号漫浪正大

輪るピングドラム ~物語を見直す

パンフレット

アニメ「君たちはどう生きるか」考察、流石に最後だと……いいなと思います。

 

パンフレットが発売されました。その事も書きますし、ちょっと思いついた細かな事も書きます。

 

ピンドラの映画化が決まった時、クラファンがすぐ決まったりと盛り上がりました。

なので「これで注目され、ピンドラの本当の良さが理解されて行くだろう」と思ってました。

結果、大した事なく、粛々と終わって行きました。

 

その後、水星の魔女が始まりました。

これはウテナが入っているとは、始めの方から気づかれていて、しかも考察が盛り上がったアニメでした。

なので「これで、同じく入っているピンドラが皆に伝わり、そこからピンドラやエヴァや寺山の考察に行き、本当の良さが理解されて行くだろう」と思ってました。

結果、誰一人、「ピンドラ」などと言う言葉を発しないまま、終わりました。

 

そしてとうとう「君たちはどう生きるか」公開です。

なので「宮崎駿の作品と言う事もあるし、難解だと言う事で、今度こそ、ピンドラやエヴァとの関連性が騒がれ、寺山やフェリーニすらも理解されて行くだろう」と思ってました。

結果……デジャブですか? 同じ所を回って出られないのは、私の方なのかな?

 

「うっそーん、かわうっそーーん」と言う感想です。

ちょっと世間の考察が酷すぎませんかね?

そもそも「手塚治虫」と言う言葉くらいは、出てきても良いのではないですか?

 

山田玲司さんが、珍しくこの作品に対して「長考」を始めました。自分でそう言ってました。だから今後にきっちりこの作品の考察を出すようです(今現在は出てない)。

いや、とても良く分かります。

山田さんが、この作品に手塚治虫が入っている事に、気が付かない訳が無いのです。

手塚関係だと、この人だと、絶対気が付く。

だから悩んだのでしょう。どう入ってるか? どう関係してるか? 探りたくなったのだと思います。

逆にこの作品に、有名人、手塚治虫が入っていると分からないプロって、本当にプロですか?

 

 

パンフレットの話をします。

 

このパンフレットの感想を見ると、否定的な人が多いそうです。

分かります。私も普通なら「金返せ」と思う事でしょう。

いくら何でも、もう少し何とか出来たと思います。

ちょっとはファンサービスが必要でしょう。

「客に目が行かなくなっている作品である」と言う、メタ的で象徴的なパンフレットでした。

 

しかしこのパンフ、宮崎駿自身が関係しているかは分かりませんが、結構大事なシーンをヒントとして載せようとしてたのかな? とは思います。

なので、気が付いた事、思った事を順を追って話します。

パンフレット見ながらでないと分からないと思いますが、ご了承ください。

 

 

表紙がアオサギなのは、いつもの事であり、今更だけど、この人がキーパーソンだと言う事なのは、間違いが無い。

 

始めのページ、宇宙から落ちて来た石の周りに作った家ですね。

暗く落ちぶれている、西洋風でファンタジー風の家ですね。それに木々に囲まれている。まさにジブリ

もちろんジブリだけではなく、手塚治虫関連の象徴でもあるのでしょう。

 

文が「少年眞人は……」から始まります。「マヒト」とかなを振ってある。普通は読めないからです。

つまり意味がある。普通読めない名前にする事にです。

だからこれが「しんじん」と読み「シンジ君」の事だとは、前に言いました。

 

「生と死の世界へ向かった」とあります。

これも(象徴的にだが)死後の世界だと、すなおに言ってますね。

 

最近聞いた事で、鈴木敏夫さんは宮崎駿フェリーニの作品を見せたようです。

「8 1/2」と「魂のジュリエッタ」ともう一個何かだそうです。

これが面白い。ここもそろったと言う事です。

ただ分からないのが、イクニ作品を参考にして出来ているのか? その大本の寺山とフェリーニから直接からなのか? と言う事です。

もし直接寺山とフェリーニからこの作品が出来ているのなら、すごい事なのですが、逆にすごすぎて疑っています。いくら何でもここまで出来るのか?

やはりイクニ作品を間に挟んであるのじゃ無いのか? と私には思えて仕方がありません。

 

さてフェリーニをみたのなら、死後の世界を暗喩として描くのが分かります。

作家としての生と死、作品の生と死としての世界を、実際の死後の世界風に表したのが、この作品ですね。

前に言った様に、仏教の六道の畜生道、餓鬼道、修羅道などが入っていると思います。

そこから生まれ変わって戻ってくる話です。

誰が? もちろん主として庵野さんがですね。

 

「嘘と真を使い分けるサギ男」とあります。

アオサギ鈴木敏夫さんだともっぱらの噂です。

私はそれはないと思ってましたが「その要素も入っているかもな?」と思えてきました。

しかし入っていても二割くらいでしょう。

それに鈴木さんが入っているなら、前田真宏さんも一割くらい入っていても良いと思っています。

しかし例えそうであっても、半分以上は富野由悠季さんの事だと思っています。

 

「創造主・大伯父とであう」とあります。

これがまた面白いのに、気が付きましたか?

この創造主と言う建前、もしみんなが映画を見て、勝手にこの文を付けて良かったら、何と付けるのか?

ただ大伯父と付ける人がいる。

墓の番人と付ける人もいるでしょう。

謎の老人。謎の宇宙人。孤独な世界の老人。

とにかく色々つける人がいる事でしょう。

では、この映画を見ただけで「創造主」と付ける人が、どの程度いると思いますか?

たぶん「あまりいない」はずです。

つまり「創造主」と言うのはヒントであり答えです。これを強く言いたいと、伝えているのです。

だから、子供である宮崎駿にとっての創造主「手塚治虫」であり、子供である庵野さんの創造主「宮崎駿」でもあるのです。

 

最後に「自伝的ファンタジー」とあります。

どこかで聞いた事ありませんか?

そう「田園に死す」の説明文によくある奴です。

これもヒントですが、田園に死すと言うより、その影響下のエヴァやピンドラの流れが入っている、と言う事でしょう。

 

自伝的物語であり、死後の世界、まさに寺山とフェリーニだというのです。

 

次のページがアオサギです。歯を出し、リアル寄りで怖い絵ですね。

これは「赤に白に黄色に青を、使っているのがアオサギだ」と言うヒントです。

分かります? これがパンフレット2枚目だと言う事です。これが「大事だ」と言うヒントです。

だからこそアオサギ富野由悠季でなくてはならないのです。ガンダムカラーだからです。

 

もし、スタッフの誰かがアオサギを書いて来て、青く塗っていたら、宮崎駿はかなり怒る事でしょう。「だからダメなんだ!」とか言って。

アオサギは青くはない。灰色です。宮崎駿がそれを知らない訳が無い。

それをあえて青くしてきたのです。これがヒントでなくて何だと言うのでしょう?

青くしなくてはいけない理由がある、と言うヒントです。

 

次が作品解説です。

気になったのは「大衆の戯画として描かれるインコ」とある所です。

だとしたら、インコは一般大衆の事かも知れません。

私は製作者側の暗喩だと思ってました。

ただ、製作者も大衆なので、入っているかもな? くらいはまだ思っています。

 

その次が「われを学ぶものは死す」と書いてある門です。

金色で立派ですね。これが過去の作品の墓の門でしょう。

もしくは過去のキャラの墓か?

立派な門です。過去の作品は立派だった、と言う事でもあります。

しかし「死んだ者は蘇らせるな」と言う事です。

「新たな物を作らないと、作家として死んだようなものだ」と言う事でしょう。

 

さて、ここからは分からない物もあるので、飛ばします。

分からないのか? そもそも何もヒントが無いのか? も分かりません。

 

キリコが住んでいた場所の絵が出て来ます。

たぶん「方舟」だと思うんだよね。

意味的には大してないだろうけど、寺山入ってますよ、と言うヒントかな?

あと、前に言った様に「キリコはアスカ」と言う、遠いヒントかも知れませんが。

 

その後に、七人の小人みたいな、おばあさん達の絵も出て来ます。

たぶんあれは、ディズニー関係してるよ、と言うヒントでしょう。正確にはディズニーからの手塚治虫だろうけど。

それと、たぶん、ジブリの古参の女性スタッフだと思います。

 

父の絵も出て来ます。

ちょっと遠いのだけど、ずっと思ってたので書いておきます。

父の名は勝一ですね。しょういちと読むらしい。

もちろん、宮崎駿の本当の父の面影も入っていると思っています。

それとは別に考えたのが正一です。つまり鉄人28号です。

母が火の鳥なら、父が鉄人28号もあるでしょ?

しかし思う筈です、鉄人28号は正太郎だろう? って。

Wikiを見れば書いてありますが、28号の作者自身が言ったのが「正太郎の元は金田正一」だそうです。野球選手ですね(本当は、まさいち、と読みますが)。

だから私は28号も入っていると思うのですが? 自分で言ってて、どうかな?

ちなみに金田正一はスワローズでしたね。

 

その後でインコが海の上を飛んでいるシーンがある。

これいる? って思いますよね?

ただこれで分かるのは、鳥は飛べるが、だからこそ「地に足が付いて無い」「ふわふわしている」と言う暗喩です。

しかも、わざわざ海の上を飛ぶのも意味がある。

海に入るとは「水に入り清められ、鍛錬される事の暗喩だ」とは、前に言いました。

だからインコは逆に「鍛錬されないし清められない存在」だと言う事です。

 

ヒミの家が書いてあります。

向こうが海であり、たぶん高い所にあるのが分かる。

これってさあ、ブラックジャックの家じゃないですか。そこから来てるのでしょう。

 

ヒミの家ではジャムパンを食べます。

嘘っぽいし、美味そうでもない。

元が分からないのだけど、ディズニーなどの影響があると言う事だと思います。アメリカっぽいですね。

ディズニーなどは、アメリカの良さそうな所を描き、それのデフォルメされた物の影響を子供の頃に受けた、と言う事でしょう。

甘く、嘘っぽい物を、子供に与えたのが手塚治虫だった、と言う事でもあるし、宮崎駿もまたしかり、と言う事だと思います。

 

食べ物を作っているインコの絵があります。

畜生であり、食べる事ばかり考えていて、争ってばかり知る奴ら、と言う意味です。

それらは死んだような奴らと言う意味でもあるのでしょう。

「いいかげん、人に生き返れ」と言う意味でもあります。

 

よく見えませんが、ヒミの衣装は、やはりメイド服っぽいですね。

意味は良く分かりませんが、ただ前に言った様に、可愛らしいバレリーナが着るような服を模した物、と言う事ではあると思います。

(8月18日絵が公式から出て来たので、追加。メイド服ではなく、ただの昔のアメリカの若い人が着るエプロンですね。アメリカの若い母ってだけです。ちょっと嘘っぽいのは、昔の映像から来る、ディフォルメされたアメリカの象徴だからでしょう。食べたジャムパンと同じ、ディズニーなどからの影響を表してただけですね)

 

ヒミが眞人の母親であり、産む人と言う話でした。

この「産む」と言うのを、暗喩としてよく使ったのが、もちろん寺山です。

だから寺山の事も分かっている、と言う事を言いたいのだと思います。

 

空飛ぶ石。

「今や空を飛ぶのは石である」と言う絵です。悲しい絵ですね。

 

最後が、あの金色の門の所を俯瞰に見た絵です。

つまり「死んだ昔のお話やキャラが、向こうに果てしなく広がっている」と言う絵です。

学ぶべきではないと言ったのは、過去の作品を落とす意思ではなく「素晴らしい物だった」と言ってるような絵です。

過去の作品をたたえる絵です。

だからこれが最後なのです。

 

裏表紙が、宮崎駿でしょう。

もはや、よく見えず、しかし作った作品の記憶として、思い出は残る。それでいい。

 

 

さて、スタッフロールの名前は、誰が書いたのでしょうね?

宮崎駿自身かな? 他の誰かか?

ちょっと自分事でなんだけど、手書きスタッフロール、私も考えていたんだよね。

別に素人なので、どこで使う事も無いのだけど。

ちょっとやられた、っと思ってしまいました。

 

ここに ハーモニー 高屋法子 とありますね。

今までの歴史から言うと、別にあってもおかしくないのだけど、ちょっと勘ぐってしまうんだよね。ハーモニーで使っている所がね。

つまり、やはり、ピンドラ見て無いかな? と思ってしまうのです。

 

 

で、この様に、パンフレットも意外と楽しめた、と言う事です。

とは言っても、やはり、どうしても、見る前から分かってもいたけど、このパンフレットは無いなあ。

もう一度言うけど、この偏り過ぎていて、客が楽しめないパンフレットって、映画自体の暗喩ですね。