号漫浪正大

輪るピングドラム ~物語を見直す

ちょっと酷い現状

書きたい事が二つ出来たので、書きます。

(昔言った事と重複するけど、勘弁です)

 

1、本当の難解映画は、難解であると言う事すら気が付かせてはくれない。

 

2、暗喩は必要か?

 

 

1、について、

今や昔話になるが「暗号を入れるなら、暗号が入っていると気が付かせない事が一番いい」とあり「デジタルなら、画像に暗号を入れる」と言うのがあった。

 

分からない言葉の羅列があったら「暗号か?」と思わせてしまい、だから探る人が出て来て、見付かってしまう。

しかしそもそも暗号が入っていると思わなければ、見付からない。

 

そう言えば現代ってパソコンの色数ってどうなってるのだろう? と思い調べたら24ビットカラーなのですね。

時代も変わった、と同時に、その程度か、とも思ったけど。

ただ、24ビットカラーぐらいで、もう十分なのですね(業務用30ビットカラーなどもあるようだけど)。

24ビットカラーで約1677万色。

その中で1ビットずらすと青が少し赤っぽい青になったりするが、もうあまり違いが分からない。

ゴチャゴチャした色の絵だとしたら、各1ドットの色を、1ビット分ずらしても、同じ絵に見えます。

それを利用して、各色に暗号を隠す事が出来る。

例えば各色の一番下のドットだけを集めると、文字を表す数字になるとかです。

 

などから、デジタルの写真に暗号を入れる、と言うのが昔ありましたが、今の暗号はもっと凝っている事でしょう(もちろんですけど)。

とにかく、暗号だと思わせない事が、一番気が付かれないのです。

 

物語もそうです。

結局、一番難しい謎や暗喩は、気が付かれてもいない。

だから、googleで「謎映画」とか「難解映画」と探しても、そもそも出ても来ないのです。残念です。

難解映画で探すと、同じ様な名前の作品しか出て来ない。しかも種類が少ない。

たぶんこれらのサイトを作った人は、何も分かってはいない。

何も分かってない人が作ったサイトやyoutubeを、分かってない人が見ているのです。

 

だからこそ、ゾッとします。

暗喩や謎が解けないレベルではなく、謎があるとすら気が付かれてないのが、google検索から分かるからです。

これでは、レベルは上がらない事でしょう。

アホがネットを見て、アホがアホな事を答えているのを読んでいるのが現状です。だからゾッとします。

偉そうな事を言っていますが、数年前で、もういい歳だったのに、私もアホ側だったので、自慢でも何でもなく、ただゾッとすると言う話です。

 

2、について、

 

映画「NOPE」の考察をyoutubeで見ていて、気になった事を言っていた人がいました。

チンパンジーがアジア人の暗喩なんだろうけど、あれはどうなんだ?」と言う事をです。

「ちゃんと分かるように暗喩を示しておくべきだ」と言うのです。

 

まず第一に、この人も「間違ってはいないのだろうけど」とチンパンジーの暗喩の事は正しいだろうと言ってましたが、聞いて「そうだろう」と思える程度の暗喩は、簡単な部類です。

そのレベルで問題なら、ほぼ何も分かってないと、言ってるようなものです。

 

そもそも、物語の解説動画や考察動画や説明動画をしている人は、無くても良い事をしている人です。

みんなが分かる暗喩なら、だれも説明する必要はない。

分からない人がいるから考察するのだが、それは他の解説や説明とやっている事は同じです。

暗喩の説明が要らない位の映画が良いと言うのは、他の解説だっていらない映画が良いと言う事と同じであり、評論家などいらないと言っていると同じです。

だからこの人は自分の価値を否定している。

 

もちろん、この人が言いたいには「この暗喩と言う分からない要素はいらない」と暗喩に対してだけ言っているのだが、これは「自分がいらないと思った物は、いらない」と言ってるだけであり、ただのわがままです。

 

では、暗喩が必要か? と言うと必要ではない。

確かに難しい暗喩は、分からなくても見れる映画にしなくてはいけない。

暗喩に気が付き、それで始めて見れる映画と言うのは、間違いだとは思っています。

 

では「NOPE」はどうだったか? と言うと、確かに微妙ではある。暗喩が分からないとただのB級ホラー映画でしかなく、明日には忘れる物語でした。

暗喩が分かり、初めていい作品になるのだから、確かに微妙です。

 

でもそうであるなら、そう説明出来ないといけない。

この文句を言っている人は「なんかなあ? それはどうかなあ?」と言う感じであったのだが、説明出来ない人が映画の説明をしているのだから、間違いです。

 

ちなみに「ユリ熊嵐」なんかは確かに暗喩が分からないと、つまらないし、イラっと来るので、あれは良くない話です。

と、一般的に言えば良くないのだが、分かると、とても良く出来ていたので、個人的にはあそこまで行くとありじゃ無いのかな? と思えてしまう作品でした。

そして「NOPE」はそこまで見事では無いのだけど、そもそもそんな難しい暗喩ではないので、分かろうとしない評論家は、評論家ではない。

 

ちなみに、素人はかまわない。

多くの人が分からない暗喩を、素人が分からないのは普通であり、それで楽しめる映画で無いのなら、それは映画が悪い、と言って良いと思います。

ただこれは素人が言っていい文句であり、映画を深く探り答えを出す評論家が言う事ではない。

 

暗喩だと言われても「そうかな?」と思える難しい作品もある(難しいと言うより「暗喩が上手くない」のだと思っているけど)。

それが庵野さんの「シン・シリーズ」です。

だから、あっちで文句を言うのなら分かる。

 

アニメ映画の「君たちはどういきるか」も、何やってるか分からない映画であり、分からないと感動も出来ないから、あれも一般的には無しです。だから私は「褒める事はしない」と言ってます。

 

結局、面白いかが、全てです。

暗喩があろうが無かろうか面白ければOKと言う、ただそれだけの話です。

 

そして、及第点は取れていて、そこから暗喩があり、それが分かれば更に面白ろければ、それは更にいい作品だ、と言う事になります。

 

「NOPE」も、暗喩無しで及第点を目指した作品だとは思うので、あれでダメかな?

で、個人的には暗喩ありきで及第点だったので、一般的には微妙かもなあ、と言う感想です。

 

暗喩は必要か? に戻ります。

前にも言ったから、簡単に言います。

 

1、センスオブワンダーが生まれる。

2,整合性が取れやすい。

現実では起きた事だから、整合性は取れているのを元にしてるからです。

3,暗喩が分かれば、更に深みと面白さが湧く。

 

などから、暗喩は合ったらいいと思います。

 

ただ必須ではないし、暗喩が最高峰でもない。

あくまで、基本の物語の面白さが、もちろん基本です。

 

それとは別に、暗喩映画をミステリー映画の様に思っている監督もいそうだと思う。

これは謎解きを趣味にしている、私みたいな人は良いけど、ほぼいない。

分かるプロレベルの人だけの、趣味になっているので、どうなのかな?

ただ、これを趣味に出来る人が増える事を、個人的には願います。

 

エヴァを知っている人は多い。日本では特に。

なのに、いつまで経っても、ピンドラを語る人が、ほぼいない。

だとしたら「逆シャア」も「君たちはどう生きるかも」もフェリーニも寺山も分かる訳が無いのです。

 

もう一度言うけど、暗喩は必須ではない。

ただ暗喩がまるっきり分からない人は、難しい事は何も分かってない可能性が高い。

暗喩が分かっていて、それで使うか? 使わないか? を選べるレベルの監督が多くなる事が、日本のレベルが上がった事になると思うのです。