号漫浪正大

輪るピングドラム ~物語を見直す

距離感とバランス

距離感とバランスの話だと思います。

 

映画「アナと雪の女王2」感想です。ネタバレです。

 

ニコニコチャンネルで「山田玲司ヤングサンデー」と言うのがあるとは何度も言ってますね。有料分と無料分がありますが、この映画の事は無料分で多く解説されてました。この映画の解説は見事でしたね。(これを見てる事を言っとかないとずるい気がしたので言っときます)

 

作者は二作目を作るにあたり、家族との付き合い方や距離感について伝えてないと思い、今回その答えを出したのだと思います。リアルな世界での家族との距離感の話でもあったと思います。

今回、皆バラバラで行動しますね。人は皆最後は一人です。それで自分で答えを出していくものです。皆さんも大体は仕事や学校に出かけ、家族が知りもしない所で努力し、そして判断を強いられてきたと思います。だからこれはこれであっています。

アナはクリストフさえも関係ない所で考え結果を出す。しかし危ない所でクリストフが助ける、少しね。今の女の人は特に、旦那や男との関係性はこんなものじゃないでしょうか? この位の距離感で普通ですよ、と言う事です。それで構わないでしょ、と言う事です。

エルサとアナが最後別々に暮らします。姉妹でも兄弟でもずっと同じ屋根の下で暮らさないでしょ? だからこれでいいのです。しかし「今度遊びに来て」と手紙が来たら行ける距離です。近所に住む親兄弟、この位が一番いい距離感じゃないでしょうか? だからこれでいいと思います。

 

エルサは魔法を持っています。それを今回も否定はしないですね。オラフも生き返ります。この世界に魔法はあるのです。魔法も嘘だと指定はしない。否定はしないけど魔法がいつもあるとは限らない。だからアナは最後魔法がない所で、エルサがいない所でダムを壊そうと努力する。ディズニーの夢の魔法の力を否定はしないが、それが効かない場所でも頑張れるように促す。

魔法はあるけど万能ではない。エルサはやはり町だと生きにくかったんじゃないでしょうか? 森は不思議な精霊もいる所だし、だから周りの人も普通な感じで接してくれそうです。だからなれれば森の方が暮らしやすいでしょう。生きやすい生活はそれぞれです。それを決めつけない。

クリストフはアナと結婚する。結婚も否定はしない。でもエルサは一人です。お一人様も否定はしない。

クリストフは結婚するけど王子様では無いですね。それに王様にもなれなさそうです。結婚相手が王子様でなくてもいいだろって事でしょう。

男も否定はしないし女も否定はしない。女は一人で生きていくと言う描き方ではないし、男や兄弟と必要以上にベタベタもしないのです。

この辺はバランスですね。色んな生き方がありますが、バランスをとりながら上手く生きていきましょう、と言う事です。

だから森で生きる人達はそのまま森で生きるし、町の人も町で生きる。それに夢の存在精霊も森にいるけど、森の人は一緒の所で暮らす。それぞれを否定しないで、良い悪いではなく、バランスを取って生きていくのが皆の幸せにつながると言う事でしょう。

そしてバランスを取るとはそれぞれの最高では無いですね。そこそこと言う事です。だからクリストフはそこそこな奴なのです。オラフもね。

 

依存し過ぎないと言うリアルな人々の生き方を示し、それぞれを否定しないでバランスを取って生きていきましょうと言う話です。良くやった方だと思いますけどね。

 

ちなみにあの精霊達は何なんだと言う人が結構いますね。

映像的に絵になるし、つまらなくなりそうな話なので華やかさを持たせる為でしょう。

しかし何をしたいのか? ですが、あれはもののけ姫の森と同じで自然な訳です。自然も森も別に人の為にある訳では無く、時には怖いものと言うのがもののけ姫でしたね。精霊も別に人の味方ではない。でも上手く接すれば味方にも出来ると言う事です。火も水も風も土も、人は味方にして上手く使っていますが、火事になる洪水もある台風もあるし地震もあります。そう言う事です。

その自然と寄り添って生きているのが森で生きてる人達です。自然と寄り添って生きる事が、別に良い事ばかりではない。しかし町で生きてる人も良い事ばかりでもない。バランスと選択です。

そしてエルサは人でもあるが自然の力を得ている。だから人と自然の力の橋渡しをして、両方が上手く生きて行けるようにバランスをとる人なのでしょう。

しかしこれは生まれついた時に与えられた呪いですね。

 

呪いなのにそれから逃れられない。それがエルサです。

呪いでも力を得てる人がいれば、人々は助かるので歓迎するのです。

でも自分は嫌なのです。それが人です。スーパーマンに助けてもらいたいが、自分は好きに生きていきたい。その願いがスーパーマンを作り上げたと同時に、人気が出る訳なのです。

エルサも前の映画の時からこの呪いは解けません。それでも普通の人と一緒に生きていけるとか上手い事を言っていますが、これはスーパーマンに仕立てられた呪いです。見てる人達にうけるように作られた呪いです。

そしてマイノリティの呪いです。エルサはマイノリティの代表者にされてしまいましたね。「エルサにガールフレンドを」(ボーイフレンドではない)とか言われてたそうですよ。だからボーイフレンドは出来ない。でも一般の人にも人気がある。だからガールフレンドも出来ない。そして結婚しない出来る女の象徴にもなったので、結婚もできない。ディズニーなのでシングルマザーもないだろう。だから今回も最後まで一人なのです。見てる人達からの呪いだったのです。

ディズニーの幻の王子様の呪いから解き放つアナ雪の一作目。しかし人気が出たので新たな呪いにかかっていたのです。この物語の被害者はエルサです。将来この氷を解かす事が出来ますかね? もう一度ディズニーの常識を解かす事が出来るのか?

 

やってる事を見れば、よく考えていて、逃げないで、おかしな所にけりを付けようとしている、とても好感がもてる作りでした。

前がうけたのでお金も使えて絵も良かったですね。

前のあの歌が良すぎたので、今回は及ばなかった印象ですが、曲のトータルの出来は良かったんじゃないでしょうか? 印象には残らないけど、全体としたら前より力を入れて作られている気がしましたけどね。

等の見てる時は良い印象でしたが、物語自体の印象に残らない気がしました。一年経つと内容は覚えてなさそうな気がします。

たぶん頭でっかちで語るのが精いっぱいで、気持ちを届ける事をおろそかにしてしまったのでしょうね。

これほど距離感とバランスを考えられた作品なのに、客との距離感と面白さのバランスが取れてなかったのでしょう。

しかしこれは残念と言うより「難しいものだな」と思わせる物語でした。