号漫浪正大

輪るピングドラム ~物語を見直す

物語の未来を創る方法

本、森沢明夫の「プロだけが知ってる 小説の書き方」を読みました。

感想です。

この本は長くもないので、内容の事は極力書きません。書くとただのネタバレでしかないからです。

 

とても良くできてます。

税込みでも1500円以下で買えるので、興味がある方は買った方が良いです。

前半は物語の作り方なので、小説に限らず物語制作者は参考になると思います。

後半は小説に付いての書き方です。

この人は小説家だから、この後半の方がすごさが出てる感じがします。

小説を書こうと言う方は、一度読んで見るべきです。

 

大して長くもないので、すぐ読めることでしょう。

ここに書いてある事を、自分であみ出そうとか、他の何かから得ろうとしても、はたしてどれだけの時間がかかるのか?

数年から数十年の時間を無駄にしたくなかったら、読みましょう。

 

では、細かな気になった感想を、思い付いたままに書いていきます。

 

この人、筋トレ(筋肉トレーニング)をかなりするようです。

不健康になりそうな職業なので、健康のためにも、そして体に血を流し頭を回転させるためにも、そしてストレス発散にも良い事でしょう。

当たり前のようで、実は結構大事な要素だと思うので、気にしてください。

これでマイナス面があるとしたら「弱い気持ちが分かりづらくなる事」位です。体が悪い状態が少なくなるし、大へいに出る相手に会うことが少なくなるので、弱い立場のキャラの気持ちが分かりづらくはなります。

逆に言えば、そこだけが問題であり、人生にとってプラスのほうが多い事でしょう。

 

キャラ設定作りに、かなり力を入れてやるそうです。

これも言われてみたらそうなのですが「思ったより大事だ」という度合いが分かり、良かったです。

キャラ設定作りに、力を入れない方がいい場合が思いつかないので、やった方がいいでしょう。

 

「w理論」というのを定評してます。

これもなんとなく知ってる方はいるかと思いますが、やり方をはっきり示してくれた事により、これも「思ったより大事だ」と感じました。

そしてここでキャラの「感情」の上げ下げをグラフにしてる訳ですが、そうですね、感情の方が大事だから、こうするべきです。

昔からこの手のグラフを駆使して物語を書くようですが、何を基準にするかは人によって違っていました。

しかしこの本で、感情をグラフを書く方がいいのを再認識でき、頭の中でまとまったのでとても良かったです。

 

ここで森沢さんも知ってるだろうけど、書いてない事に少し触れときます。

このグラフ、よく見れば最後の方が大きく上下に動いてます。

人は飽きやすいので、後半の方が、大きく、そして早く動くようにするのが定石です。

だから本のグラフはそうなってますが、書いてなかったので、ここに足しときます。

 

他にも最後の前に、主人公が一度「全てを失う」のも定石だそうです。

つまり、最後の盛り上がりの前に、一番下げるのです。だから普通は全てを失う。

そして最後の前に一番下げるという事は、その前に一番いい状態にすべきです。

その方が緩急が付くからだし、話の流れで言っても普通はそうなるはずです。

(一番落ちる直前ではなく)中途半端な所が一番いいと、ダレやすいと言う事です。

本のグラフもそうなってます。

 

ちなみに、定石とは「普通そうした方がいい」という事です。だから普通はそうするべきです。

それを覆すなら、それが通るように「普通ではない何かを加える」必要がある事は理解しておきましょう。

ただ面白がって、何も考えず、定石を破る人がいますが、それは成功はしませんので、注意です。

 

伏線をはる位置を書いてますが、なるほどですね。

これもやっていけば分かるでしょうけど、気がつくまで時間がかかるので、これを言ってくれる事で、どれほどの時間の無駄を無くす事か。ありがたい事です。

 

伏線を回収するのも「人間関係でやりましょう」とあるが、これもありがたいです。

これも言われてみたら、そうだろうけど、それが「どれほど大事か」に気がつくにはかなり時間がかかるだろうから、これだけでもありがたいのです。

 

最後、一番いい状態に駆け上がっていくのですが、その前に終わらせる、というのも見事ですね。

だけど、ここで一つ言っておきます。アニメだとどうでしょうか? という事です(この本、基本は、リアル寄りの小説の事なので、これはこれでいいでしょうけど)。

アニメでずっと、まともな大人が気にしてる事は「魅力的な嘘の世界に浸って、現実に戻らなくなるのを、防ごう」と言う事です。

アニメ特有で、子供向けの作品には違う方法があるという事です。

つまり「余韻を残さない方がいい」のです。

一番いい所まで描いてしまい、もう何も考えるスキを与えず、大団円で終わらせてしまう。そうする事により、もう妄想する余地もなく、現実に帰らざるえなくさせる、と言う方法が有ることは、理解しておきましょう(ふしぎの海のナディアがそうでした)。

 

後半はあまり言うこともありません。小説の事だからです。

ただ、さっきも言ったように、こっちの小説についての話の方が、切れ味が鋭いように見えます。

だから、今から小説を書こうと思っている方は、先ず読んでください。

全てはそこからです。真似るかは、読んだ後で、自分で考えればいいのです。

 

この中で、情景を表すのに、広い所から、狭い所を書く、とあります。

これもなるほどですが、これも定石だとこうだ、言うことです。定石とは何か? を考えましょう。

この「広い」から「狭い」は、「分かりやすいから」と言う理由ですが、それは「分かりやすく書くべきだ」と言う、暗黙の理由が先にあるからです。

だとすれば普通じゃない状態、つまり定石じゃない状態である「分かりづらくしたい時」は逆をすれば良いと言う事です。

これは映像作品でも同じなので、頭で映像を思い描いて下さい。

ミステリーなどで、分かりづらくしたい時があります。

例えば、台所で料理をしている。普通は台所を映す俯瞰から入り、そこから細かな事、例えば包丁で何か切っている等が映ります。

しかしミステリーでは包丁で何かを切っている映像から入る。

そして段々カメラが離れていき、料理している後ろに死体があれば、実は料理じゃなかった、となるのです。

さらにもっとカメラが離れていき、そこは何処でしょうか? 薄暗いアパートの一室だと普通です。しかし青空の下の屋上なら異常性も増すことでしょう。

他にも、もっとカメラが離れてみたら、実は映画の撮影だった、というのもよくありますね。

つまり定石をするという事は、それをする状態が普通かどうか? でやる事が変わると言う事です(もしくは状態から、定石をするか? の方が変わると言ってもいいです)。

 

あとここでも書かれてますが、例えば小説家ならとにかく本を読むべきですね。

そうする事により、自然と「定石とは何か?」が分かってきます。

定石が分かるから、それを覆せるし、覆す時に「定石通りじゃないからこそ、普通じゃない何かが必要だ」とやるべき事がはっきりするのです。

映像作品の方を作る人は、とにかく「まずは」沢山映像作品を見ましょう。

「まずは」と言ったのは、他のジャンルも見た方が、後々型にはまらない物語を作れると思います。

アニメや実写映画や演劇や小説など、他のジャンルも見る事が大事です。

それに、これも書いてますが、実体験を深める事が大事でしょう。

やった事のないスポーツや趣味をやる。行った事のない場所に行くなどです。

そう言えば、小説家で売れてからもコンビニでバイトしてた人がいましたね。他にもまだサラリーマンをしている人とかいますね。

これは、どうしても小説家だけになってしまったら、得れない体験を得ようとしてるのです。

だからとにかく行動が必要なのが、この本でも分かります。

出来る範囲でいいので、新たな何かをやる方が、新たな何かを生み出せるという事です。

(ちなみに私は別に小説家を目指してないので、偉そうな事言っておいて、何も新たな行動はしませんけどね。プロを目指す人は大変だ、と言う事です)

 

この本はネット動画の「ヤングサンデー」で森沢さん自身が出て進めてました。

そこでの話がかなり良かったので、買ってみました。

森沢さんて有名な作家だそうですね。日本の小説を読まない(最近は小説自体読まないけど)私は、知りませんでしたが。

こう言う有名な方が、手の内を晒してしまうのだから、ただありがたい事です。本が安いのもありがたい。

ありがたいので、買って読みましょう。

こう言う人の、こう言う行動が、未来を造っている事を、皆が理解する日が来ますように。

 

2022年9月7日

 

相変わらず、後で大事な事を言い忘れてた事に気が付き、追加します。

 

こう言う書き方本での使い方として、例えとして「編曲時に使う方が良い」と思えてきました。

謡曲では、作曲者と編曲者がいます。

作曲者がメインの所のみ作り、出来た物を、曲に仕上げるのが編曲者です。

 

物語も、まずは何も考えず思いのままに作り、それを「じゃあどう物語として完成させるか?」の時に、この手の本を参考に作り上げていくべきです。

物語の場合は、編曲者も、作曲者と同じ人でもいいでしょう。別にどっちも出来るだろうし。

もちろん他人でもいいし、その方が俯瞰的に物語が見える事でしょう。

 

とにかく大事な事は、まずはやりたい事やアイデアを考え、それでざっと物語を書くか、ただ頭の中で考えてみるべきです。

そうしないと、型にはまった物しか出て来ないでしょう。

 

それから先人たちの知恵を参考に、物語を売れる形に仕上げるべきです。これが編曲です。

 

しかし世の中の物語は、このなんとなく作った物語をそのまま流す人が多すぎる。

つまり雑過ぎるのです。

 

例えば、少女が刀で戦ったり、銃をぶっ放したりする物語を作りたいと思い、ざっと物語を作る。

そしてそのまま流す人が多すぎる。

それが才能とか作家性とか思っている馬鹿が多すぎる。

 

才能が必要な作曲者の他に、わざわざ編曲者がいる事に気が付いてほしい。

最高なものを出すのには、両方必要だからそうなっているのです。

 

歴史の中で、総数において、音楽の方がやっている人の数が多い。

音楽学校は昔からあるけど、物語制作学校なんて、昔にはないでしょ? もしあっても数の桁がまるで違う。

だから歴史でも、数で言っても音楽の方がこなれているのです。

そのこなれている音楽が、あの作りになるのは、意味があるのです。

だから物語も編曲が必要です。

この事をどうか、世の中が理解する日が来る事を願います。