号漫浪正大

輪るピングドラム ~物語を見直す

プーチンは笑わない

大事なのは、間違った時に、なぜか? どのようにか? を考え、次は上手くやる様にする事です。

だから自己分析をします。

 

現在、2022年11月中頃。ウクライナがヘルソンを、ほぼ奪還したようです。

そして私は、ロシアはヘルソンを守って戦うだろう、と思ってました。そして外れました。

いや、もちろん戦えない位弱ってるかもしれないと分かっていたけど、戦った方が戦略的には得かと思い、現実を無視して予想したのですね。

面白い方に現実を捻じ曲げる、悪い癖です。

この結果を見て、私は「プーチンは思想も理想もないと思った」と言ったのだが、この意味が分かりずらいので書こうと思います。

 

思想や理想は、長期的に見た時の方向性を得るのに使われたりします。

しかし今回は、目の前の事を判断する時に使う、思想や理想の事を書きます。

つまり、短期的な事を判断する為に、思想や理想を使う時の話です。

 

目の前の事を判断する時に、思想や理想が大事になる時は、どう言う時か?

それは短期的に「得が無い」行動をする時に、この言葉が出て来るのです。

 

例えば、道が二手に分かれていたとします。

一方は、見るからに安全で問題がないアスファルトの道。

もう一方は、舗装されてもいない、危険な山道。

どちらに向かうのか?

安全な道を選んだときは、思想や理想の話は出て来ません。ただ普通なだけです。

しかし危険な道を選んだときは?

その時は「なぜ選んだのか?」が気になります。その時に出て来る可能性がある言葉が「思想や理想」なのです。

「危険な道の向こうに、誰も見た事もない景色がある、と言うのが私の考えだ」みたいな事です。

「漠然とした、はっきりしない得がありそうだ」と言う事です。

 

これは最近のSDGsなども同じです。

利益を出す為の組織、会社が、目先の利益は無いが、社会にとって利益が将来あるだろう、と言うのをやるのは、理想や思想があるからです(正確には、ある様に見せたいだけだけど)。

 

つまり、目の前のものを判断する時に、理想とか思想とか言い出す時は「短期的に得が無い」時なのです。

 

第二次大戦時の日本もそうです。思想とか理想を言い出し、滅びようとしていたように見えます。

 

だから私がヘルソンで市街戦をする行為が「思想や理想がある行為」だと言ったのは、そういう意味もあります。

つまり「短期的に、物理的に、得が無い行為」だと言う事です。

だからプーチンが市街戦をしないのは間違ってはいない。短期的で物理的な、得が無いからです。

 

では、この短期的に得が無い行為をするべきと言うのは、どう言う時か?

それこそさっき言ったSDGsの事です。

つまり得は無いけど「精神的に皆に訴えかける」時です。

「我々は皆の為になる事をしている」と訴えかけ、仲間を増やそうとする時です。

だから、この行為はアピールがあって始めて成功します。

物理的には得が無い行為なので、それでアピールして精神的に訴えかけないと、本当に何も得がないからです。

だからSDGsは、どこの会社もアピールがうるさいのです。それをしないと意味が無いからです。

もし会社が本当に社会の事を考えているだけならアピールはいらない。ただ粛々と環境に配慮した損を繰り返せばいいからです。

あくまで会社は、精神的に訴えかける行為として、SDGsを唱えてるのです。

 

ヘルソンに話を戻すと、

プーチンは市街戦のよる精神的アピールを狙うのではないのか? と思ったのです。

つまりグダグダな泥仕合になり、それを敵側に見せる。

「この悲惨な泥仕合を続けてるのは、攻めてきているウクライナ側だ」と言うのです。

そんな話、誰も聞かないかって? そんな事はない。

人とはずるい生き物です。戦争でガス代などが上がったり、食べ物が来なかったりするのは嫌なのです。

だから普通だと乗らない話なのに、自分の都合で乗る事がある。

自分の都合で、ウクライナにも「戦争などするな」と言いかねないのです。

何かしら乗れる話を待って来られた時、自分の損である戦争が「どんな形であれ」終わる事を望んでいる人が多くいる。

その時、人は、ロシアのおかしな話にも乗り出すでしょう。

ロシアが戦争をしたい訳ではなく、停戦しても良いと言えば良い。

そこでプーチンが思想や理想をでっち上げ、各国の国民を乗せてしまえば有利に働いた事でしょう。

あとでプーチンの言葉などいい加減だ、と気が付いても、一度「そうだ」と言ってしまえば、否定できないのが人です。それがその時の自分の都合で乗った言葉であったとしてもです。

だから、ここはプーチンにとってチャンスだった気がするので、市街戦はするだろうと思ったのです。

 

しかし、これは色々おかしな論理なのが今では分かります。

 

まず第一に、プーチンは典型的なサイコパスです。だから人の気持など分からない。

なので、精神的な行動等そもそも出来ないし、やっても上手くはないのです。

上半身裸で釣りをする男です。あれが上手いアプールだと思っているような男です。

あれが上手いアプールなら、各国の宰相も裸で釣りをするでしょ? しかし誰もしないでしょ?

あれは、北朝鮮金正恩がグラサンかけて、ミサイル発射の映像を撮った時と同じで、本人は上手くやってると思っているけど、本人だけです。

では失敗か? と言うとそうでもなく、成功です。

あれらの良いところは、馬鹿っぽい所です。

だから冷血で危険な人物達なのに、実はそうでもないかも? と思わせてしまういい方法でした。だからひろゆきさんも、金正恩を褒めてましたね。

しかしそれは「狙ってはいない効果」です。まさか馬鹿っぽく映ろうとは彼らは思ってはいない事でしょう。

あれから分かるのは、彼らは精神的なアピールなど出来ない人達です。

 

第二に、市街戦がロシアにとって良い事だとは、ウクライナ側は分かっていた事です。

だからずっと慎重でしたし、ずっと疑ってました。

ウクライナ側が「市街戦になるけど、どうしようか?」と悩んでいるのに、それを放棄してくれるなんて、信じられなかった事でしょう。そして私も信じられませんでした。

なので、もしロシアが市街戦をやるつもりでも、ウクライナ側は乗らなかった気がします。

 

第三に、ロシア兵が、もう市街戦など付き合ってくれないだろう、と言う事です。

危なくなったら、すぐ投降してしまう事でしょう。

だから市街戦をやっても、すぐ持たなくなりそうです。

ちなみに、普通の戦闘状態ですと、敵が見えない位置にいます。見えた時はどちらかが撃たれる時です。

つまり、のこのこ敵に投降するのも難しいのです。

下手に行くと敵に撃たれてしまうし、のこのこ行くと味方に後ろから撃たれる事でしょう。

しかし市街戦では、敵にも見えないけど、味方にも見えません。

だから、影に隠れて個人で投降するにも、比較的簡単です。

なので今のロシア兵で市街戦では、戦闘にならないかもしれない。

 

では私がこれらを見落としたのはなぜか?

それは、分かっていたのに、面白い方向にねじ曲げて考えたからです。

分かっていたのに「自分の都合のいい方向に考える」のをしてしまう。本当に気を付けます。

 

あとは、敵がわざわざ撤退する事を言うのが、私には理解できなかったのです。

しかしこれも今となれば、取られたのではなく、撤退したと言う事で、核を使わない理由にしたかったとすれば、納得がいきます。

ロシアが併合した拠点の都市を、戦闘で取られて、それで何もしないで黙っていたらおかしいですからね。

 

さて、プーチンには思想も理想もないと言った事に対して、思う事は二つあります。

一つは理想や思想があれば、いや、あると思わせれば何かと得なのです。

もちろんアピールが下手ならダメですが、上手くやれば「心がある人」だと思わせるし、だから「話が通じる相手」だと思わせる事が出来ます。

あくまで、自分の思想とは違うからだ、と思わせれるからです。

 

例えば、プーチンは「NATOが隣に来るな」と言う理想があると言う嘘は、成功してます。

これは上手く行き、「NATOが広がって来るから怒ったのだ」なんて訳の分からない意見を言う人が多かったですよね? もう誰も言わないけど。

だから上手くやれば「プーチンは話が通じる」と思わせ「プーチンを怒らせたからいけないのだ」なんて思わせる事が出来るのです。

 

だから今回もやるかと思ったけど、今回の方が明らかに複雑で難しいので、やらない方が正解かもしれません。

 

二つ目は、この思想や理想は自滅的です。

前に言った様に、普通は良くない事をする時に出て来る言葉だからです。

理想があったヒトラーは、沢山意味もなく人を殺しましたが、その結果死にました。

ヒトラーも理想がなければ、もっと上手くやり、生き残った事でしょう。

 

後世の歴史家には、プーチンは「理想もないので、死ななかったヒトラー」と呼ばれるかもしれません。

何も理想も思想もないので隙のないプーチンを、どうすれば追い込めるのか? 私には分かりません。