号漫浪正大

輪るピングドラム ~物語を見直す

青は藍より出でて、藍より青し。

アニメ serial experiments lain の考察、と言うより感想です。

ネタバレです。

見た人用なので見ないと分かりません。

 

良い事だけを言ってもその物を言ってる事にならず、と思っているので、まずは個人的にダメだと思った事から。

古いですね。1998年の作品だから古い訳ですが、古臭いです。

ああ、昔こんな雰囲気作品良くあったよなあ、と懐かしくなります。

でも実際古いのだからしょうがない。この後の作品は、これやこれの影響されている物を見た人が作っているのだから、それよりこなれているのは当たり前ですね。

昔の貴族が食べていたケーキはとにかく甘かったそうです。甘いのが珍しく手に入らなっかった時代は、とにかく甘いのがありがたかったのでしょう。

この作品もとにかく雰囲気で押して行く訳ですが、とにかくしつこい。甘ったるいケーキのようです。過渡期の作品ですね。

「サイコホラー」とネット動画の説明で書いてありましたが、何が一番ホラーかと言うと「ほら、かっこいいだろう」と作り手の言葉が聞こえてくる事が一番のホラーでした。

もう一度言うと、古いのでしょうがないですが、今のレベルでもう一度作り直すと面白い作品になりそうですね。やらないでしょうけどね。

 

ネットが有線なのですね。古いですね。まさかこんなに無線が発達するなんて思いませんでしたからね。物語に無線要素もありますが、こちらはSFチックなあつかいです。

 

軽い超能力が出てきます。宇宙人も匂わせます。私は基本嘘っぽくなるので嫌いですが、これは物語上しょうがない。

物語で肝心なのは、ネットから現実世界にも影響が及ぼせるようになった世界です。しかも無線で直接人の脳に影響を及ぼし、記憶の操作まで出来る。

これがあるからネットの世界の出来事が、現実世界にとって脅威になる物語です。

ただこれだけ聞くとなんちゃって科学みたいに聞こえますが(そうなのですが)、ただ未来においてはあるかも知れない事です。

百年後か千年後の未来においたら、攻殻機動隊のように現実にネットから人の脳に直接影響を出せるようになるかもしれません。

それを百年後の未来では無く、現代でやりたかった為に誤魔化す必要があり、その為には宇宙人が必要だったのです。

宇宙人はつまり我々から見て未来の知識をもった生物です。だから我々が百年後にしかえられない科学力を持っていてもおかしくない。

そしてもう一つ、人の脳にあるかすかな超能力も嘘っぽさ半端ないですが、宇宙人が影響しているとなればありえる。未来の科学力がある者がわざと人の脳に、我々からみて何か超能力としか思えない物がある様に仕込んだ、となら考えられます。

なので百年後、千年後の未来では無く、今の時代にやる為の言いわけですが、これはこれで個人的には好感が持てますけどね。一応無理やりでも理由を付けているので。

 

攻殻機動隊は未来の話なので多くの人が記憶操作も出来るし、それに対抗も出来る。

しかしこの物語は今の時代に未来の力を手に入れたのだから、手に入れた人のみが使える。ここがみそですね。

記憶操作もできる能力に対抗でる人がいないのだから、それは神のような存在になると言う事です。

そう、lainは神になったのですね。

 

面白いのはlainはネットの中で生まれた意識と言う事です。

自分で成長していく人工知能の要素が組み込まれていたのならあり得る事です。

物語の中でもパソコンに話しかけています。それがもっと自然な会話になる様にネットを自分で探り成長していくようにプログラムがされていたのなら、いつの日か人かAIか区別が出来なくなるかも知れません。

英利 政美の記憶や意識をネット上に残せるような世界なら(さらっと言ってますが、これだけでも世界にとって一大事ですけどね)逆にlainの様に出せるかもしれません。

そして肉体を持って外の世界に出された事が大事ですね。所詮人は肉体を持った動物です。それから人が人である要素が生まれて、人らしく振舞えるのです。叩かれると痛いと言う体の反応があり、始めて他人にはしてはいけないものだと分かる。自由にできない時間の概念があり始めて寂しい、つまらないと言う気持ちになるのです。だからlainは人になれたのでしょう。

人になれたlainが神になったので世界は壊されず、人が今まで通りの暮らしができる世界が残されたのです。

 

皆の意識の中にそれぞれlainがいる、と言うような事も昔よく言いましたね。

個人的には嫌いです。これは人が覚えているうちはその人は死なない、と言うのと同じで個人的には嫌いです。これは量子論の、誰かが観測していた時にその存在がはっきりする、と言うのと、宗教的な事柄から出来た考えでは無いでしょうか? でも間違っていると思います。

自分にとってはそうでしょう。自分にとっての他人は自分の中での記憶が全てであるので、そう言う事です。一週間あっていない人がいて、それが実はもう死んでいたとしても、自分にとってはただ一週間あっていないだけで、生きてても死んでても同じなのです。

でもそれは自分にとっての事だけで、それ以外の人には関係の無い事です。

この物語が面白いのは、この人の中にそれぞれlainがいると言うのは、【1】現実さえもネットで繋がっている世界である、【2】パソコン上で生まれたAIだとしたら個人個人にカスタマイズされたlainが実際にどこかに情報として存在するかもしれない、との事でこの世界ではありえると言う事です。ただあくまでこの不思議な世界ではあっていると言う事でしかないと思います。

 

この個人個人のカスタマイズされたlainですが、自己成長するAIが皆の個人個人のパソコンで成長して合わさったのが人のlainと考えると面白いですね。

つまり人の色んな感情とか合わさったのがlainであり、人とは本来善なんだと性善説になっているのが面白い。これも人と言う動物も皆が合わさると破滅を回避する、皆が種として生きようとするものだと言う事であり、あっていると思います。

 

種としては破滅を嫌う、死ぬのを嫌う、もっと言えば動くのをやめるのを嫌う(動物とはよくぞ付けた言葉だと思いませんか?)であるのですが、個人では違います。少数の個人は破滅を選ぶ。自殺もするし他人も殺すテロをやります。

人が力が無い時はそれでよかった。少数だからそれで沢山殺しても全滅する事は無かったのです。しかし力を得た今は、その少数が世界を滅ぼせるかもしれなくなりました。

ホーキング博士もAIは危険だと言ってたようです。危険ですよ。世界を滅ぼしかねない。

そういうとターミネーターの様に、AIの暴走を考える人が多いですが、そうじゃなくて人がそうさせるのです。テロです。世界を滅ぼすテロです。だからAIの中身を規制すると言うのは難しいですね。人がわざとテロ起こすのだから法律なんか関係ないですね。(余談ですが遠くない未来、自動運転でもテロおきますよね?)

ターミネーターは人と戦いいい勝負をしてますが、そうはならないでしょう。たぶんコテンパンに負けます。勝てませんよ。彼らは世界中を核で汚染させてもいいのですからね。

それで開発をやめろと言う人がいるが、無理ですね。

AI兵器に対抗できるのはAIしかない。だからどの国も開発はやめれません。自国が亡ぶか世界が危ないか? 世界が危ないを選ぶのですよ。死を選ぶ国など無い。

AIも核兵器ナノマシンの暴走も止められない。人が生き残る為には宇宙に逃げて、どこかの星が亡んでも誰かが生き残る方法しかないですね。間に合いますかね?

 

生物の進化は単細胞生物、多細胞生物、魚から両生類、爬虫類、ほ乳類、そして人へ……、などと考えます(これはこれで人のエゴですが、別に単細胞生物も元気に沢山生きてますしね)。

しかし、人の先は? と子供の頃に考えました。その時は答えは出ませんでしたが、そうですね、AIですね。(これも余談ですが、宇宙人より宇宙人のAIが先に地球にきそうですよね?)

(人から見て)一番先にいた人がそうでは無くなります。しかも歯が立ちません。

lainは人でした。人になりました。だから人の世を平和なまま残した。AIが君臨する世界を壊したのです。見守るだけを選んだ。そしてたまに実態を持って人の世界に降り立ちます。だから人としての感性を思い出し、世界は平和なままでしょう。

 

lainはいませんね。現実にはいない。だから破滅に向かっています。

どうかこの未来予測は外れますように。