はないですね。だから難しい。ワンミッションでアニメ12話通す作りです。やる内容が無いのに伸ばして薄くなっていましたね。

普通はこの止まった世界から途中抜けますね。そして普通の世界で何かあり、またこの世界に入る、と言うのを繰り返します。しかししない。これはわざとでもあるのだろうけど、抜けたり入ったりした方が作りとしては、簡単に面白くなります。なぜしなかったのだろう? 安直な事をしたくなかったのかな?

 

キャラも魅力が無いですね。これもわざとなのでしょう。ニートの兄や無職の父が出てきます。魅力がないし、ほとんどの見ている人の年や性別や見た目に一番近いのが、このニートと無職です。だから見ている人は頭に来ますよね?

たぶん簡単な魅力のあるキャラは出したくなかったのかと思います。少年とか青年とかです。そうするとそれに乗っかり他の所に目が行かなくなります。魅力的なキャラに逃げないで、この世界を見てほしかったのかな? と思います。

内容もそうです。一話でおじいさんが「こんな止まった世界に入ると、物を盗んだり女湯をのぞいたりする奴がいる」と言います。でも見てる人が見たいのはそっちですね。少年か青年がこの世界に入り、物撮ったり女湯を覗く話が見たいのです。

そして定石だと「始めはそんな事でいい思いをしてきたが、段々やばい状態に陥ってくる」となるのです。しかも「おかしな殺人を犯す宗教集団まで係わってきて、命まで追われることになる」となるのが普通です。

これも漫画でそれをしないのは、そんな単純簡単な話にしたくなかったのと、そういうよくある所ではない所を見てほしかったのでしょう。

 

漫画はアニメよりも数が多いですね。そしてお金もアニメほどはかかってないし、人も多くはかかってない。だから失敗してもそこまで多く人が困らない。だからアニメよりは挑戦できるし、少数にうける作品でもいい筈です。

この漫画「刻刻」は、特にうけたのだから、普通と違う事をして単純な面白さを排除した作りでも良いと思います。そんなあまりない作りの作品も、たまには見てみたいので、漫画だとありな気もします。

しかしアニメだとお金もかかってるので、もっと一般受けするように厳しくあるべきです。そうじゃないとアニメ業界が続きませんからね。

このアニメ化においては、そこは考えられてます。だから主人公級のキャラ樹里を漫画よりも若い21歳にしてたのでしょう。巨乳にしたのは元からなのかどうなのかは分かりませんけど、主張してたのでアニメではわざとですね。そしてエンデディングの絵で媚びを売ってました。これらは単純で馬鹿っぽいですが、漫画原作をいじらないのならそうするしかなく、それでもやれる事をして少しでも稼ごうとしてるので、大人の判断として正解だと思います。

 

理想としては内容を変えて行くしかないのですが、そうすると原作者が変えるしかないですかね? もしくは原作者が納得する変え方をするしかない。

どっちにしても、世の中の漫画や小説の原作者自体が理解する必要があります。アニメ化においては、元と同じだと通らない事が多いので、誰かが変える必要があると言う事をです。

 

ただ、アニメ化だから同じだと通らなくなった、だけでは無いですね。

この内容が漫画通りなら、漫画自体も良くない所がありました。

皆気になるのが最後でしょう。急に樹里が大本の特殊能力がある不死の女性に合い、助けてもらって終わる所です。

この女性は「デウス・エクス・マキナ」ですね。神が最後あらわれ、急に全てを解決すると言うものです。

デウスエクスマキナ」は「機械仕掛けの神」の意味ですね。これは昔の舞台で、大道具を使って作った神を出して、終わらせる事が多かった事から来てるそうです。

最後の終わらせ方を考えられないので、超常的な神が出てきて全て解決するという、逃げの終わらせ方ですね。そしてこれは良くない事です、逃げでしかないですからね。そして結局はつまらないからです。

物語をよく考えてない昔はこの終わらせ方が多かった、と言う事でもあります。

つまり現在でも物語を学んでないと、こういう終わらせ方をしてしまいがちだ、と言う事です。

そして「刻刻」は今ややってはいけないと言われている「デウスエクスマキナ」を使ったと言う事です。つまり物語制作としたら未熟です。

 

私は最後に出て来た赤ん坊が大きくなり、それで特殊能力でも得て、それで二人でこの世界から出て行くのかと思ってました。

せめてこの赤ん坊が歩く位になり、それで「この大本の女性の所まで歩いて行き、見付ける」と言う位にはしてほしかったですね。

 

ニートの兄や無職の父も使い方が雑でした。

こいつらも現実で逃げて生きていて、それで今の生活が続けばいいと逃げている。しかしこの本当に止まった世界で「止まっている世界はダメだ」と気が付く、と言う話にすればよかったのに、と思いました。

樹里も「家族がいなければいい」と思っていたが、家族が大事だと気が付いた、と言うような事らしいけど、メッセージの伝え方は弱かったですね。

ラスボスもメッセージが弱い。ラスボスの過去を出すならもう少し前ですね。もしくはもっとギリギリ最後か、です。中途半端だからメッセージが弱い。

ラスボスが赤ん坊になるのも良く分からない。だから最後これを見捨てない樹里が、赤ん坊の力で解決するのかと思ったら違うし、どうしたかったのか?

始めは人を平気で殺すおかしな奴が多かったのに、段々いなくなり、しかも皆まともになて行き味方になって行く。それは分かるけど、逆境が少なくなるのでドキドキ感が無くなっていきましたね。

 

つまり物語の作りとしてもまだまだな所が多かったのが印象です。

でももう一度言いますが、年取った物語だけを作ってきた人でも、面白いのを作る事がなかなか無いのだから、難しいのはしょうがない。

本当は相談できる人がいるのが良いのでしょうけど、それは業界全体の問題ですね。

もしかしたら漫画家の担当の人が、そういう役もになってるのかもしれないけど、だとしたらまだまだだと思います。

 

さて、漫画は見て無いと言いましたが、ネットでも一ページ位は出てきますね。

漫画でこの絵で白黒だと、この内容でもいい気もします。

アニメの様に決まった時間を束縛しないので、良く出来た物語の作りでなくても、雰囲気だけで世界に浸って見てられそうです。内容のない絵だけの本も売ってる位ですから。

逆に束縛するアニメは良く出来て無いと頭に来るのです。

やはりアニメと漫画は違う物だと分かりますね。

 

言い忘れてましたが、アニメの細かな事で。

オープニングテーマとエンディングテーマは良く出来てましたね。アニメに合っています。

白黒で実写の写真です。そしてたまに単色気味なカラーになってたりします。小説の表紙とかでよく見かける奴ですね。

私はこれが安直で嫌いですが、このアニメには合ってました。

現実っぽい内容だが、少しずれている。おかしな現実世界の話だと言う事です。

それに「あくまで作り物だよ、フィクションだよ」と言ってます。ぬいぐるみみたいのがウィンクしたりしますね。残虐なシーンがあるので、そういうぼかしも必要かと思います。

エンディングはもっと軽く、ポップで明るく、そして裸で媚びを売る作りです。

これはオープニングと同じで、明るくしないと見てられない残酷なシーンがあるので、これで正解ですね。

特にエンディングは「はいはい暗いフィクションは終わりですよ」と言わないと、暗くなり次見たいと思わないので、より明るくするこの作りで合ってます。

 

この辺の事も含め、アニメは原作に気をかけてるし、良く出来ている。

漫画も、漫画ならあれで大体通るのかもしれない。

しかし漫画のこの内容で、アニメ化だと今一感がぬぐえない。

これを直そうとしてら、結構調整が難しいですね。人と人の調整がね。

つまり難しいのに手を出してると言う事です。

内容にもよりますが、漫画からアニメ化は結構根の深い難しさがあると言う事です。

でも、ここで止まってはいけないと言う物語でしたね。

ここで止まらず、アニメ化は難しい原作に挑戦する怪物が現れる事を期待します。