号漫浪正大

輪るピングドラム ~物語を見直す

ごらん、あの一番光り輝く星がキリンさんだよ。

アニメ「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」のテレビ版、感想、考察です。

ネタバレです。

 

監督の古川さんと言う方は「ユリ熊嵐」の副監督をしてた方だそうですね。

だからまあ、イクニ作品っぽい事になるのですかね?

 

この監督は上手いですね。たぶん。

たぶんと言うのは、この人の上手さは素人だと説明しにくいものだからです。

エルゴプラクシー」とか「宇宙よりも遠い場所」等と同じ上手さで、普通の人では説明が出来ない細かな要素が上手い人だと思います。

途中に少女たちの一人一人の葛藤とかが描かれるのですが、これがありきたりです。

しかし見てられる。

ありきたりだし見てられない物語が多い中、ちゃんと見てられる作りにしてるのは、監督が上手いのだと思います。

テンポだったり、見せるべき要素をタイミング良く見せたりするのが上手いのかと思います。

それに何か考えさせる要素を置いておく、これにより単純になりがちな物語も見てられる物になるのが、最近分かってきました。それが上手い物語でしたね。

イクニ作品みたいに、メタ要素か、暗喩要素か、お遊び要素があり、それが「ヤクミ」みたくきいてきます。

もし出来るのなら、ヤクミのないそばとか、ヤクミもネギすらないラーメンを食べれば、ヤクミの大事さが分かると思います。

つまり何も考える要素が無い時間を、作らない事が大事です。それが上手いですね。

(もちろんCG全開の映画等で、何も考えなくても面白いシーンが作れるのなら別ですけどね。戦闘シーンとかラブシーン等も、考えが何も無くても見てられる物です)

 

個人的には面白かったです。

イクニさんからの正当後継者っぽい感じがしますね。

ただ真似ようとしても、そう出来るものでは無いので、ここまで出来る人がいる事が良かったです。

ただ良くも悪くもイクニさんまでは届いてない。

届いてないからイクニさんほどは深くはなさそうです。

でも、そもそもイクニさんほどの深さや複雑さが必要か? 問題があります。

なので、それをマイルドにして作品にするこの監督みたいな人も必要かと思います。

だからこれはこれで一つの正解な気がします。

ただこれでも「象徴的過ぎて分からない」と言うネットでの感想がありました。まあそうでしょうね。

なので好き嫌いは分かれる作品かと思います。

 

象徴的で、現実なのか? 暗喩なのか? が分かりずらいですね。

私にもこの世界での現実なのか? は分かりませんでした。まあわざとそうしてるのでしょうけどね。

象徴的なのもそうですが、とにかくイクニ要素が多すぎる。

始めはリスペクトをしてるのかな? もしくはこの監督がやってきた集大成か? または得意な事をしてみたのか? 等と思ってました。

しかしです。

最後まで見て「これがコンセプトかも知れないな」と思えてきました。

 

キリンは誰なのか? 問題です。

たぶんこれがイクニさんでしょう。

もちろんそのものと言うより、イクニさんの象徴か、元ネタでしょう。

口癖「わかります」は、ピンドラのサネトシの「だよね」ですよね?

そうなると、この作品全体が「イクニ作品をやろう」と言うコンセプトだった可能性が出てきます。

だとすれば、いくら何でも多すぎるイクニ要素に納得がいきますが、どうでしょうかね?

ピンドラも「エヴァ、もしくは庵野さんをやろう」と言うコンセプトだった気がするで、そこを真似ているとも言えます。この事自体も「イクニ作品をやろう」と言うコンセプト通りと言う事です。

 

見て無いので分からないのですが、どうも「ウテナ」だと「死者の話だ」と思わせる回があるようです。これは露骨なので、逆に違うと思っています。ミスリードです。

ちなみにその後、ピンドラ、ユリ熊、さらざんまいとも、最後「キャラが死んだのかな?」と思わせる演出でそろえてきてます。これはウテナからの自分パロディに近いものだと思っています。

ただ、ウテナはミスリードだと思うけど、ユリ熊は正解です。死者の世界でした。これはウテナのころから考えて「今度は正解でやってみよう」と考えたのだと、思っています。

そしてこのアニメ「レヴュースタァライト」です。これも一見死者の世界だと思える演出です。誰も気が付いてないようですけどね。

 

マギレコでもやってましたが、東京タワーの土地は元々お寺ですね。東京タワーの下での戦いは、あの世での戦いに見えます。

ユリ熊では修羅界と畜生界の話です。だからスタァライトでも戦いと、動物がよく出て来る。それに食べ物もよく出て来ます。これは餓鬼界が入ってる気もします。

キリンは麒麟でしょ。獣類の長です。たぶん畜生界のいる畜生の長と言う意味かと思います。

スターになる、と言う事は「お星さまになる」と言う事です。

暇な方はもう一度アニメを見て下さい。そう思い聞くとそれらしい台詞が多いですよ。死んだようだとか、生き返ったとか、永遠に見守るとか、そんな「ここは死者の世界の話じゃないのか?」と思える台詞が多い。アタシ再生産と言う言葉もそうです。たぶんわざとです。

「同じ演目をまた上映する」という摩訶不思議な設定もそうです。輪廻ですね。

オープニングの始め、上からあの金色のボタンですかね? あれが落ちてくる所で始まります。落ちてくるのは地下、すなわち死者の世界だからです。

あの不思議な決闘場兼舞台も地下ですね。ユリ熊でも裁判の時下に落ちていく演出でした。

最終話で星形の石を積んでました。そして積むと壊される。これが三途の川の積み石の事です。

キリンがいるのも、同じ時間を繰り返せるのもおかしいでしょ? なんで地下で決闘しなくちゃいけないのか? 演技の学校があるのに。

これらおかしい設定も、普通の世界じゃない、つまり死後の世界だと思えば納得できます。

と言う事で、死んだが気が付いてない者達が生まれ変わる為、もしくは天界に行く為に競い合う。天界に行く事を表すのが、お空のお星さまになり、皆を見守り続けると言う事です。

 

と、思うように出来てます。

ただこれすらもミスリードだと、私は思っています。

一般にはこのミスリードさえも、気が付かれてないようですけどね。

これはあくまで「ユリ熊」を模しているだけだと思います。

そしてやってる事はそっち(死者の世界)ではなく「イクニ作品を模してやろう」と言うコンセプトだったと思っています。

 

とまあ、この辺の暗喩もイクニ作品っぽいですね。

この辺の暗喩は、気が付かなくても良い事です。ただ気が付けば、変に見えるシーンは何をしたかったのか? が分かると言う事です。

しかしさっき言った様に、イクニ作品ほどはっきりした暗喩にはなってない気がします。なんとなくぼんやりした暗喩に見えます。

個人的にはもっとハッキリした暗喩作品が見たいです。寺山作品なんかもそうですしね。

 

どうも最近やっている新作映画版も良く出来ているようです。

この手の作品を作る、後に続く人がいるのは、日本の物語制作にとっても良い事だと思います。

皆さんスターを目指してほしいですね。

ただ爆死してスターにならないようにね。

 

2021年8月7日 追加

 

良く見たら、10回レヴューがありましたね。

地獄の裁判は7回あり、決まらない時はあと3回あり、合計で10回になります。

だからやはり「ユリ熊」と同じく「死後の裁判」を表しているのでしょう。

ちなみに、最後の星罪のレヴューは、星積みのレヴューに代わる事で成功、と言う意味で、あくまで一回と数えましたけど。

そして成功して天道に行く事を表す事として、星になり皆をお空の上から見守ると言うのでしょう。

だからスタァライトしちゃいます、なのです。

 

そしてこれは、死んだ事そのものではなく、演技者として死んだように生きている事からの生まれ変わりを表す。つまり暗喩でしたね。

更に演技者も暗喩で、アニメ制作者だった事は、このブログのこの後で気が付いた事でした。