暗喩とは、隠喩とかメタファーとも呼ばれるもので、物語の中で何かを表すのに、まるっきり違うものを使い表す事ですね。
よくあるのが水滴とか雨で、涙とか悲しみを表す事です。
他にも暗いトンネルで奥が見えないのは、未来が見えない状態とかを表し、何かを落とすとか壊すことで、誰かが何処かで死んだとかを表したりする。
まるで夢診断のようですが、同じ感情をイメージ出来るもので表すことにより、他の事で同じ感情を客に与えられる手法です。
しかしもっと大きな物を暗喩とする時もある。大きなものとは、物質的と言うより、物語の大きな部分を占めるという事です。
元のゴジラが水爆実験で蘇ったことから、ゴジラが水爆が生む災の暗喩だと言われてます。
そこから進めて、シンゴジラは福島原発事故の暗喩になってました。だから最後ゴジラが倒されず、ずっと残るという話でしたね。
そこからもっと行って、物語全体が何かを表す大きな暗喩になっている時がある事を、この年になって知りました。
この物語全体を覆うほどの大きな暗喩がある物語を、個人的に「暗喩物語」と勝手によんでます。
この暗喩物語が面白いのは、何の暗喩かが分からないと、何やってるか分からない物語になりがちだ、という所です。
だから何をやってるか知りたければ、分かる必要があります。
しかし問題なのは「暗喩物語」というジャンルがある事が、世間一般に知られてないと言うことです。
最近は他人の感想がネットでみれますが、ほぼ間違いなく暗喩物語を分かってない人です。
感想だけではなく、考察サイトとかを出している人でも分かってないのが、ほとんどです。
これが気がかりなのです。
もちろん、すべての人が知る必要はありませんが、1%も分かってないのはどうなのでしょう? それはやばくないですか?
暗喩物語の暗喩を言うと言うことは、答え合わせになります。だから言わない方が良いと、分かっている人でも言わなかったのだと思います。
しかし、それで時代が経つとどうなるでしょうか?
しまいに分からない人の方が多くなるのです。
そして今や分からない人が多くなりすぎているようです。
日本と言う人口も経済も落ちていく国にとって、分かっている人が段々いなくなっている今の状態は喜べません。
このままいくと日本の物語のレベルが落ちて行くことでしょう。
もちろん物語とは暗喩だけが全てではないのですが、あると言うのを分かっている人すら少ないのでは話にならない。暗喩をやらなくても興味がなくても、物語の一部分であっても、あるという事実すら知らないのはやばいでしょう。
だから、もう少しは暗喩物語というのを皆に知らせる必要がある時代だと思います。
この「あるという事実を知っているか?」というのは、文化で変わってくる気がしてました。あるかどうかを知ってるのは、ただの知識だからです。
だから難解な話が多いという、フランス映画が怪しいと思ってたわけです。
そして映画「エコール」と「エヴォリューション」を見て、やはりフランス人は暗喩物語を理解している可能性が高いな、と思ったのですが、この2つの映画は監督が同じでしたね。じゃあ、あまり証拠にはならない。
しかしまだフランスにはいる。「星の王子さま」のサンテグチュペリです。星の王子さまも暗喩全開でしたね。
そこから更に気になったのが、寺山修司であり天井桟敷の事です。
元々暗喩物語というのがあるというのを私が知ったのは、アニメ「輪わるピングドラム」からです。
そしてこのアニメの幾原監督が好きだった作家が、寺山修司ですね。
そこから、寺山修司の映画「書を捨てよ街へ出よう」とか「田園に死す」とかが暗喩物語なのに気が付きました。
寺山さんの劇に名が出てくる「星の王子さま」に暗喩が多いのは、この時すでに分かってました。
それ以外に出てくる名で「宮沢賢治」の作品も出てきて、これはピンドラにも出て来る事から、宮沢賢治も暗喩物語を作ることに気が付きました(セロ弾きのゴーシュ)。
だとすると寺山さんの劇団「天井桟敷」が怪しいと思うわけです。
天井桟敷とはフランスの映画「天井桟敷の人々」から取ったのだと言うことです。
となるとこの映画が怪しいと思うわけです。フランス映画だし。
「天井桟敷の人々」は邦題で、元はもちろんフランス語であり、直訳すると「楽園の子供たち」となります。
では楽園の子供たちとは何処から出てくるのか? となるわけです。
この映画は見てません。WIKIで書かれていることがほとんどの情報で、他のネットの情報も少しだけ見ました。
結論から言うと、この映画も暗喩物語だと思うのです。
暗喩も結論だけ言います。内容はWIKIで見てください。
主役バチストはバチカンでしょう。
ヒロイン、ガランスがフランス。
ナタリーがイタリーでイタリア。
この辺までは名前が似てます。これからは役柄から当てはめただけです。
悪漢ピエールがソ連。
モントレー伯爵がドイツですね。
この映画は二次大戦末期に作られてます。なので内容はこれより前の暗喩です。
モントレー伯爵はガランスと結婚します。ドイツがフランスを占領したからです。
モントレーはフレデリックと決闘をしようとする。アメリカやイギリスと戦う予定だからです。
しかしその前にピエールに殺されてしまう。ドイツがソ連に負け(始め)たのが最初だと言うことでしょう。
バチストはガランスが好きなのに、ナタリーと結婚します。もっと前のナポレオン三世の時代にバチカンはフランス軍に守られていたが、フランスが戦争で負けて撤退した後で、バチカンはイタリアに占領されます。その事でしょう。
などの事から映画「天井桟敷の人々」とは暗喩物語だと思われます。
バチカン関連だから、キリスト教下の国々で生まれた人々の事になり「楽園の子供たち」になるのです。
それに気が付き感動したので、寺山さんが劇団の名前にしたのでしょう。
そして寺山さんも暗喩物語に浸かっていくのです。
それに触発された幾原さん(イクニさん)も、だからこそ暗喩物語の呪いにかかってしまうのでしょう。
ただ呪われたイクニさんは得意なので楽しそうだけど、それに引っかかった庵野さんは不幸そうになったけどね。
これは他の暗喩物語でもそうなのですが、どうも物語上おかしい所があるのが、暗喩物語だと分かるヒントになりがちです。
多くの暗喩物語が、普通の物語の展開と違う動きを見せます。
つまりそこが面白いわけでもなく、何処かにかかっているわけでもなく、しかし作りが下手なだけでもなさそうな、変な設定、流れがみえたら注意です。暗喩が隠れている可能性がある。
「台風クラブ」とか「エンジェルウォーズ」とか「さらざんまい」とか「ドニーダーコ」とか(エンジェルウォーズは暗喩と言うかどうか微妙だけど)。
逆に言うと、おかしい物語がなぜおかしいのかを、暗喩が分からないと理解が出来ないと言うことでもあります。
フランスの名がよく出てくるので、フランス映画では暗喩物語が他より多くありそうです。
そうなるとフランス人には暗喩物語があるのが知れ渡っているのかもしれない。少なくとも日本人よりは。
そうなると、日本人が知らなすぎる。ネットの感想を見るとそう思えます。
そうじゃなくても、日本の映画は世界に通用しないクソ映画が多いですからね。
多方面の問題から、どうもこれからも日本の映画はダメそうです。
しかし暗喩に気がつくかどうかなんて、個人の問題ですぐ直せます。少なくとも存在を知っている事は出来る。
だからもう少しは、暗喩物語の存在くらい広める、影響力がある人がいても良いのじゃないかと、最近思う次第です。