号漫浪正大

輪るピングドラム ~物語を見直す

【星の王子様】殺人事件

【1】

キツネ 「社長、何度考えても分からない物は、分からないのじゃないですか?」

バオバブ 「いや、何度も考え、話し合う事で道が開かれることもある。さあもう一度だ」

バラ 「まだ続けるのですか? まじめなんですね。じゃあもう一度。では『星の王子様を殺したのは誰か?』分かる方は手を上げて」

ヘビ 「手はないです」

バオバブ 「なんだ分かる奴はいないのか?」

ヘビ 「いや、みんな手は無いから」

バオバブ 「まったく、じゃあ手があれば分かるとでもいうのか? じゃあもう一度まとめてみよう。まずはお前の意見を聞こう」

キツネに聞く人は 【2】へ。

バラに聞く人は 【3】へ。

ヘビに聞く人は 【4】へ。

バオバブに聞く人は 【5】へ。

 

【2】

バオバブ 「じゃあきつね。お前は偉そうな態度だから、何か分かるんだろ?」

キツネ 「分からない事は分かります」

バオバブ 「じゃあ何が分からないんだ。何が分からないのかも分からない、なんて意見はダメだぞ。私はまじめなのでな」

キツネ 「そそもそも、死んだかどうかが分からないじゃないですか? 自分の星に帰っただけかもしれない」

バオバブ 「しかし、じゃあ何でなにか悲しいんだ? 悲しいのは意味があるのじゃないのか?」

キツネ 「それは会えなくなったからですよ。 星の王子様も薔薇に会えなくなって悲しんでいたじゃないじゃないですか。」

バオバブ 「生きているのに会えないから悲しいなんて、それじゃただのわがままじゃないか? そもそも自分であの星から出て言ったのに」

キツネ 「そうですよ。でもあの星から出て行ったから、帰りたくなったのでしょう? 恋しいのが分かったのでしょ? そこにそのままいたのでは帰りたくはならないでしょ? だから意味があるのですよ」

バオバブ 「分かった分かった。しかしそれはそれ、これはこれだ。今は死んだのかが大事だ。なぜなら私が気にしてるのはそこなのだからな。死んで帰ったのかもしれないだろ?」

キツネ 「そうかもしれませんけど。だから結局そこは分からないし、それに意味があるのかな?」

バオバブ 「人の命とは星よりも重いのだそうだ。なら意味があるだろ? ただ人は植物や他の動物の命は何とも思っていないようだがな。しかし私は人と違い本当にまじめなので、考えてやるのだ」

【1】にもどる。

 

【3】

バラ 「誰が殺したのか? ではなく自殺でしょう。それで軽くなり空を飛んで星に帰ったのですよ。愛する薔薇に会うためにね」

バオバブ 「しかし作者のサンテグジュペリの両親はカトリックだ。なのに自殺何て描こうものか」

バラ 「でも両親がそうだっただけで、彼自体はそうでもなかったようですよ。この作品の中でも、大人は分かってないと言ってるじゃないですか。大人、すなわち両親は分かってないと思ってたんじゃないのかな? だからこそ逆に自殺を描いた」

バオバブ 「ふむ。ミステリーっぽくはなってきたじゃないか。しかしそもそも何で死なないと元の星に帰れないのだ? いや! もしかしたらそう信じ込ませて自殺に追い込んだ奴が……」

バラ 「ああ、また社長のミステリー癖が出てきたな。なんでも裏がある訳じゃ無いでしょうに。じゃあヘビに聞いてみればいいじゃないですか? 彼なら蛇の気持ちもわかるかもしれない」

バオバブ 「なんで蛇なんだ?」

バラ 「あそこには蛇くらいしかいなかったじゃないですか?」

ヘビに聞く人は 【4】へ。

他の人に聞いてみる人は 【1】へ。

 

【4】

バオバブ 「やはりあそこにいた蛇が一番怪しいと思うのだが。お前なら分かるのじゃないのか? ヘビよ」

ヘビ 「それは人殺しが誰なのかを人に聞けば分かる、と言ってるようなものですよ。偏見です」

バオバブ 「おおそれはすまなかった。しかし蛇しかいなかったじゃないか? じゃあ蛇が星の王子様を殺したとしか思えない」

ヘビ 「蛇がなんで星の王子様を殺さなくちゃならないのです? 蛇は目の前に何かあれば何でも噛みつくわけでは無いですよ。威嚇されたとか何か脅威があるから恐れて立ち向かうのです」

バオバブ 「そうか? でもスキあらば噛んでくるように思えるけどな?」

ヘビにスキを見せてみる 【6】へ。

他の人の意見も聞いてみる 【1】へ。

 

【5】

バオバブ 「じゃあお前はどう思う? バオバブよ」

バラ 「あら社長? とうとうおかしくなりましたか?」

バオバブ 「ばかもん。たまには自分に聞いてみる事も必要なのだ。人は自分の気持ちが分かってるつもりだが、分かっていない生き物だからだ。もちろん木もだ」

キツネ 「で? 社長モドキは何と言ってますか?」

バオバブ 「ふむ。あの飛行機で砂漠に落ちた名もなき男が怪しい。これは全て奴の話でしかない。つまり嘘を言っているのだ。正確には言いたくない所をわざと言って無いのだ。たぶん腹をすかした奴は……」

キツネ 「ちょっと待ってください。そんな、生きてる他の動物を食べるなんておそろしい。そんな事きつね位しかしませんよ。でも、だから朝には死体も無かったのか! そして飛行士は生き延びた! って事ですか?」

ヘビ 「またー、ミステリーっぽいけどね。いくら何でもそんなに簡単に他の生き物を殺せる動物何て、蛇位ですよ。そもそもあの男は誰だと思います?」

バオバブ 「お! ここでまた問いか。つまり何か言いたい事があるのだな? 面白くなってきたかな?」

男の事をヘビに聞く 【7】へ。

男の事をキツネに聞く 【8】へ。

薔薇の事をバラに聞く 【10】へ。

 

【6】

バオバブ 「ぎゃあー! お前何で噛むんだ?」

ヘビ 「ああ、すみません。本能ですね」

バオバブ 「本能であっても、敵にしか噛みつかないのじゃないのか?」

ヘビ 「ああ、じゃ敵なのでしょう。でも大丈夫ですよ。木ですからね。そんなに簡単には死なないか、枯れないでしょう」

バオバブ 「馬鹿者が。私は虚弱体質の木なんだ。だからこうして社長をしている。普通の強い木だったらただ地面に立っていればいいのだ。弱いから社長でもしてないと生きていけないのだ。まいったか」

ヘビ 「ほんとう、おとなってめんどくさいですね。じゃあまた、お休みなさい」

【14】へ行け。

 

【7】

ヘビ 「あの男は飛行乗りじゃないですか。つまりサンテグジュペリその者ですよ。サンテグチュペリも飛行機乗りで第二次大戦中に、あの二つの飛行機をくっつけたようなP-38の偵察型に乗り、飛んで行って帰ってこなかった人ですからね」

バオバブ 「つまりサンテグチュペリがあの男であり、その体験談であり、砂漠で腹をすかした時に……」

キツネ 「どうしても面白くしたいのか? 怖くしたいのか? でも半分あってる気がしますよ」

キツネの話を聞く 【8】へ。

自分で言って怖くなってきたので、薔薇のくだらない話を聞く 【10】へ。

ヘビに「お前急に物知りだな?」とつついてみる 【6】へ。

 

【8】

キツネ 「あれこそ作者サンテグジュペリの分身でしょう。まともな人があの人だけなのでたぶんそうです」

バオバブ 「で、星の王子様を殺したのか?」

キツネ 「作者なので作者が殺したと言っても、まああっているでしょうね。ただ死んでいればね」

「つまり死んではいないと言うのか」 【9】へ。

「いや死んでいるし、誰か犯人がいる筈だ」 【1】へ。

「誰か死ななとミステリーにならないだろ?」 【6】へ。

 

【9】

キツネ 「どう言う時に人は死ぬのか? が大事ですね」

バオバブ 「そうくるか? その哲学的な問いは嫌いなんだよな」

「全ての人が忘れた時に人は死ぬ」 【11】へ。

「死んだと分かった時に人は死ぬ」 【13】へ。

 

【10】

バラ 「ちょっとまって。あんな男の事なんてどうでもよくない? これは愛の話なのよ」

バオバブ 「それこそちょっと待ってくれだ。バラ、お前は女だったのか?」

バラ 「バラにオスもメスもある訳ないじゃない。どっちもよ。この話は小さな家を出て行った男が、家に置いてきた女の大事さに気が付いた話なのよ。それ以外はおまけよ。そして最後は愛する薔薇に会うために、身を井戸に投げたと言うロミオとジュリエットの様な……」

バオバブ 「いつ井戸に投げたんだ?」

バラ 「ちょっと、じゃましないでよ。最後死体も無いのだから井戸の中くらしか無いでしょ? だからやはり自殺なのよ。ねえ、そう思うでしょ?」

キツネに聞いている 【11】へ。

バオバブに聞いている 【12】へ。

なんとなく、ヘビに背を向ける 【6】へ。

 

【11】

キツネ 「違うと思うよ」

【2】へ。

 

【12】

バオバブ 「しかし自殺はやはり解せないな。何より面白くない」

ヘビ 「そうですよね? 誰かが殺してこそミステリーですものね」

キツネ 「でもミステリーでは無いしな。この話は」

バオバブ 「じゃ何なのだ?」

キツネ 「たぶん、自分の殻に閉じこもっている寂しい人がそこから飛び出し、そして他の殻に閉じこもった人達を見て回り、最後にあの殻の中にいた方が幸せだったかもな、と死んでいくニートの物語だよ」

バラ 「そこまで悲しくはないでしょ? でも最後に愛の大事さが分かったので帰って行った。愛が全てよ、ラララ~」

ヘビ 「そして王子様はサンテグジュペリに会って、サンテグジュペリを寂しい気持ちにして、自分は愛する薔薇に会うために帰って行った」

バオバブ 「そんな話なのか? そんな身勝手だから誰かに殺されたのだな?」

それは分からないな? 【1】へ。

なんとなく、ヘビに背を……以下略 【6】へ。

 

【13】

キツネ 「全ての人が忘れた時に人は死ぬ、と言うけど、それは不特定多数の全体的にだよね? 全体主義な人ならそれで構わないだろうけど、個人にとったら関係ない事だね。個人にとったら死んだと分かった時に人は死ぬんだよ」

バオバブ 「でも死んだ時にはもう死んでるだろ? 知らなかろうが何だろうが」

キツネ 「確かにそうだけど、でも自分にとったら死んだと分かった時だよ。もしくは死んだと思った時さ。例えば、いつもは約一年会わない親戚がいて、死んだと分からなければ一年は自分にとったら何も変わらない。死んだと分かった時、思った時に人は死ぬんだよ」

バオバブ 「はいはい。で? そうだとして、誰が殺したか? となんの関係があるんだ?」

キツネ 「それはこの本が理解出来たのか? と言う事だよ。理解できれば先に進める筈さ」

バオバブ 「分からないなあ? お前の言ってる事も分からないよ。そもそもなんでキツネがしゃべれるんだ?」

【1】へ。

 

【14】

「死んでしまうとは何事だ! バオバブよ」

バオバブ 「死んだんですか? 枯れたんですか? ここはどこです? あなたは誰です?」

「そんな細かな事はどうでもいい。だが安心しろ。また【1】から戻って冒険を始めても良いぞ。今度は一度倒した敵はもう死んでるし、拾った装備も始めから持ってる所から始めていいのだ」

バオバブ 「戦った敵なんかいないでし、装備もないですよ」

「まったく、近頃の木は冗談も分からないのか? ハービー・ブレナンも知らないのか? とにかくもう一度戻って考え直せ。時間は無限では無いぞ!」

バオバブ 「時間が無限でないのなら、この時間自体が無駄だな」

でももう一度戻り、始めからやり直そうかな?。 【1】へ。

もしくは時間の無駄なので、読むのをやめる。

 

【15】

バオバブ 「ちょっと待て! これはどういう事だ?」

キツネ 「何です?」

バオバブ 「何度やっても【15】何て来れないじゃないか? 騙したな!」

ヘビ 「騙してはいないですよ。」

バラ 「あれ? もしかしてまじめだから書いてある通り、【2】に行け、と言ったら【2】に行ったりしてたんですか?」

バオバブ 「そりゃそうだろ」

キツネ 「別にこれはゲームブックでは無いですよ。順番通り読めば普通にここまで来れたでしょ?」

バオバブ 「でもそれなら何が書いてあるか分からないだろ?」

キツネ 「でも何が書いてあるか分からない様なものから、作者の思惑を察知するのが『星の王子様』でしょ? これは星の王子様の考察文ですよ。だからあってるのです」

ヘビ 「それに、像を飲み込んだ蛇の絵を、帽子としか見れない大人はつまらなくなってしまったなあ、と言う事ですよ。なんでヘビがしゃべるのは認めるのに、書いてある通りに進まない事は認めないのですか?」

バラ 「おとなは、数を使ってるようで数に支配されている、と言う事です。大事なのは愛ですよ」

バオバブ 「では、誰が星の王子様を殺したのか? も意味が無かったと言う事なのか?」

キツネ 「いや、そうでもないです。ただ答えを言ってもつまらないですからね。この本の中の飛行機乗りは、結局星の王子様が死んだのかは分からなかった。でも王子様の事を思うだけでも素晴らしいと気が付いた」

ヘビ 「サンテグジュペリの乗ってる飛行機も落ちたが発見されなかった。王子様みたく誰にも死んだ事は分からない」

バラ 「なら、あなたが死んだと思ったのなら死んだのよ。バラが男か女かはあなたが思った方だって事」

バオバブ 「つまり死んだと思わなければ死んでない。殺したとしたら私が殺したと言うのか? 自分が犯人。まさにどんでん返しのミステリーの王道だな」

キツネ 「王子様もサンテグジュペリも、生きてるにせよ死んでるにせよ、私達には永遠に光り輝く星を残したと言う事ですよ」

 

おわり