号漫浪正大

輪るピングドラム ~物語を見直す

目指してほしかったのは2倍

映画 『アリータ:バトル・エンジェル』 の感想です。ネタバレです。

日本の漫画『銃夢』のハリウッド実写版ですね。

始まる前から目がでかいのが注目されてました。本当に普通の人の2倍はありましたね。

 

まずは実現したのが良かったですね。ハリウッド映画化まで何年待ったのか?

皆の感想を見てみると、私の様に漫画を読んでいる人とそうじゃない人で、見え方が大きく変わってくる作品のようです。

実写化にあたり、元の漫画にそっている所、変えてる所があります。

私の第一印象では、一般受けするように丸くなっていましたね。興行収入を考えなければならず、しょうがないですけどね。

 

漫画を見ていない人の感想を見ると「猟奇的だ」とありました。逆に漫画を見てる人だと「おさえているな」と言う印象だったので、見え方が変わってくるものですね。

他の意見で「何か画面が薄暗い」とありましたが、。これも漫画を見てる人は逆に「明るすぎ」と言っています。私ももっと暗い方が印象深い絵が出来たのでは無いのか? と思いましたが、人によって違うものですね。

映画の世界では、分かりやすいように街を上と下の構造にしてました。ノヴァがザレムから見下ろしている、上の世界の悪い人になってます。イドに奥さんがいたり、前に子供がいたりして、アリータに対する気持ちが分かりやすくしてありました。ベクターとグリュシカもただの悪人でした。

全体として映画版は、分かりやすいが何か単純な物語に見えます。しかし原作を知らない人の感想を見ると、これでもまだ「分かりずらい」そうです。

「分かりずらいから説明場面が多く、その為時間が少ない」と言う感想もありました。

多分監督は分かりずらいから、つまらなくても分かりやすい物語にしたのに、それでも「分かりずらい」と言われてます。

つまり映画全体の時間が少なかったようですね。

グリュシカが漫画のマカクになるのだろうけど、映画だとマカクの子供の頃の物語が無い。あれが無いと面白くないのに、無い。

それにヒューゴの兄の話もない。これが無いとヒューゴが何処にでもいる、かるい若者にしか見えません。

それ位大事なシーンすら入れれないほど、時間がなかったんでしょうね。

時間がないから、とにかくアリータはヒューゴをすぐに好きになる。パンツァークンストも手っ取り早くイドが知っていて、不思議感がない。イドの元嫁もすぐ心変わりする。等があり、とてもちゃちなシナリオに見えてしまい残念でしたね。

話的には、切りが良いヒューゴが死ぬ所までは描かなければならない。しかしそれでは時間が足りず、だから端折ったり単純化する。そうするとよくある単純な物語だと思われる。なのに分かりにくいとも言われる。どうすればよかったのでしょうね?

 

ともあれ、私の様に漫画を見てた人には、CGであの世界を描いてくれたので、ありがたかったのではないでしょうか? 下から見上げたザレムがリアルに描かれていたのが印象深かったですね。漫画の作者はとても絵がうまい人だけど、なぜか見上げたザレムの絵はおざなりでしたからね。ちょっと映ったジャシュガンももっと見たいです。

それと、日本では主役のアリータは、原作通りガリィの名でやってほしかったですね。

 

アリータの目がでかい事が印象的な映像でしたが、なれるとなんて事無いですね。不思議ですね。

アリータは脳以外、全身サイボーグなのであの目でもあり得るのです。目が大きい事が今の時代好まれるのだから、未来の人工のボディなら大きな目にするのもありそうですけどね。しかしアリータが作られた時から何百年もたってるのでトレンドが変わった、と思えば筋は通ります。

一見不気味でも、なれればなんて事が無い。その程度の事だったと言う事です。そこで価値観は不変ではないと気付かせる物語になっている。

あの目はサイボーグであるという象徴にもなってますね。体も見た目から機械です。それでも段々皆と同じ人間に見えてくる。その辺の未来の価値感の話にもつながるので、これはやってよかったと思います。あの目は、ただアニメを実写にしたお遊びではない。実は深いSF的で人間論的な意味が含まれています。

 

だからこそマカクのあの「ウジ虫の様な体」良かったのにね。それが上手く描かれてなくて残念でしたね。あれこそ人間の闇ですからね。

そしてザパンの見せ場がこれからと言う所で終わるのも残念です。ザパンも物語の闇の部分でしたからね。

 

時間がなかったんですね。

総集編のようでしたね。

あと倍はほしかったですね。

時間を2倍にするのが現実問題、目を2倍にするのはSF。

アメリカでは現実問題よりSFの方が楽、そんな物語です。