号漫浪正大

輪るピングドラム ~物語を見直す

Control

アニメ「C」の感想です。ネタバレです。

 

面白いですね。後半に向け段々面白くなります。

ただ不満もあります。その事を書こうと思いますが、面白いのが前提ですよ。良く出来てるだけに、もう少しで名作かもしれませんでしたね。

 

まず物語の内容の事から。

三國 壮一郎がいい人ですね。良い人や皆の事も考えてやっている大金を動かす人はいるのだろうけど、めったにはいないと思います。最強の敵キャラが良い人過ぎるので、嘘っぽく子供っぽい話に聞こえますね。

最後のマサカキ(奇術師風の変な奴)の親玉みたいな人も、良い話にしようと綺麗事を言ってましたね。そんな訳ないですね。あの裏の金融街は謎めいていて普通の人では存在も知らなくて、誰が作り運営しルールを作り何の為なのかも分からない場所です。これは現実の世界の金融の事だと思えばその通りですね。その親玉が綺麗事を言っている。あれは誤魔化すために嘘を言ってると思えば筋は通るけど、そうじゃないとなると作者が分かってないのか? 子供だましなのか? と言う事になる。これが一番残念でしたね。裏の親玉が善人なら金融危機なんて起こらないのですよ。

最後の終わり方も少しさっぱりしすぎてましたね。いなくなった人達が出てこないですね。これもそんなに都合がいい世界ではないと言う事かも知れないけど、良い人ばかりな世界観とぶれる気がします。

せめてアセットに似た自分の子供でも出て来るかと思ったら、出てきませんでしたね。いつか続きをやりたいからなのか? だとしても、終わり方が印象として残る物なので、もう少し力を入れてほしかったです。

アセットは未来の自分の子供ですよね? キスしてましたけどね。子供としても良いのですけど、何か雑な作りな気がしてくるのです。 はなびは物語上何だったのか? バイトのおじさんも何だったのか? 三國の妹はどうしたのか? どうもこういう細かな所が雑だと物語全てが信じられなくなるので、何とかしてほしかったです。

物語上、金融街でお金が無くなると国がなくなりますね。だとしたら三國のしている「今を守る」であってるじゃないですか。主人公余賀が「未来の為に」と言った所で国がなくなると未来もないじゃないですか。ここは設定がおかしいですね。「未来を担保に今を守る」これは「国の借金」の事だと思います。国の借金は「未来を担保に少しでも今良い思いをしよう」としてる事が問題なのです。この物語上もそうしないと何をしてるかが伝わらない。残念ですね。

「C」がやってくる。たぶん「他国の金による実質的な乗っ取り」とかの事かもしれないけど、それをハイパーインフレで素通りさせる。それで国が消えずに済む。しかし国は荒れますね。これも物語上の「地球上から消える」よりはましだけど、暗喩としては金融危機とか将来の増税とかの話では無いのか? だとしたらハイパーインフレ自体で失敗でしょう。ハイパーインフレで日本円の価値がなくなるで良いと言う話なら、危険ですね。一回まっさらにして未来に借金を残さず今苦労しよう、と言う事かもしれないけど、これは極端で危険です。ハイパーインフレは皆の貯金がゼロになり、資源のないこの国が外国から何も買えず、苦労どころでは無くなります。それが原因で多くの人が亡くなる事さえ出てくる事態ですよ。この辺も今一です。

 

さて面倒くさい話。

お金や金融の事を元ネタにしてるアニメです。

しかししっかり金融の事を言ってるのではなく、あくまで元ネタなので金融の事は見ても分かりません。一対一の対戦ものになってるのも金融とぶれるので、何をやってるのか分かりずらいかもしれませんね。

その中で最近の日本人に直接大事になる事は話していると思います。「未来を担保にお金を得る」と言う事です。

この事だけをとっても「上手く出来たな、良くやったな」と思います。

そしてこれ以上の難しい事をアニメの中に入れると分かりずらくなるし、見てくれなくなるので、この位の塩梅で仕方が無いのかとも思います。

 

世の中のお金を増やしてるのは銀行だそうです。信用からお金を作る「信用創造」と言います。

Aさんから100万円銀行に預金されます。

銀行はBさんに100万円貸します(本当は準備預金があり全ては貸せないけど)。

BさんはCさんから何かを100万円で買います。

Cさんは得た100万円を銀行に入れます。

銀行はそれをDさんに貸します。

始め100万円しかなかったのに、今やAさんCさんDさんが100万ずつ持っている。つまり世の中には300万のお金があると言う事になります(AとCさんは銀行にありDさんは現金でもっていますけどね)。

 

そしてDさんがまた銀行に入れ、それをまた貸す。それを繰り返せば初めのお金よりずっと多くのお金が世の中にある事になります。

これは信用で作り出したお金です。

BさんとDさんが100万ずつ借りてる事になってるけど、これは「将来利子付けて返すよ」と言う信用ですよね。

つまり将来を担保にお金を作っていると言う事になります。

これがこのアニメで言っている事です。

 

ちなみにこの信用がなくなる時、つまりBさんとDさんが返せなくなった時、幻の未来を担保にしたお金が無くなる時です。

この例の場合は銀行が破綻する。つまり銀行に預金している人のお金が返ってこなくなると言う事です。

バブル崩壊はこの事も原因ですね。未来を担保に信用で作り出してた幻のお金が、信用がなくなったのでお金も無くなったのです。

アニメの中での黒いお金はこの未来のお金ですね。信用で作り出した幻のお金です。

 

お金を貸した時に貸した分だけ世の中にお金が増える。

だから国は莫大な国の借金を毎年してるのです。それで世の中のお金を増やしている幻です。増えてるのは未来のお金なのです。黒いお金なのです。

国の借金は国債です。

これを国の借金と言うと「国の借金じゃなくて政府の借金だよ」としたり顔で言う人がいますよね。だからあえてこの間違った言い方を言ったのだけどね。

国債が政府の借金だとして、そんな事はどうでもいいのです。

問題はこの借金のつけを誰が払うのか? です。

まさか政府の人が自分で返すなんて思ってはいないでしょ? 政府の人の全財産奪ったって返せない。

では誰が将来つけを払うのか? 日本国政府の借金です。日本国民が返すに決まってるじゃないですか。

日銀は物価上昇率2パーセントを目指してました。これは上手く行きそうもないですが、もしこれが上手く行き10年たったら物価は20パーセト以上上がる事になります。そうしたらあら不思議、莫大な政府の借金が2割近く安くなるようなものです。それと同時に国民が貯金しているお金が実質2割近く目減りしたようなものです。

持ってるお金の2割を税金で納めろと言われたら皆怒るけど、このやり方なら怒らないでしょ? 騙されてますよ。

国債を多く作り円を多くする。結果円の価値が下がります。輸出大国だから良い事だと言ってますが、輸入大国でもあります。食べ物の半分以上も輸入してる国です。石油なんかはもちろん輸入です。つまり国民が買っている物の多くが値上がるのです。借金のつけを知らず知らずうちに払ってるのです。騙されてますよ。

騙されて借金分を返すのはやはり国民なのです。

そもそも税金を決めるのは政府でしょ。なら将来税金を多くして、結局国債は国民が返させられるのです。政府は痛くも痒くもない。

 

未来の幻のお金で今を豊かにする。未来を担保にお金を得ている。この事をアニメで言ってるのです。それだけで価値のあるアニメでしたね。

 

ちなみにアニメで信用が大事だと言ってましたね。お金は紙ッペラです。それに価値があるのは価値があると皆が思っているからです。これからもそう思ってくれると言う信用です。

円の信用がなくなると紙ッペラに戻っていく。それがハイパーインフレです。

でもおかしいじゃないですか。作ってる食料も機械も、働いている人の数も時間も変わってはいないのです。だから金融危機だろうがバブルだろうが何だろうが、皆が手に入る物は変わらなくてもいいはずの物なのです。

つまり好景気で得られる幸せは、不景気になっても得られてもいいものなのです(天変地異や今現在のコロナショック等で、実際に作ってるもの作ってる人が減っているのなら別だけど)。

これは仕組みやルールがおかしいと言う事です。上手く回せてないと言う事だけなのです。

なぜバブルを凝りもせず起こすのか? なぜ幻のお金を増やすのか? 信用がなくなり幻のお金が幻だと皆が思い出した時、バブルは崩壊するのです。

それはバブルを作るルールを放って置いてる人がいるのです。バブルが起きる時は景気がいい、その時に株でももっていれば上がっていく。しかし限界がある。だから一回壊して元に戻す。そうするとなんでも安くなりバーゲン特価で買えるし、また上がっていくのでまた儲かる。だから好景気、不景気が起きないと儲からないので、このルールを放って置いてるお金持ちが世界にいるのです。騙されてますよ。

 

(ちなみに生産している物質は変わらないから、手に入る物も変わらなくていいと言いましたが、実は発展途上国等の安い労働力をふまえれば変わってきます。日本人より安い労働力で働いている人が世界では多いので、世界がフラットになると日本人が手に入る物は下がる事になります。それも踏まえれば日本人も幻の仕組みで得をしている、とも考えられます。同じ労働で同じ物を分配したら、日本は得れる物が少なくなると言う事です。で、どうするのか? は皆さま次第です)

 

アニメに戻ります。

最後天上人が綺麗事を言っていて気に食わなかった、と言いました。

この天上人がこのルールを自分の為に作っているのです。

だから一度破綻させようとしてるのです。

だから最後黒いカードを余賀に渡し、手を貸したのです。

余賀は未来を担保に金を作ろうとはしない。しかし今が破綻する。それでいいのですよ、天上人は。

この辺を取り違えてるような作りでしたね。だから綺麗ごとを言う。見ている人は騙されてはいけませんよ。綺麗ごとのみを言う人はほぼ詐欺師です。もしかしたらだからこそ奇術師みたいな恰好だったのかもしれませんけどね。

 

金融は何も生み出してはいない。

コントロールが仕事で、だからこそ上手くコントロールできているかを見ておく必要がある。

世界が上手く回るようにコントロールする為の行動以外は、怪しいと思うべき、と言う物語でした。