物語制作時に使われる意味での「プロット」はこう使われるべきだ、と言う提案です。
プロットとは「その世界の歴史を、どの順番、どの目線で見るかを記したもの」であるべきだと思います。
書籍「感情から書く脚本術」カール・イグレシアス著の中に、面白い文がありました。
「物語とプロットは別物だ」と言う所です(ここで言う「物語」の言葉が指すのは、その世界の現実の流れ、または歴史と言う意味です)。
そして「プロットのとらえ方は混乱が見られる」ともあります。つまりアメリカでもよく分かってないで使っている人が多いと言う事です。
で、結局この本でも、ヒントは書きますが、はっきりとプロットはこうだとは書いてありませんでした。
なのでネットで調べまして、色々出て来ましたが、今一納得できませんでした。
だから自分でどういうものなのかを、まとめ様と思った次第です。
まずはwikiです。
「プロットはストーリーの要約であり、因果関係で大事な要素をつなげた物である」と言うような事が書いてありました。
(ここの「ストーリー」とはカールさんの本の「物語」の事です。私はそれだと他の使い方と混ざるので「その世界の歴史」が一番意味が間違いにくいと思っています)
ここで「1927年のイギリスの作家が書いた本の中でプロットの事が書いてある」とのっているので、ここから来ているのでしょう。これが間違いですね。
1927年の、つまり古い「小説」の作家が書いたのを元にしているのが、間違いの元なのです。
ただ今でも小説ならこの意味でほぼ通るでしょう。
でも現在の映像作品の事になると、もはや変わってきてるのです。
wikiだと例として
ストーリーは、123345678
プロットとは、1→4→8
とあります。
つまり大事ではない23567は飛ばし、大事な所、かつ因果関係でつながる148がプロットだと言っています。
小説ならまずこれで通るでしょう。しかし最近の映像作品なら違います。
例えば、712345678、な時もあるでしょ?
つまりアニメ「まどマギ」や「サイコパス」みたく、後のシーンを始めに入れると言う奴です。
これは別に因果関係でつながって無い時があります。始めの7から1ではつながって無い時がありますが、でも通りますよね?
ではこれは何をしてるのか? それは「面白い作品」にしているのです。
プロットとは「その世界の歴史」を客に「面白く見せる為だけに存在する技」なのです。
そこには因果関係など関係ないのです。
ただ極論では関係はないけど、大体は因果関係が成り立つようにしないと、話が何が何だか分からなくなるので、結局普通は因果関係が成り立つようにしてるのが事実です。
この「時間軸をずらす」と言うやり方は映像だと情報量が多い為まだ分かりやすいのだが、小説だと絵が無い為分かりにくくなるので難しいと思います。だから小説だと元々あまり無い為、古い小説だとwikiの説明で成り立つのです。
この例の様に初めに終わりの方のを映す、と言うのは良くありますが、別に始めだけでなくても良いのです。もっと時間を混ぜても良い。
クリストファーノーランの映画「フォロウィング」や「メメント」なんかでは、途中「いつの事なんだ?」と言うシーンが入ります。実は説明もなく後のシーンを途中に差し込んでいるのですが、それでも映画として通るのです。(メメントの電話のシーンなんかは、そもそも映画の途中の時間の何処であっても良い、と言う更に面白い使い方でした)
ノーランの映画のやり方はまず見かけないですが、しかし時間軸がバラバラと言う作品は結構よくあります。昔起きた事件、もしくは出来事を追って行く、と言う作品です。
まずはミステリーなんかはそうです。普通はまずは事件が起きてから探偵が行く。そして最後の方の事件解決の時に、犯行時の昔のシーンを入れる。この犯行時のシーンは、物語のオープニングより前の時すらありますよね。
最後だけではなく、途中でも少しずつ何が起きてたかを見付けて行く、なんて作品だと、時間はバラバラに映し出される事になります。
ミステリーだけでは無く「昔の偉人や有名人が何をしてどうなったのか?」を歴史学者が追う、とか新聞記者が追う、等の作品の場合は、面白くなる様に時間はバラバラに映し出されたりしますね。
例だと歴史学者がまず「本能寺の変」の事を見付ける(例なので皆が知らない歴史だと仮定してください)。そこで明智光秀が信長に謀反を起こしたと知る。その後もっと昔の事を見付け、光秀が信長と仲良くしていた時期がある事を知る。ではこの後から本能寺の変まで何があったのか? を段々と歴史学者が探していく、と言う話です。
あとはゲーム「バイオハザード」でも、洋館に閉じ込められ、この誰もいない館で前に何が起きたのかを残されたノートや日記から探って行く、と言う話になってましたね。これもゲームじゃ無く物語として、昔の出来事の方を主題にして映像で流す作品に仕上げたら、時間軸がバラバラの作品にも出来るでしょう。
別に昔でなくても良い。その世界での現在のアメリカの何処かの州知事の事を探る新聞記者。学生時代や少年時代の出来事、会社や今現在の汚職の事、それらから州知事がどんな人間かを探る。最後は州知事と対面する。この時新聞記者は何と言うのか? 「これからも応援してます」と言うのか? 犯人しか知ってない筈の事を漏らすように誘導するのか?
つまり、この世界に起きた現実、つまり歴史を、バラバラな順番で出し面白くする、と言う作品も出来ると言う事です。
wikiの例の様に大事な所を因果関係でつなぐと、それは「あらすじ」になります。
だから「プロット」は「あらすじ」だ、と言う人もいます。
でもせっかく違う言葉があるだから(日本語でも英語でも)、プロットは違う理由で使った方が良いと思います。
元の英語の意味が「ひそかに計画する」「たくらむ」「点と線で記す」と言う様な意味があります。
そこから「元の物語上の歴史を、どの順番で繋ぐのか?」もしくは「どの点から見てる事にするのか?」と言う使い方にした方が良いと思います。
つまり物語(歴史)を作った後で、物語を面白くする為に、どの時間の順番で出すか? どの目線にするのか? を考えるツールにし、それで表された事を図に記すと言う使い方です。
この方が物語制作上だと意味がある物になると思います。
では始めは「時間」に付いてのプロットを説明しましたが、今度は目線です。
つまり物語を面白くする為に「たくらみ」そして「どの点を線で結ぶのか」は時間だけでは無いと言う事です。
場所もある。つまり見ている人が誰なのか? 誰目線なのか? です。
分かりやすいのは「ゴジラ」ですね。
シン・ゴジラでは「怪獣が出てきて、政府がどうにか動きを止める」と言う話でした。
しかしこれは政府目線だけではなく、市民目線でも作れますよね?
つまり何が起きてるか分からない状態から逃げ惑う人々のパニックムービーです。これは大体は家族愛を表すものになります。誰目線の物語にするかでメッセージが変わってくるのです。表で起きている歴史「ゴジラが暴れ政府に止められる」は同じであってもです。
シン・ゴジラのほぼ政府目線のみの作りの方が異常ですね。理由は分かりませんが、わざとなのでしょう。
アメリカ映画では普通両方取ろうとします。「インデペンデンスデイ」なんかでは政府が出て来るが、一般人の家族も出て来ます。ただ普通の家族だと物語上政府とからめないので、よく一般の科学者にします。そして何か謎を理解していて政府にあって教える役になるのです。普通はこうします。
ガンダムだとジオン軍目線にするのか? 連邦軍か? はたまた一般人か? 大人か? 子供か? 男か女か? 等で話のメッセージは変わって来る筈です。
全て分かっていてもつまらないので、わざとヒーロー目線ではなく、ヒーローに出会う一般人目線と言うのも考えられます。「北斗の拳」の第一話なんかはそうでしょう。第一話の時点で、既にケンシロウは多くの経験をしている状態です。それが明かされるのはずっと後です。
他のアメリカンなヒーローでも出来そうです。特に過去に暗い事があったダークヒーローだと効果的ですね。
似てる事として「新米が来る」と言うのは良くあります。刑事課に新米が来る。そして相棒が嫌な奴になる。そしてどうもこの相棒には暗い過去がある。そしてしまいにその過去を知り、打ち解けあって行く。なんて物語です。
刑事以外でも会社でも消防署でもヒーロー組合でも何でもいいのですが、目線をずらし、秘密を隠すだけで物語の面白さが増す事は分かると思います。
では時間をずらす物語はどういう物語か?
まずはミステリーです。そしてファンタジーやSF等は相性が良いですね。
逆に「サザエさん」や「寅さん」等でやっても鬱陶しいだけですね。
そして目線を変える物語は?
まずは大きな出来事で、沢山の人が係わってくる事です。怪獣、戦争です。
あとは隠したい事を、隠しとく為にですね。知らない人目線にするのです。
ただどちらであっても大前提として「物語を面白くする」為にある事を忘れてはいけません。
逆に言えば「普通に作った物語が今一面白くないな」と思った時に、試してみる事が「プロットをいじくる」事だと思います。
では例としてアニメ「Vivy」で表します。ネタバレです。
今放送中の作品でまだ2話しか見てません。
この作品は、未来においてAIの暴走で人が沢山殺される。その事を阻止する為に過去にAIマツモトが戻り、過去のAIロボット、ヴィヴィに未来を変える為に手を貸せと言う物語です。
この物語2話目の感想です。悪くなさそうだけど、もう一押し面白さが足りない様に思えています。
では面白さを足す為にプロットをいじりましょう。
設定がSFです。しかも未来から過去に戻る話なので、時間軸をずらすにはもってこいの作品ですね。
まずはヘルメットで顔が見えない女が廃墟の建物に向かう。そこの地下で倒れて動かないロボットを見付ける。これがヴィヴィです。
ヴィヴィにはいくつかの特徴がある。ぬいぐるみを持っている。ピアスをしている。戦闘服で目立つ服を着ている。しかし右手だけが違う服のを縫い付けてある。しかも雑に縫われていて、糸が赤等で目立つ。髪の一部にメッシュで色が付いている。等です。
このロボット、ヴィヴィに線を指し、この女はデータを取ろうとする。
「セキュリティー突破、時間がかかります。全て終わるまで待ちますか?」等のロボット音がヘルメットから聞こえる。
「いや、データを取れた所からでかまわないから見せてくれ」と女は言う。
そしてこのロボット、ヴィヴィの物語が始まる。
なので順番はバラバラです。たぶん盛り上がる途中のミッションから物語は始まる。しかも戦闘シーンからでしょう。
2話では時間が更に戻り、ヴィヴィが戦闘がまるっきり出来ないシーンから始まり、客に「あれ?」と思わせる。
3話あたりでやっと普通の1話の内容が出てきて、客が納得する。始めはただの歌を歌うロボットで戦う事は出来ない。しかしマツモトから戦闘プログラムをインストールされて戦えるようなる、と言う事が分かる。
途中で現在に話が戻り、女がヘルメットに「10年前のデータは無いのか?」と聞く「10年前のはまだ取れてません。待ちますか?」と返してきて「いや、あるのから見せてくれ」と言って、また物語が続く。
物語の最中に、謎のヴィヴィの格好や持ち物に関する話が出て来る。長い年数戦ってきて色々あり、係わった人の思い出がピアスや服やぬいぐるみにあるのが分かる。ヴィヴィの人との思い出が、成長がそこにあるのが分かってくる。
物語の最後の方でとうとう10年前のデータがとれた事を、女が知る。そしてそのデータを見ようと震える手でボタンを押そうとする。その時後ろから謎のロボットに襲われる。危ない、となった時に助けられる。動き出したヴィヴィにです。
ヴィヴィは「まだ終わってない」と言いどこかに行こうとする。女は「私も付いて行く」と言い付いて行く。
場所に付き戦闘などがあり、少し落ち着いた時、女はヴィヴィに銃を向ける。
しかし敵ロボに邪魔をされ、ヴィヴィとはなれ離れになる。
女は一人になった時、まだ見て無かった10年前のデータを見る。
10年前にヴィヴィに見捨てられた少女が、大きくなった姿がこの女だと分かる。
現在のヴィヴィの方は最後の場所にたどり着くが、危機一髪の状態。その時この女が現れる。
女はまたヴィヴィに銃を向ける。
そしてフラッシュバック。さっきの10年前のデータを見てた時の記憶がよみがえる。
10年前に見捨てられたと思っていたが、マツモトが歴史を変えない為にヴィヴィを操作した事であり、ヴィヴィは見捨ててはいなかったと知る。
女はヴィヴィから銃を敵に向け直す。そして……。
なんて所でしょうね。
最後はもう一ひねりほしいですが、長くなるのでよくある話にしました。
これはあくまでプロットの使用例なのでね。
この様に、元の話を作り、それが今一面白さが足りないなと思った時に使えるのが「プロット」だと思います。
では改めて、もう一度言います。
「プロット」とは「その世界の歴史を、どの順番、どの目線で見るかを記したもの」であるべきだと思います。