号漫浪正大

輪るピングドラム ~物語を見直す

神に優しさなんてものがあるのか?

アニメ Angel Beats! (エンジェルビーツ

感想です。ネタバレです。

 

こう言う世界があったのですね。

お目々が大きい、いわゆるアニメキャラでドギツイ内容を語るアニメです。

アニメよりゲームの世界では、この手の作品がある事はなんとなく知ってました。

この作品も元はゲームを作っていた会社がアニメを作ったそうなので、納得です。

はっきり言ってさけてました。リアルさからかけ離れたキャラが、辛い内容や悲しい内容の話をするのが何がいいのか分かりませんでした。

しかし見てみると、なるほど、この方法しかない訳ですね。

 

この作品は普通の作品じゃさけるような内容の悲しい話が入っています。これをリアル路線で描いたら見てられない。逆にアニメっぽいキャラで下らないギャグでふざけながら描いたら、これで見れる作品として成立するのだと知りました。

キャラがやっているリアルさが無い行動も、死後の世界と言う事で成立させてます。

下らないギャグもふざけた生活も、死んだ若者が成仏する為に用意された世界、と言う事でならおかしくない。

古くからある「アニメキャラがリアルさの無い世界でふざけた生活を送る」、この今更多くの人が見たくも無い内容がありになる設定です。

 

この作品は音楽が良いと言われているようですね。

それも分かります。私も思いました。

しかし今一口ずさみたくない歌です。覚えにくい。つまりもう一つだと思います。アニメの中の音楽としたら良かったとしても、ただの歌としたら一歩足りないのだと思います。

しかしこのレベルに文句を言うのは酷ですね。でも良かっただけにもう少し何とかならなかったのか? と思ってしまいました。

 

そして物語の内容です。これも良かっただけにもう少し何とかならなかったのか? でしたね。

あくの強いキャラを沢山出しておいて、最後はまとめて消えてます。ただこれは「全てのキャラを細かくやってはいられないだろうなあ」と思っていたので、まあ予測通りです。それに沢山人がいるリアルな学校でも、周りの数人しか細かくは知らないものなので、私はこの大勢の人の雑なあつかいもリアルっぽいと思えましたけどね。にしても、雑すぎると言う意見は分かりますけど。

ヒロインっぽいゆりも、今一主役の音無(心臓の音が無いから音無なんですかね?)と関係ないし、もっとからめたよな? とは思います(人も物語も)。

そして最終回、音無がふられます。告白したけど「私はそういうつもりじゃなくお礼を言いたかっただけ」とかなでに言われて……はいないけど、そういう風に見えるシーンになっています。せっかく深い傷を描いた物語なのに、ふられた男で最後泣けと言うのですか? と思ってしまう人がいてもおかしくない終わり方です。

死に未練の無い音無が間違って迷い込み、皆の未練を断ち切ってまわり、最後自分は未練を残す終わり方に見えます。

 

でもフォローはしときます。

未練があるから消えないのです。かなでに「二人でこの世界に残ろう」と言うが無理なのです。かなではどこかで納得して消えてしまうでしょう。たとえ直接お礼を音無に言えなかったとしても。

ゆりは死んだ兄弟の事がトラウマになっているのだから、それを直接直す事はできない。あくまで自分自身でその昔を許せるように感じるしかないのです。つまり未練を直接直せなくても成仏できるのです。

ユイも最後告白されて残りたいだろうけど消えて行きます。納得できれば消えて行くのです。

他に普通の学校生活をして消えて行った者たちも、この幸せが続けばいいと思った筈です。しかし消えて行った。

地下の第2コンピュータ室にいた奴が言っていた「ANGEL PLAYER」のプログラマーの彼女も消えて行ったそうです。つまり無理なのです。上手くいっているのにこの世界に残るのは。逆に残っていると言う事はトラウマが消えてないと言う事です。その状態であまりに長くいるとおかしくなるのでしょう。「ANGEL PLAYER」のプログラマーの様に。

かなでには分かっていたのかもしれません。二人でこのままずっとこの世界に残るのは無理だと。そしていつか自分が消えて音無が残った時、「ANGEL PLAYER」のプログラマーの様におかしくなってしまわない様に自分は今消え、音無にも成仏するのが良い事だと示す必要があったのでしょう。だからああするしかなかった、せめて最後「ありがとう」と言いたいと。

 

最後、生まれ変わった二人がまた出会う所で終わります。

最終回と言い、この終わり方と言い、ありきたりでつまらないものです。

しかし良いのです。これで良いのです。

ミステリー作家のジェフリー・ディーヴァーが短編を描く時の事を言ってました。長編で悪者が勝つなんて読者を裏切るようなことはできない。しかし短編なら悪人が悪いまま終わる事も許される、と。つまり読者に長々読ませておいて、悪い意味で裏切る事は出来ない、と言っています。流石です。その通りです。裏切るなら、それはそれでありだと思える内容でなければならない。それが出来ないのなら、つまらなくても普通に終わらせるべきなのです。

人がやらない事と、出来ない事があります。ごっちゃになっている人がなんと多い事か。人がやらない事は意味があってやらないのです。そうじゃなく、人が出来ない事をするのですよ。

 

Angel Beats! は、さけてきた私には新鮮で、こんなのもありなのだと分かりました。

普通では描けない、苦しい内容の話が描ける面白いやり方です。

文句もありますが、それは良かっただけにもう少し……と思ってしまうものです。良くなければそもそも出てこない感情です。

ありきたりな終わり方ですが、Angel Beats! は粗削りながら良い作品です。